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ジオの夢 五十三話 リューリヒト

停戦後、間もなくヴァイス家の当主、カールの兄ジュストが亡くなった。ヴァイス家はカールが継ぐようだ。ジュストの妻はどうしたのだろう。それにアラゴンの当主の所在も不明で、噂を聞かなくなった。アラゴンの領地はロンバニア家が自治領として治めている、と聞いた。その隣のカールの領地は、カールが居なくなり、どうなったのだろう。誰か、新たな者が出ただろうか?

オレは、最近、二日に一回程、日中に眠るようになった。眠気が来る訳ではない。行き成り寝ている。それでも、半日も寝ているわけでないのは助かる。そろそろ、長く寝てしまった時の、事を考えねば・・・


『レイ様、ヴァイス家のジュスト殿の奥様はカール殿の領地に入られたようです。ただ、あの奥様の出自が、わかりません。』とベルン殿が言われる。

『あの方はアラゴン殿の御息女ではありませんか?もしくは、オーラン殿の縁戚とか?』と聞いて見る。

『残念ながら、お二方には縁者がいないようなのです。』

『そうですか・・・まあ、出自などどうでもよい事かもしれませんね。』

『それより、カールがヴァイスを継いだ事のほうが気になります。きっと、何かをするつもりなのでしょう。』と私。

『レイ様、随分とご学友を気になさるのですね。』と、ベルン殿が驚かれる。

『はい。あれの兄もあの時に、おかしな事を言っておりました。行く所まで行ってしまった者達だと。』

『その様な事を・・・』


オレは調べ物で書斎にいる。そして、吊り寝台で寝るのを止めた。そのまま寝てしまい、起きるが事が出来なくなるのではと、心配になったからだ。書斎にある病の事を書かれた書を探し、読んでいる。この病の事が少しでも分かればと。書斎にある書を全て探し終えたら、学院に行こう・・・


『レイ様、ヴァイスの妻と名乗る方がゴドロノフに尋ねて来られたと一報が有りました。』とネイル殿が伝えてくれる。

『そうですか、わかりました。』と答える。

一度お会いしただけの筈だが・・・ 

『では、ネイル殿。ゴドロノフに行って參ります。』と。立ち上がる。

『お一人で、行かれるのですか?』

『はい、ゴドロノフに行くだけですから。』と微笑む。

『なりません。途中でお休みになられたら、如何致します?』と、顔が怖い。

ネイル殿も、随分と怖い顔をされるようになった・・・ 

『では、ネイル殿。一緒に行ってくれますか?』と聞いて見る。

『行きたいのは山々ですが・・・仕事があります。それに、今週の当番はユリア様ですので、ユリア様にご連絡致します。』と、ネイル殿が残念そうに言われる。

当番?・・・なんだろう・・・後で聞いてみるか・・・


ユリア様とゴドロノフの総督府に到着する。途中、眠る事も無かった。ユリア様に迷惑を掛ける事も無くて良かった。道中、ユリア様に当番の事を聞いて見た。ユリア様が言われるには、私が出歩く時の付き添いの順番らしい・・・うん、仕方ないか・・・そう云えば祖父の時もよく付き合わされたものだ・・・


総督府でエルム殿が言われる。男性と女性がお待ちですと。総督府の応接室に入る。ユリア様も念の為、同席されると。そこには、男性と女性が待っている。女性は見覚えが有る。男性は会った事は無い。二人に会釈をする。

ユリア様が目付きが変わられる。

『これは、オーギュスト殿。ご無沙汰を。』と、ユリア様が言われる。

『やはり、紅蓮殿でございましたか。あの節はお世話になりました。』と、頭を下げられる。

『いえ、結果は残念な事に成り、無念であります。』

『それは、我が当主の判断でありましたから。』


ユリア様がリューリヒト家に雇われ、アラゴンのオーランを捕らえ、差し出した時の話をして下さった。リューリヒト殿は人の良い方で疑う事をなさらない人であった。だから、オーランの引き上げるから許してくれと言う言葉を鵜呑みにされ、解き放ったところを、リューリヒト殿は殺害されたらしい。リューリヒト家の執事をなされていたのがオーギュスト殿で、その混乱に、彼に頼まれ、ユリア様達はリューリヒトの家人を助け、脱出したと。その後、リューリヒト家がアラゴン領に組み込まれたのは当然である。


