運命
6章 運命
『人生はマラソンみたいなもので一生に走ろうと言って走っていたのに途中で置いてかれたり、ばれないようにさぼったり。ゴールに着けばみんなから賞賛される。人生はそんなもの。疲れたら休めばいい。苦しかったら誰かに助けを求めてもいい。マラソンは皆でタスキを繋ぐのだから。』私は昨日までは小説で読んだこの言葉を好んでいた。でも今は違う。人生はマラソンじゃない。たとえ、例えかもしれない。でも見捨てられたらそこで終了。助けてなんてくれない。温い優しさなんていらない。中途半端な優しさで私に触れないで欲しい。その優しさが一番痛いから。所詮他人事だから、人生は個人戦で心から一緒にいてくれる人なんていないと思う。だから私はこの言葉が嫌いになった。
読んだ小説に文句を言って紅茶を飲む。紅茶を飲んでほっとした空気になったのに君の顔を見た瞬間、少しピリピリした空気になった。君は静かに口を開く。「今夜だね...」その一言は私の心を絞めつけた。今夜。死のうと君と決めた。猶予はもう間もない。私たちは今夜花となって散り、星になり光り輝く。私たちは、死んでも私たちのことを覚えていて欲しい人なんていない。私たちにはもう何もない。手札ももうない。一刻一刻と誹謗中傷が増えていった。私たちはそれを見ることさえ苦しい。お互いが何かを抱え、弱いところを知り、そしてお互い好きになった。私たちは運命で出会ったそう笑いながら君という。私たちの世界に運命など存在しないのだと。この出会いはただの偶然で、ただ同じ考えをしていた私たちが出会っただけなのだと運命を全否定するようなしないようなことを話していた。何でこんな話になったかというと、今日までのことを振り返って私たちが会った頃の話になった。そしてこの話になったのだ。『私たちが出会ったのは、偶然なのか運命なのか』という話。私たちは運命なんて信じてなかった分、自分の口からそんな言葉が出てくるなんて思いもしなかった。それでも私は自分の口から出てきた言葉を否定し続けた。君が悲しそうな顔をしているのにも気づかないまま。
時刻は午後11時。君は先に家を出て事前に探しておいた高所へ向かった。私は少し時間をおいてからその場所へ向かう。君が言うには一緒に行って何方かが突き落としその後を追ったように思われないようにだそうだ。私にはよく意味が分からなかった。そんなこと誰も思わないよ。と言ったけれど、一応と言って君は先に行ったのだった。私はカーディガンを着て静寂に包まれた部屋を出る。机の上には遺書を残して。君は生きた証を残したくないと言って、遺書を残そうとしなかった。私は遺書に『拝啓お母さん』と書いた。もう会えっこないのに。と呟いて書いたのを今でも覚えている。私には悲しんでくれる人なんてもういない。だから私は死ぬのだ。でも。と一瞬思ってしまったことがあった。君には悲しんでくれる人はいるのかな。ということ。君は家族のことも自分のことも何も話してくれなかった。君は私に何も教えてはくれなかった。私のせいかな。私が弱いとこばっか見せたから、君が君の弱いところを見せれなくなったのかな。ははぁ。私はやっぱり邪魔だな。何にも上手くいかない。好きなものも全て失う人生だった。こんな人生にさよならさえも告げる価値はあるのだろうか。もう何も言わず無言で死んでしまおう。そうしてしまった方が何事もなかったように死ねるだろうか。私がいるとみんな死んでしまう。私がいると誰も幸せにならない。君だって。私のせいでこんなことになってしまった。私が居なかったら。君は幸せなんだろう。私はもうー。バンッ!
目を覚ますとそこには赤い彼岸花が咲き誇っていた。そして目の前にはスーツを着た女性。その人は私に手を指し伸ばしている。私はその手を取って立ち上がる。あたりを見渡しても彼岸花しかなく、人もいない。スーツを着た女性は声を出した。「ここは死者の世界です。私はここの案内人の二死村です。清水流華さんですよね。貴方は一時間ほど前飲酒運転で信号無視をしたトラックに轢かれて即死されています。私は貴方に最期の時間を与えに来ました。」そう言って優しく笑う顔を見て誰かを思い出した。私が大事に思っていた誰かに近しい顔をしていた。でも誰か思い出せない。それに加えてこの世界がもし現実だったとしても非現実すぎて認められないよ。意味が分かんない。私はこの世界でどうすれば良いのだろう。私が思考と葛藤しているとまた彼女が口を開いた。「貴方はご自分の願いを叶えたのですよ。そこまで難しく考えることはないですよ。そして私は今から貴方に重要なことをお伝えします。」そう言う彼女の口調は機械のようなまるでAIと話しているかのような口調で淡々と説明を受けた。彼女の言っていることは意味不明すぎてわからない。けれど私は彼女の説明に分かりました。と返しまた目を閉じた。




