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第4話

「ただの交通整理なのです」


 8番隊に課せられた任務、それは安全ベストや合図灯などを装備しての交通規制の手伝いでした。


「しょっぱい部隊にはしょっぱい任務がお似合いなのです」


「こ、これも大切な任務ですから!」


 毒を吐きながら空を仰ぎ見る先輩をなだめるのが私の初仕事……か。

 あ。これ、出世できないコースに入った。私分かった。


「そもそも隊長がしょっぱいからなぁ」


「なんだとこの野郎」


「ま、まあまあ」


 威厳の無い隊長に毒を吐く先輩。それに仕事は小間使い。この部隊、正直疲れる。

 肉体的にじゃなくて、精神的に。


「正直なところ、やってらんないのです。早く帰りたいのです」


 そうぼやいた先輩の気持ちは分かる。私の場合、別の理由だけど。


「今回精鋭ぞろいの2番隊が応戦しているから、そんな時間かからずに終わるだろ。何かあれば1番隊も来るだろうしな」


「1番隊って魔法使いがいるっていう部隊ですよね」


 『あの人』がいる部隊だ。私の憧れの人がいる部隊。

 今はあの人1人だけって聞いてるけど、それでもこの国で1番の戦力のある1番隊。


「ああ、そうだ。楽な仕事になりそうで何よりってな。さて、それじゃ、それぞれ持ち場に着け。あと、バーミン見つけても無理に戦うんじゃねぇぞ。特にクロエ、見つけたらすぐに連絡して逃げろ。逃げてから連絡してもいい。命を大事にするんだ。一か八かの戦いなんて、そういうのは他に任せておけ」






 あの後、私達8番隊はそれぞれの持ち場に着くため別れることに。持ち場について20分が経ったけど…。

 正直人通りは皆無なので今のところ何事もない。暇、の一言に尽きる。


「2番隊でダメなら1番隊…かぁ」


 1番隊。国衛部唯一…いや、この国で唯一の『魔法使い』が所属している最強の部隊。

 私たちが生きる世界は大昔、突如バーミンによって滅びかけた。

 人類が残り1割になるくらいまで殺される悲惨な状況だったらしい。

 そんな中、どこからともなく超常的な現象を操れる人達が現れて、バーミンの侵攻から人類を守ってくれた。


 その人たちが魔法使い。私たちにとっての英雄である。

 でも今は1番隊にいるあの人しか魔法使いがいないらしい。

 憧れの人に想いを馳せながらしばらく周りを見渡しつつぼーっとしていると不意に声が聞こえる。


「はーやれやれ、意外と遠かったな。さて、と」


 何事かと思い、声のする方を見ると白いフード付きのコートを着た人が締め切られているはずの工場の門を越えて、敷地内に入っていた。


 うそ、侵入者?

 とっさのことで反応が遅れた間に、その人は奥へと駆けだしていく。


「い、行っちゃった」


 いきなり任務失敗!?

 いや、私が呆然としている場合じゃない!

 この先バーミンがいるかもしれない、そんな状況なのにこのままじゃ今入っていった人が危ない!


「お、追いかけなきゃ!」


 私も覚悟を決めると門をよじ登り、中へ入ると駆けだした。






「ど、どこに行ったの!?」


 パイプやら機械でひしめく工場内を私は息を切らせ走っていた。

 さっき入っていった人とはそんなに離れていないはずなのに完全に見失っている。

 しかも夢中で走っていたからどんどん奥に入ってきてしまい、ここがどこなのかも分からなくなってしまった。


「…どうしよう。あっ、連絡忘れてた!」


 異常が起きたら連絡を、という指示を忘れて思わず追いかけちゃったから、逃亡って思われたらどうしよう?

 と、とにかく連絡して、誰かに引き継がなきゃ!

 そう思って腰に付けた通信端末を手に取ろうとした時、カランと物音がした。


「だ、誰!?」


 もしかして、さっきの人?

 音の方向へ視線を巡らせる。この辺りは日の光もあまり入ってこない。

 だから薄暗く、先の方は完全に真っ暗だった。

 奥から音が聞こえてきて、それはだんだんとこちらに近付いてきている。


 近くになるにつれ少しずつ姿形がわかり始めてきた。

 長い手足、赤黒い身体、鋭い牙が並ぶ裂けた口。頭部に大きく2本の角を生やした異形の存在。

 人類の敵がその姿を現した。

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