『レイ様とお呼びしても?』と、ルシール様と言われたリューリヒト家の現当主が言われる。

『当時、ヴァイス家とアラゴン家は、カール殿を通じて仲は良いと聞いておりました。それで、私は、ヴァイス家のジュスト様に、領地を取り返す助けをして頂けないかと、お願いに参ったのです。すると、努力はしてみるが、おそらく無理だろう。取り敢えず機会はあるから、側にいれば良いと、仰って下さって、皆共々厄介になっていたのです。カール様もお会いした当時は優しい方だったのです。』

『それが、憎しみの心が表に現われるようになりました。その憎しみが何処に対してなのか分からなかったのですが、その事をジュスト様に申し上げますと、ジュスト様が言われたのです。それは宗家に対してだろう。怨む心根は分かるが、親のした事を考えろと説明して納得したはずだが・・・と首を傾げられておりました。』


『その頃より、ジュスト様の体調がおかしくなられ始めたのです。ジュスト様はカール様をお疑いになる事はなかったのですが、私は疑いを持ってずっと見張っていたのです。すると、ジュスト様が寝入られてから、何やら液体らしきものをお口に入れられるのを見てしまいました。それで、その件は内緒に、カール様と何か有りましたか、とジュスト様に尋ねたのです。すると、ジュスト様は、私がカール様の憎しみを申し上げた直ぐに、カール様に宗家と争うことを考えるな、と申されたそうです。で、私はカール様のなさった事を話したのです。それを聞いたジュスト様はとても悲しそうでした。それから、ジュスト様は、暫く此処には来ぬように、と言われました。』


『後に、カール様が後ろで糸を引かれたとジュスト様から聞かされたトレド草原の戦いで、敗北された後に、ジュスト様から呼ばれました。そして、そなたを妻として紹介する。私の財産を全て妻に譲ると宣言してある。カールには、リューリヒトの近くの領地を与えてある。そこに今回の戦の始末により、引っ込むように告知してある、と。』


『私はもう長くはない。私が死んだら、ヴァイス家の領地とカールの領地、もしくは、リューリヒトの領地を交換すれば良い。と仰られました。その後、ジュスト様は、何も口出しせず、アラゴン家とオーラン殿の言う通りにするから、何が有っても気にしない様に、と言われ、その通りになさっておられました。そして、ロンバニアに兵を向けた事も、そしてロンバニアに各地で敗れたこと事も、特にきにされる事もありませんでした。』


『停戦の時に、カール様に担ぎ出され、レイ様との交渉をさせられたようですが、レイ様にお会い出来て良かったと喜んでおられました。で、宗家には大金を払ったから、困った事があれば相談すると良い、あの当主は道理の分かる男だから、と笑っておられました。』


『ジュスト様が亡くなられると、モトロフ様が全てを仕切って下さいました。カール様にも交渉して頂き、カール様の領地に移る事が出来ました。しかし、アラゴン家のすべての領地はロンバニア家が押さえており、リューリヒトの領地には戻ることが出来ません。それで、モトロフ様が言われるには、宗家を介して交換を頼めば、あのロンバニア公でも今なら可能性があるのではないか、と教えて頂きました。で早々にお伺い致しました。レイ様、お願い出来ませぬか?』と言われる。


『成る程・・・今、私は具合いが悪く、家人より出歩く事を、止められております。文を認めましょう。それと、ユリア様を私の代理で同道して頂きます。

ユリア様はギル兄とガイのお気に入りでもあります故、力になってくれるとおもいます。、ギル兄が嫌と言われた時の為に、秘策を預けて置きます。』と、微笑む。


『それは、有り難う御座います。一見に近い私などの難題をお聞き頂き、嬉しゅうございます。』と、ルシール様は、オーギュスト殿共々頭を下げられる。


『一つ、質問なのですが、アラゴンの当主はどうされたのでしょう?』

『おそらく、屋敷内におられるはず、というのも、緑の衣類を着た者達を見かけましたから。緑の衣類の者達は隠れておりましたが、人気の無い場所に於いては、アラゴンの当主やカール様に付き従っておりました。その事はジュスト様存命の頃から、屋敷内に出入りしているのは暗黙の了解であったようです。ジュスト様の屋敷は広う御座います故、誰が何処に居てもわかりませぬ。』


『ジュスト様は笑っておられましたが、当初、アラゴン家の当主は偽物だと、オーラン殿が消して、似た者を傀儡に仕立てたと、噂があったようでございます。それも、緑の者達が見え隠れするようになると、そんな噂も聞かなくなった、と。』


緑の者達か・・・アラゴンか・・・カールはどうなった・・・


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