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ジオの夢 第五十八話 転開

オレは北の都の館の庭にいる。

目が醒めてから一月立つと、皆がそれぞれの地に戻って行き、館も静かになった。

シレンの弟殿はレーベン殿に、殺す剣を習った。それで一皮剥けた。自分が、如何に甘かったか、悟ったようだ。まるで、人が変わった。

オレには、これからは、真摯に生きたいとも言った。

メイリン殿は、分からない。ただ、行動に落ち着きが出た。

二人は、そのまま草原に戻った。

その兄のシレン殿と姉のアイリーン様はゴドロノフにそれぞれ、居を構えた。草原にはもう戻らないと、それぞれに伝えたようだ。


多くの方々の見舞いは、ほぼ終わった。だから、そろそろ、体を戻そうと思い、今日も一人、舞っている。最近は、自分の位置はここだ、と思えるように舞える。


祖父が亡くなってから、数えきれない程、舞っている。しかし、一度として満足した事はなかった。まだだ、まだだ。オレの位置はもっと先に在る。そんな思いが続いていたのに・・・不思議だ、何が変わったのだろう・・・


うん、他に懸念は幾つも有る。

まず、ギル兄が来ない。どこで落ち着いているのだろうか。

それにカールの事も心配だ。もう自立していないのではないかと思う。憐れな。

まあ、別の意味でオレも憐れなものであるが。


随分と長い間眠っていた。それにも拘わらず、戻って来られた。前迄は、何時も夢を見て、その夢を覚えていた。しかし、今は覚えて居ない。何故だ?

シンシア様は言われたな。夢は夢だと、確かに、もう殆ど思い出せ無い・・・もう眠って逝く事は無いのかも知れない。


『レイ様、真によろしゅう御座いました。』と、声がする。

オレは顔を上げる。いつの間にか、座っていたようだ。

『アンナ様。ご心配をお掛け致しました。この通り随分と戻りました。』

アンナ様が私を抱いてくださる。

『はい。特にお変わりは感じられませぬ。』と、泣きながら喜んで下さる。

傍らには、エルデンフリート殿も居られるのに、離して下さらない。

少し、困ったが

『エルデンフリート殿、ご迷惑をお掛け致しました。』と、ご挨拶を申し上げた。

『レイ様。お戻りに成られましたのは、真に僥倖、お喜び申し上げます。』と、エルデン殿が言われる。

『確かに、限り限りでありましたね。あはは、まさに僥倖。』と、オレは応える。

しかし、戦が止まって良かったかは分からない。ただ、責任はオレが取らねばならない事だから。だから、良かったと言える・・・


『他には何か有りましたか。』と、落ち着かれたアンナ様とエルデン殿に卓での茶を勧めながら、尋ねる。

『政には、何も変わった事はありませぬ。ただ、例の祠とその傍らに置かれていた四角柱の銘板らしき物が見当たらないと報告を受けております。』


『見当たらないとは・・・』とオレが訊く。

『はい。見に行かせた者が申すには、まるでその痕跡がら見えず、最初から存在しないかの様であったと。』

『そうですか・・・』


祠が無い・・・それが理由なのか・・・確かに、今まで、気が散漫であった、少しづつその様な状態におかれ、気付く事もなかった、まるで小さな穴の開いた袋のように張ることはなかった。それが今はしっかりと気が貯まって張っているのが分かる・・・


汗も掻いたから風呂にと言うと。アンナ殿も嬉しそうに付いて来られる。エルデン殿の顔は見ないようにしよう・・・

そのエルデン殿とアンナ様も三日で戻っていかれた・・・

エルデン殿はともかく、私も・・・針の筵とはあの事か?



それから三日後に、ギル兄が来た。豪華な馬車を四代と結構のお供を連れて。

『ギル兄、随分な一行ですね。』とオレが言う。

『ああ、俺は、家で寝ていたから、世話してくれている皆には、楽しみを与えていなかったからな。同行したい者は皆連れて来た。』とギル兄は笑う。


『ゆっくり来られたようで、具合いは如何ですか?』

『具合いはいいぞ。ゆっくりだったのは、自治都市を全て回って来た。うん、良かったぞ。其々に、旨い酒や料理があった。皆も喜んでいた。』と嬉しそうだ。


『手数だが、暫く頼む。』

『はい。不足があれば申し付け下さい。』とオレが笑う。

『ここの目的はレイだからな。レイが居れば、十分だ。』と兄は苦笑いされる。

・・・おそらく、今度は剣山だな・・・


ギル兄は楽しそうだ。それはそれでとても有り難い。

久しぶりにギル兄が来た。どこをふらふらしているのかな。

『レイ。カールを打つのはいつの予定だ?』ギル兄に訊かれる。

『動きが出れば直ぐにでもと思ってますよ。』とオレ。

『そうか・・・今から夏を見て来ようと思う。夏の大炎に会いたい。一緒に行くぞ。いいだろう。』

・・・変わらず、切れる方だな・・・

『楽しそうですね。喜んで。』

『よし、善は急げだ。あの二人も連れて行くぞ。声を掛けてくれ。』


・・・あの二人か、よく思い付かれる・・・



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