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ジオ 二部九話 泉の村

ジオはテントを北に飛ばす。バランから泉の村へは、直前で、亀裂都市ムエルタの東を通過することになる。今回はムエルタに寄らず、泉の村へ飛んでいる。


泉の村の辺りに近づく。ここはまだ悠久の森ではない。まだ砂漠の地ではある。しかし、イランジャが守護した砂漠ではない。

上空から眺めるが、言われていた灌木の存在はない。ただ、砂地に大きな深い穴と穴の周りに枯れた木々か散乱している場所がある。穴の底にはいくつもの小さな穴が有る。昔はその穴から水が湧いていた。今は水の気配も人の気配も感じられ無い。


いや・・・誰の気配だ?その深い穴の底の横に影に隠れる様に穴が有る。その洞窟から気配が漏れている、とジオが感じる。

しかし、気配が小さい・・・何でだろう・・・


ジオが穴の傍にテントを降ろす。まずジオが扉を巻き上げ、テントから出て来る。他の者も順次出て来る。そして、穴の周りに立つ。

『ここが泉の村なの、何も無いし、誰もいないわ。ジオ、間違っていない?』とレディティアが言う。

『ああ、間違ってはおらん。アレンの結界が消えた。本来であれば、そのまま泉が湧き出す筈だが・・・』

ジオが首を傾げている。


『誰かいるか?』とジオが気配を飛ばす。

他の皆も穴の底を見ている。

『坊か、儂だ、アレンの残滓だ。残滓どころか、今は意識だけの塵だがな。』と意識が皆に伝わる。

『どうした?体もないのに意識だけ残ったのか?』

『ああ。そのようだ・・・』

『しかし、結界は消えているのに、泉が湧いておらんぞ。何かあったか?』

『ここに儂がきた時、結界はあった。泉も木々も結界の中に存在しておった。

そこに、不可侵の者と呼ばれた者も居た。何故か儂をアレンと呼んだ。昔は人の名などに興味を示さなかったのにな。

そしてその者が言うのだ、アレン、永遠に生きたくないか、と。永遠か、永遠など幻に過ぎんと知っている。

儂は約定通りに消滅しに来たと申した。すると、その者は約定などもうない。お前が死んだ時点で終了しておる、と告げて来た。

儂は混乱した。そんなはずはない。儂が死ねばここに泉は沸き始めるはずじゃ。ここは儂が布いた結界のはず・・・もしそうでないとしたら・・・ではこの結界は誰の結界か・・・しかし、木々も泉もあるではないか・・・と思わず、坊に貰うた黒い石を投げた。石は結界に反応ぜず、結界と思われた所を通り過ぎ、宙に浮いとった。その時、分かった。

これは幻なのだと、儂は残滓として残ったが、約定はその時済んだのだ。そして、一千年の時に泉は枯れたのだと。それで、儂は自分を消そうと石を呼んだが、石は宙に浮いたままであった。その残滓の力は吸われていたのに気が付かず、外形さえも消えていた。もう、じぶんを消す力も残っていなかった。

その者は永遠を与えた。代わりに力を貰ったと言って、消えて行った。坊に貰った黒い石、あれも持っていかれた。すまんな。』

『ああ。大丈夫だ、オレの物はオレが許した者しか扱えんからな。』とジオ。

『そうだったな。』とアレン。

皆にはアレンが笑った気がした。


『あれは不可侵の者なのか?』

『あれは、虫だ。オレ等ではどうにも出来ん。それより、アレン。消してやろうか?』

『出来るのか?出来るなら頼む。』

『では、用意はいいか?』

『用意は無い。何時でもよい。世話になった・・・』


『アレンは逝ったの?』とレディティアが聞く。

『ああ、消えた。まともな力は無かったな。もう漂う位しか残ってなかった。』

『消さなくても、自然に消えたのではないの。』とレディティア。

『いや、消さねば永遠に近い時を漂っている。そのように変えられていた。』


『坊、我等も力は吸われるのか?』とベロニカが聞く。

『大丈夫じゃ。皆オレの石を持っているだろう。あれは虫除けだ。体から多少離しても効果はある。それに、アレンは残滓だ。残滓は意思が有るようで無い。経験からの反応だ。オレ等は意思があるから、そう簡単には吸われん。』

『抵抗すればよいのね。安心したわ。』とベロニカ。

『坊。虫とは何の虫なのでしょう。』とネフェルティ。

『虫か・・・意味はいらいらさせるそんなところだったかな。つまり、変質したものだ。』とジオ。

『・・・』

わかったようで分からない答えね。ジオも能くわかっていないのね・・・とネフェルティは思う。


今は皆でテントの中にいる。

『さて、ジョングの居場所がわからんようになったな。どうするか?』とジオ。

『ネティ。他に村はないのか?』

『聞いたことはないわ。』

『そうか・・・仕方ない。あれに聞いてみるか?』

『誰に聞くの?』と、レディティアが興味なさそうに聞く。

『母者。興味ないだろう?』とジオ。

レディティアは返事をしない。

『・・・』ジオが顔を顰める。



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