ジオ 二部十四話 調整者
『ジョング。何故・・・檻に居た?』と、蹲ったジオが額を押さえ、涙声で聞く。
皆も興味津々でジョングを見る。
檻にいたのはジョングと六人。ジョングは坊に近づき話す。
『坊。好きで居た分けではないぞ。』
『言って見れば、俺等は、教祖とか言う輩の反対派だ。で教祖の支持者が俺等を檻に閉じ込めた。教祖は自分は調整者だと言っていきなり現れた。ここは我が作ったものだ。お前らは何故に此処に居る?と言った。それから、仲間が二つに割れた。』
『なんだ。仲間割れで負けただけか・・・つまらん。』とジオ。
『確かに情けなく、つまらん話だ。』と、ジョングが頭を掻く。
『ところで、坊は何故此処に居る?』
『それは決まっているだろう、と言いたいが、忘れた。最近直ぐに忘れる。何でこんなつまらん所にきたんだか。』と、ジオは座ったまま、空を見ている。
皆は呆れているが何も言わない。
『ジョングの兄は一緒で無いのか?』と、ジオが立ち上がる。
『ああ、一緒にここまで来た。調整者が、兄と、ある程度能力を使える者を連れて行った。あの塔だ。どういう訳か誰も抵抗しなかった・・・』 と、ジョングの顔は苦々しげだ。
『ジョング痩せたな。ちゃんと食べていたか?』とジオ。
『奴ら、一日一食しか寄越さん。だから、痩せた。』
『彼奴等は馬鹿だな。只飯食わせるだけなんてな。俺なら、腹一杯食べさせて、死ぬ程働かせるのにな。』とジオ。
脇でレディティアが睨む。
慌てて、ジオが言う。
『冗談はそれくらいにして、腹拵えだな。ゼルト、簡単でいいから、消化の良い物を沢山出してやれ。それから、汁もな。』
『ああ、わかった。』と、ゼルトがジオを見てにやつく。
ジオはそんなゼルトを見て何か言いたそうにしたが、レディティアの顔が目に入ると、止めた
『ハーバー。あの二十人は襲って来そうか?』とジオ。
『いや、それは無いな。俺の白銀の剣に怯えていたからな。』とハーバー。
『そうか、弱いのか・・・つまらんな。』とジオ。
ハーバが溜め息を吐く。
『ジョング、食べながらでいいぞ。答えてくれ。』とジオが、ジョングに声を掛ける。
『ああ。』
『調整者はどんな奴だ?』
『うん・・・女性だ。年齢は老けていたぞ。そう云えば、服装は教会のに似ていたいのか・・・』 と、ジョングが不思議な顔になる。
『そうか。で、ジョングと兄も、ここの生まれか?』と訊く。
『ああ、子供の頃迄だな。ここは元々結界など無く、長い年月を駆けて自然に出来たと伝えられている。五百年くらい前にはこの森が出来上がっていたとな。それが子供の頃に結界がゆっくりと作られていったんだ。そして嵐が舞うようになると、皆弾き出された。それで、最近、その嵐が無くなったと聞いた。で、慌てて来たよ。そしたら、今度は入れるが、出れない。兄でも結界に穴を開ける事も出来なかった。その後に、その調整者が現れて、兄と能力の有る者達を連れて行った。』
『なあ、坊。兄は無事だと思うか?』と、心配顔のジョング。
『どうだろうな。能力を使う為に連れていった訳だからな。期待はするな。』
『そうか・・・確かにな』
『それから、食べ終ったら、ここから出ろ。あれとやる時には、何が起こるか、分からん。結界の外にいろ。』と、ジオがジョングに言う。
『結界から出られるのか?』
『ああ、オレの気を込めた石を持たせる。それで、出入り自由だ。』
『母者たちも出ろ。』と、ジオが皆を見る。
『母は嫌よ。遠くで心配するより、近くで手伝うわ。』
皆も頷いている。
『坊と別れたら、帰るのに苦労するからな。』とゼルト。
『それなら、ゼルトとは、あの世まで一緒だな。』とジオが笑う。
『不吉よ。』ベロニカが嫌な顔をする。
『大母、オレのあの世は戻って来られるから、不吉でないぞ。』とジオは慌てる。
教祖の信者も、そうでない者も、近くの結界を目指して歩いて行く。ジョングはそれを見守っている。それをハーバも見ている。
ジオは吊り寝台を作って寝ている。ハーバ以外の他の者は馬車の中だ。
『ジョングは行かないのか?』とハーバーが訊く。
『ああ、兄が最後なら、この目で見たい・・・弟だからな。』
『確かにな。』とハーバーが頷く。
『なあハーバ。本当は何しに来たんだ?』
『知りたいのか?』
『ああ、知ら無いと、後で大変な事になる、気がするんだ。』
