決断
5章 決断
夏休みが始まって二週間が経つ。君は私に何も手を出さず、ただただ同じ部屋で過ごすだけだった。いつもお互いが好きな食べ物を食べて好きな映画を観て。それだけでもとても楽しい。今日は君と少し離れたショッピングモールに行く予定だ。君は鼻歌を歌いながら準備をしている。私もその鼻歌を口ずさむ。心地いリズムでそれに加えて夏にぴったりな曲だ。歌いながら準備をしていると君の鼻歌が止まった。準備が終わったのかと思い、リビングへ行く。部屋のドアを開けると、君が服を脱いでいた。私は思わず顔を手で覆う。君は笑いながらごめん。と言って服を着た。君の腕の包帯の個所は少し減っているような気がした。私は覆った手を外すと、君がニヤニヤしながら私を見つめているのに気づいた。「もう何。」と少し怒った口調で君に言う。君は私の言葉を無視して、ニヤニヤしながら行こっか。と言った。私は頷いて君についていく。「行ってきます。」二人の言葉が静寂な部屋に強く響いた。
ショッピングモールに着くなり、君は私の手を強く握った。私は少し焦って手をほどこうとしたが君はより強く握りしめた。嫌な思い出でもあるのかなと思ったけれど、そうでもなさそうだった。君は私の手を引いて色々なお店に行く。服屋や雑貨屋、ゲーセン。最後は喫茶店で落ち着く。君は苦そうな珈琲を飲む。私はフロートを飲みながらパンケーキを待つ。私は珈琲を飲みながら本とにらめっこする君を見つめる。少し眉間にしわが寄っている。そんなに難しい本でも読んでいるのか。私は気になって覗き込む。漢字ばっかりで私には読めないものだった。君は私の行動に気づいたのかニヤニヤしながら私を見ていた。そして君が口を動かそうとしたとき店員さんがパンケーキを持ってきた。君はありがとう。と言ってパンケーキを受け取る。最初は何も思っていなかったけど考えていくとなんで敬語じゃないのか気になった。そんな小さなことに気になるのは私の悪い癖だとわかっていながらも考えてしまう。私はソワソワし始める。不意に君の方に目をやると不思議そうに私を見ていた。君の手にはフォークとナイフ。あ。と少し落ち着き、フォークとナイフを君から受け取る。「いただきます。」と口にする。私が何口か頬張る。君も欲しそうな目をするから何も考えずに一口サイズに切ったパンケーキを君の口元にやる。君は目元を赤く染めながらパンケーキを食べる。君の気持ちに私も気づいて私の顔も赤らめる。多分今の私は君と同じことを考えているよ。間接接吻だってこと。君は当たり前のように接吻するくせに不意打ちはダメなんだなと思った。まぁ外だからもあるのかもしれない。なんて思ったりもして。君が食べている姿はまるでハムスターのように見えた。とても可愛い。君は見るなと言わんばかりに手で遮ってくる。んん。見たいのに。君は必死に阻止しようとする。それもそれで可愛い。でもこの二人の行動があぁなるなんて思いもしてなかった。
次の日君が私を起こす。息が少し切れていて焦っている様子だった。君は目覚めた私の目にスマホの画面を近づけた。私は画面を見るなり顔が青ざめた。そこに映っていたのは昨日の喫茶店の動画だった。テロップには『リアルレズ』と。コメント欄見ると痛々しい現実が見えた。『うわ、マジでいるんだ(笑)きもっ』『この人たちこの中学の二年じゃない?』後者の方には10万いいねもが付いていた。そしてもっと沢山のコメント。私たちはどうなってしまうのだろう。あの映画のようになってしまうのだろうか。もし私たちが離れたら君は生きる意味を失って自殺してしまうんじゃないか。そう思ってしまった。それは私の思い込みか?いやでもいや、わかんない。私はコメントを読み漁っていくなり、私たちの関係や色々な動機に自信が持てなくなっていく。そもそも君が描く未来に私はいるんだろうか。君が私と一緒にいて幸せだって思えたのかな。今までそんなこと考えてこなかった分私に重くのしかかる。私の息が段々と荒くなっていく。君はそれに気づいたのか私を強く抱きしめる。「大丈夫。」君の優しい声に中身のない言葉に少し落ち着く。君はゆっくりと話し始める。「私は流華と一緒に入れて幸せだよ。流華が私に何もしてないって思ってても、一緒にいるだけで本当に幸せなの。でもこのままじゃ流華を苦しめちゃうよ。私は無力な分流華に何もしてやれない。私は流華ともっと一緒に居たいと思う。でも落ち着くまではー。」「いや!」私は君の言葉を遮って声を上げた。君は驚いた顔をしたがいつもの穏やかな顔になって私が言葉を声を出すのを待っていた。君は多分このまま話続けたら、離れようと言って本当にもう会えない場所まで行ってしまう気がした。私から離れないで欲しい。そう思って私が出した決断は、「心中しよう。」そういうと君は笑みをこぼして明るい声で「しよう。心中。」と言った。私たちはコメントといいねが増す動画を見ながら二人の心中計画を立て始めた。私たちの人生の終わり方は星の数だけ存在する。私たちはその中の一つを今選んだのだった。




