第2話
ここから週1投稿の始まりです。
私たちの乗るスピードタイプのバイクは幾つもの車を追い抜きながら国道をかっとんでいく。
バイクの性能も高いと思うけど、それを差し引いてもライムの運転技術も相当なものなのだろう。
どのくらい速度が出ているのか気になった時、ちらりとメーターが見えて私は詮索するのをやめた。
職務上必要だったから、研修の前に会社に言われてバイクを含めた複数の免許を取得した。
だから私もバイク、車、小型特殊車両の運転はできる。
できるんだけど実習で乗った時とは違い、改めて乗ってみると結構楽しく感じる。
初任給とかでバイクを買うのもいいかもしれない。
さすがにここまでの運転はしようとは思わないけど。
そんなこと考えているとジアスの正門前に停まる。
時間はなんとか間に合いそうだ。
初日から遅刻なんて失態を犯さずに済んで安心した。
「ありがと、ライム」
ぴょんとバイクから降りると、ライムにお礼を言ってヘルメットを渡した。
「次から気をつけな。あと、一か月家事全般よりしく」
「う、うん。……わかった」
なるべく思い出さないようにしていたのに。
もう二度と寝坊はしない。そう固く誓った私であった。
「ん。じゃ、いってらっしゃい」
「うん、本当にありがとね。行ってきます」
走り去るライムを見送り、私は背後の巨大な建築物を見た。ジアスの本社だ。
私はこれからここで働くんだ。
「……いよいよ初出社か。緊張するなぁ」
いつまでも突っ立っていては今度こそ本当に遅刻してしまう。深呼吸を一つして私は歩き出した。
国営企業ジアス。私達が暮らしている国『ヴァルヘイム』の繁栄と存続を担っている企業。
産業・医療・工業・治安維持等、国民が生きていく上で必要なことの大部分を取り仕切っている。
ヴァルヘイムが建国されたと同時に創立され、以降ヴァルヘイムを急速に発展させた企業だ。
そのジアス社内。多くの社員が行きかう広い廊下を私は歩いていた。
「えーっと、ここを右に曲がって」
広い広いとは思っていたが、ここまで広いとは。
受付で渡された地図を見ながら歩いてかれこれ10分。
巨大過ぎるにも程がある。どれだけ遠いのだろうか、私の所属する部署は。
いや、どれだけ広いのだろうか、この会社は。
「確かこの辺だと思うんだけど…」
本当にこっちで合っているのかと疑い始めた頃、ようやく私は目的の所へたどり着く。
白を基調とした自動ドアの横にあるプレート。そこには『国衛部軍事課8番隊』と書いてあった。
間違いない。ここが私の配属先だ。
国衛部軍事課とは国の自衛を目的に設立された国衛部に属する部署の内の一つ。
主に外敵から国を守るための軍事行動を行う課で、他の国で言うところの軍隊である。
私が配属となるのはその軍事課の8番目の部隊だ。
最初が肝心とよく言われる。元気よくいかないと。
私は深呼吸してインターホンを押そうとした、その時。
「うちの隊に何か用かな?」
「うひゃあ!?」
急に後ろから声を掛けられた私は変な声をあげて驚いてしまう。
振り向けばジアスの制服を着た男の人が両手にコーヒー缶を持って立っていた。
「悪い、そんなに驚くとは思わなかった」
「い、いえ、こちらこそごめんなさい」
申し訳なさそうにそう言った男性の腕章を見ると8番隊を示すマークがあった。
もしかして同じ隊の人かな? そうだよね?
「あの、もしかして8番隊の方ですか?」
「ん? ああ。俺は8番隊の隊長、風見だ」
この部屋に入る前にいきなり隊長に遭遇してしまった。一気に緊張が高まる。
「……隊長? ……っ! 失礼しました! 本日付けでこちらに配属されましたクロエ・F・ティソーナです! 一生懸命頑張りますのでよろしくお願いします!」
「ああ、君が今日から来るって新人か。よろしくぅ。ま、こんなところで立ち話もなんだから入ってくれ」
ちょっと軽い感じの人みたいだけど、いい人そうで安心した。
私は隊長の後について8番隊の部屋へと入った。
……うん、週1投稿できるといいな。