『ああ、それは良い感だ。では教えてやる。坊はずっとジョングの事を気にしていたぞ。しかし、坊にも色々あったからな。だから、遅くはなったがジョングを探しに来たんだ。』とハーバー。
『そうか・・・しかし坊はそんな事言わなかったが。』とジョングが驚く。
『まあ、坊にして見れば、ジョングが弱い者に捕まっていたから、恥しくて助けに来た、なんて言いたくなかったんだろう。』
ジョングは黙っている。
『それに、坊の剣はどうした?あれがあれば負ける訳無いだろうに。』ハーバーが不思議そうに言う。
『ああ、あの剣と石は調整者に持っていかれた。どうする事も出来無かった。』と俯くジョング。
『その後に、意見が割れた。そして、騙し討ちで捕らえられた。仲間だったのにな・・・』とジョング。
『そうか・・・』
『しかし、不思議なんだ。あの調整者は最初は毎日姿を見せていたんだ。しかし今は、殆ど見ない。それに、能力のある者と石以外には興味が無いようだ。石の付いている物は全て、持っていった。その後は一切干渉は無いな。』と、ジョングが話す。
『ふーん。』とハーバー。
勿論、ジオは話を聞いている。
・・・なる程、自己完結とは劣化するのか・・・
皆が結界の外に出たのを見計らい、ジオが伸びをしながら吊り寝台から降りて来る。
『さて、始めるか・・・皆よいか?』と、ジオが言う。
先の尖った四角柱の塔の入口らしき扉の前に立つ。
建物の幅は馬車四つ分はあり、入口らしき扉も馬車が入る大きさだ。高さは三階建に尖った屋根が載っている。一階から上に伸びるに従い、尖る形になっている。頂上から棒も突き出ている。
『オベリスクに似ているな。』と、ジオは思う
ハーバーとジョングはジオの後に立ち、更に後の、屋根と囲いの無い馬車に、皆は待機している。
『誰かいるか?居れば入口を開けてくれ。壊すのは忍びないからな。』と、ジオ。
開く気配は無い。それを確認したジオが扉を左右にと魔力を込める。扉は何かが飛んだ音と共に左右に開いた。
ジオは中を確かめ、建物の中に入っていく。
建物の中は天井は吹き抜けとなっている。壁沿いに檻が並んでいる。そしてその中に横たわる人々。死んでいるのか、眠っているのかは見た目ではわからない。
建物の中央、、二階程の高さの壇の上に、老婆が立って祈る姿が見える。実物なのか、像なのか見ただけでは判断が出来ない。
ジオが声を掛ける。
『仕方ないから来てやったぞ。』
『誰だ?我の眠りを妨げる者は?』
『来いと言っておいて、オレの事がわからぬのか?』
『我は、我だ。もう要らぬ。』
『そうか、では返して貰うぞ。』
ジオは浮き上がる。そして、老婆の脛に手を触れる。
『なる程、低い物を入れ過ぎて、上手く使えぬか・・・』
とジオ。
『では、皆の物も含めて返して貰うぞ。』
『お前に、それが出来るか。』と声がする。
と、天井よりジオに向かって白い光が射す。その光を受けてジオが輝く。
『ジオ・・・』とレディティアが叫ぶ。
『母者、大丈夫だ。』とジオ。
ジオは光りを吸収していく。そして突然光が消える。
『お前は〇〇〇か?』と声がする。
『〇〇〇が何かは知らん。が、この力は元々オレの力だ。分かるだろう。だからお前も戻れた。ただ、この世界に自己完結は不用らしい。わかるか?』
『また同じ事になる・・・展開が誤りだから・・・全て戻す・・・〇〇〇・・・閉鎖、消滅』と、声が終わった。
老婆の姿も粉塵となり、消えていく。
『ちっ、全て戻すか・・・ここを離れる。崩れるぞ。気を付けろ。』と、ジオは倒れている人々と馬車を建物の外に出し、更に崩れる石の外側に移動する。
『皆、怪我はないか?』と、ジオが声を掛ける。
『ああ、大丈夫のようだ。』とハーバーが返す。
『ジオ、あの声は何?』
『砂漠の主の成れの果てかな。』
皆は、きょとんとしているが、それ以上の質問は無い。
『ジョング、そのうちに、目を覚ます。見ていてやれ。』とジオ。
『わ、わかった』とジョング。
『さて、疲れた。帰るか・・・』と、ジオが言う。
皆が頷く。
『ジョング、落ち着いたら、ノルデノルンに来い。もう結界も無いからな。』と、ジョングに声を掛ける。
『ああ、必ず行く。』と、ジョング。
何か、忘れている気がするが、まあ良いか、とジオは思う。
二部終了します。また、空きますが、すいません。
三部で終了予定です。




