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第8話

 家に帰った次の日までお休み。

 初出勤の日からずっと来れなかった8番隊の詰所に戻ってくることができた。


「久しぶりすぎて初出勤の時より緊張してきた……」


 労災っていうのが下りるみたいで、必要な書類を受け取ってから詰所に向かった私。

そう呟いてみても状況は変わらず、余計に緊張するばかり。

 でも、そろそろ入らないと遅刻だし行かなきゃ!


「お、おはようございまーす! なんとか戻ってきました! これからまたよろしくお願いしまーす!!」


 ……勢いよくドアを開けて挨拶をした私の目の前には白目をむいて倒れてる隊長とユウカ先輩の姿。

 えっ? これなに? 私がいなかった半月の間に何があったの?


「ぐぅ~……、ぐぅ~……」


「……すぅ、……すぅ」


 思わず駆け寄ると聞こえてきたのはいびきと寝息。

 ちなみにいびきをかいてるのがユウカ先輩で、寝息が聞こえるのは隊長。

 女の子! そんなおじさんみたいないびきでもう!


「えぇ……、これどういうこと?」


 その時、未だに状況が掴めない私に向かって後ろから声がかけられる。


「よぉ、復帰おめでとう」


「わっ!……びっくりしたぁ。あ、マスター! おはようございます!」


 いきなり声をかけられてびっくりした私が振り向くとそこにはマスターがいて、その手には飲み物の入った袋があった。


「真夜中に出動があってな。幸いにも2番隊でどうにかできたんだが、俺達にも待機命令が出てたんだ。それであいつらは明け方近くまで起きてないといけなくて、今仮眠を取らせてる。ていうかまぁ今日はあいつらやることないし起きたら帰らせるかな」


 私が困惑してるのを知ってか知らずか、2人の方を指さして教えてくれるマスター。

 なるほど、そういうことか。え、でもやることないってことは私の仕事は?


「あの、私は何をすれば……?」


「ああ、クロエ。お前はしばらく……勉強だ!」








「それでは講義を始めます」


「よろしくお願いします」


 始業のチャイムと共に目覚めた隊長とユウカ先輩を労って、優しい顔をして帰らせたマスターと共に向かったのは小会議室特A。特別機密対応型の小会議室のA号室って意味らしい。

 勉強って言ってたけど何するんだろう? 勉強嫌だなぁ……。


「まずはざっくりこの国の成り立ちから説明していくぞ~、テキストの3ページを開いて。ちなみにここから先の情報は特S機密もたくさん出てくる。もし聞かれても、学校の授業とジアスの会社見学でやったことにちょっと専門的な内容が入った以外言うな」


 あ~、歴史からかぁ。寝ないように気をつけなきゃ。

 なんて思ってたけど、とんでもない一言からそんな気持ちが消え去った。

 早速出てくるのね、すっごい機密情報。


「まず、150年くらい前にこの星に大きな隕石が落ちてきた。そしてそこからバーミンが生まれた」


 うそ、バーミンって星外生命体だったの?


「その隕石の大きさからして、この国だけじゃなくて大陸の寮端から4分の1ずつくらい残して、甚大な被害が出ていないとおかしかった。何かあると踏んだ隕石の周辺各国は調査をすると、例えるなら生きている石のようだと判断。だからその石が自ら衝撃なんかも最小限に抑えることで着地した、とも言えるな。そこから東側、天都国、シャンゼ、ロゼクォーツの3国での出現が当時は多く、各国ごとでの独自対応が難しくなり、合併することで一致団結してバーミンの脅威に立ち向かおうとしたのが始まりだ」


 西側にも国はあるし、バーミンも出てたから一緒に協力しようって言ったけど、断られたんだって。

 でもそこから月日が流れて、こっちのバーミン対策がちょっとずつでき始めたころにあっちの被害も大きくなって、慌ててすり寄ってきたみたい。その頃には国としても、ジアスとしてももう自分のことで手一杯だからお断りしたみたいだけど。

 だから西側の国もこの国みたいに合併して、バーミンと戦ってるんだって。

 でもたぶん研究がうちと比べてだいぶ遅れてるし、バーミンに対する情報は化け物、ってこと以外ほとんど民間人は知らないくらい軍事機密の塊だから情報は渡さない。そんな状況ってことで世界救難シグナルは常に西側の救援要請ばっかりで、今ジアスは独自のシグナルしか使ってないみたい。


「名前の付け方でどこの国の人間の子孫かわかるし、今でも元の国があった地域に住むことが多いし、風習なんかも変わらないから1つの国ではあるけど同じ法律で暮らしてる仲間って感じでもあるのかなとは俺は勝手に思う」


 ……はっ、いけない!

 ちょっとぼーっとしちゃった。

 隊長みたいな苗字が先にくるタイプだと元々天都国の人らしい。

 ユウカ先輩やマスターはシャンゼ、私はロゼクォーツなんだって。

 シャンゼとロゼクォーツは似てるけど、ミドルネームがあるかないかで区別するらしい。

 なるほど。


「それで、肝心のバーミンなんだが。知ってると思うが2種類いる。ドールとアニマルだ」


 ドールタイプ。顔のない裸の人形みたいな黒いやつ。

 動きも遅い、通常兵器でも倒せる。だから2番隊がなんとかする。

 アニマルタイプ。ドールタイプのリーダーみたいなやつ。

 動物の特徴を持つバーミンで、特殊能力を持つ。

 出てくる時と出てこない時があって、出てきたら魔法使いじゃないと基本的には倒せない。

 ……私のお腹に穴をあけたやつもこれ。


「だいたいドールが大量に湧くとこいつがいる。幸いにして、ドールを再び呼び出したりはしないから2番隊がドールをあらかた倒したら俺がアニマルを倒して、それで終了ってのが基本的なパターンだな」


 その他にも色々今度は法律だったりとか、この国の裏事情だったりとか聞かされて確かに特機事項だわ~、なんて思ったら日勤定時のチャイムが鳴る。

 うちって基本的に1勤、2勤、3勤、4勤と日勤の5パターンに分かれてて、8番隊はだいたい日勤なんだけど、出動があると勤務時間も延びるから必然的に3勤と同じ時間に終わり、とか4勤の途中に終わりってなるのね。

 もちろん4勤までいっちゃうと次の日は時差出勤だったり、お休みになるんだけど。

 やっと終わりかぁ。


「よし、じゃあこれで講義は終わるが……、明日も朝9時から今度は別のやつが講義をする。直接ここに来い」


「えっ、また勉強ですか?!」


「講義って言っても、まぁなんだ。カウンセリングみたいなもんだ。魔法が使えるようになるためのな。ということで、今日はここまで。早く帰ってメシ食って風呂入って歯ぁ磨いて寝ろよ」


「は、はい!ありがとうございました」


 こうして私の勉強会は終わったんだけど、別の講師ってこの国に魔法使いはマスター以外にいないはずじゃ?


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