ジオ 二部八話 再びのバラン
ジオはガイナとガイウスを紹介する。勿論、ネティは知っている。レディティアはジオの事で感謝を述べている。ガイナとガイウスも、ジオのお陰で街が賑やかになり、街の住民が豊かになったと、感謝している。
ジオは街を見渡す。確かに、街に活気はある。しかし、多くの人々が街に流れ込んだ様子は感じられない。
『ガイウス。街に人を。呼び込む様な触れを出しているのか?』とジオが聞く。
『坊、そんな必要はないだろう。今の人で足りるようにと、教えてくれたのは、坊だろう。それに人が増えれば、分配が減る。不満が出る。だからそんな余計な事はしない。』
『元々住んでいた者が、縁者に呼ばれ戻って来たのはいるがな。』と笑う。
『それに、砂漠の教えでは一族の者以外、雇うことは禁止されている。』とガイウスが真面目な顔になる。
そうだ、砂漠の教え、イランジャの教えは神の教えではない。砂漠で生きるための教えだ。この街は砂漠の街の中でも、特に生活に厳しかった。だから教えは、厳格に守られている、とジオは考え込む。
『坊は、砂漠の教えを知っていたのかい?我等に教えてくれた事は、教えに反することは無かった。あっても、脇を微妙に抜けていたよ。』と、ガイナが言う。
『ガイナ。オレに知らないことは無い。せっかく教えても、使えないのでは意味がないだろう。イランジャの教えは砂漠の民の生きる教えになる、と・・・何かの日記に書いて有った。最近、忘れっぽくなった・・・』と笑う。
『フイセンの回顧録よ。』とネティが教える。
『そうじゃ。フイセンの回顧録じゃ。ネティはもう読み終わったのか?』
『ええ、しっかり読んだわ。何せ色々知恵が散りばめられていたわ。』と。
『だな。で、サラは心配事は消えたか?』とジオがサラを見る。
『ええ。坊はあの時、起きていましたか?』とサラが笑う。
『いや。サラが、バランで、アエラに移ったと聞いたと言ったときじゃ。その時に、サラが砂漠の教えを忘れる訳がない。だから心配であろうなと考えた。』
『はい。砂漠の民は教えを忘れる事は有りません。』と真面目な顔になる。
『砂漠の街を訪れるのに、砂漠の教えを知らんという、礼を知らん奴はゼルトとハーバーくらいだろうな。』とジオが二人を見る。
ゼルトとハーバーは顔色を失っている。
それを見ていたベロニカは思う。ジオが物を忘れる事など無いはずだ。特にうけた恩や、仕打ちを返すことは忘れない。忘れたと言うのには、何か目的があるのだろう・・・ゼルトやハーバーではジオには勝てないわね・・・
『なあ、サラ。何故店主はそのような事を言ったのたのだろうな?』とジオがサラに聞く。
『おそらく、私達をアエラに追いやりたかったのではないでしょうか?』
『そうかもしれんな・・・』
それとも、バランに居て欲しくなかったか・・・
『ジオ。いつまで考えているの失礼でしょう。』と、レディティアがジオの額をぱちんと小突く。
ジオは思わず、額を押さえしゃがみ込む。
『そ、そうじゃ。そうじゃな。』とレディティアを睨む。
レディティアは素知らぬ振りをしている。
『ガイウス。テントの中を見せてやろう。』と額を押さえたままいう。
『おう。それは楽しみだ。』とガイウスが笑いながら言う。
ベロニカも笑いながら思う。何故、坊とも在ろう者が、いつもいつも、レディティアには簡単に叩かれるのだろう・・・
テントの外に食台を出す。皆で食事を摂る。
『旨いな。坊の処の料理人の食事は旨い。』と、ガイウスが仕切りに言う。
『ガイウス。余り言うな。つけあがる。それにガイナが不機嫌になるぞ。』とジオが、隣のガイウスの耳元に小さな声で言う。
『そ、そうだな。』と、ガイウスが声を潜めて返す。
ガイナが話し出す。
『坊、関係が有るかわからないが、南へ向かった者達がいるようだ。結界が無くなったと言ってな。』
『するとどうなる?』とジオ。
『どうにも。ただ、永遠の者が復活したわ。向かっている者達は永遠の者の信望者ね。』とネティが言う。
『永遠か・・・嫌な名前だ・・・』とジオ。
『坊は永遠が嫌いなのですか?』とサラ。
『ああ。この世に永遠は無い。通常より長くあるだけじゃ。時が全てを変え、やがて滅する。もし永遠があるとすれば、そこに時の流れは無い。動く物もない。死んだ世界に他ならない。時の流れる世界から時の流れない世界には行けない。だから結界があるように思える。』と、ジオが続ける。
『だから、南にはいくな。厄介事しか無いぞ。』
『良いのジオ。もう離れてしまって・・・』とレディティアが心配する。
『ああ、母者。説明はした。オレがいると厄介事が来る。落ち着いたら、直ぐに行くからと言っておいた。バランに戻る。』
『サラ。あの店には行けるな?』
『はい。大丈夫です。』
『よし、とっちめてやる。』とジオが嬉しそうだ。
レディティアとサラが顔を見合わせ苦笑する。
夜明け前に、バランの広場にテントを下ろす。多くのテントが有る。広場は当初来た時より三倍は広くしてある。だから、目立つ事無く下ろせる。
午前の昼前に、ジオと三人は例の店に行く。レディティアとベロニカ、ネティは買い物だ。ジオは思う。
買い物以外する事は無いのだろうか、よく飽きないものだと・・・
『坊。また良からぬ事を考えていましたね。気をつけないと、でこが腫れますよ。』とサラが笑って言う。
『なあ、サラ。何故に母者のぺんが避けれんのだろうな。気配も察知出来ん。』とジオが首を傾げる。
『それはジオの為にと云う愛情に包まれているからではないですか。』とサラ。
『・・・』ジオには納得がいかない。
店は無い。土の地面があるだけだ。ゼルトとハーバー、サラが周りの店に聞いて回る。能く有ることだと皆が言う。一日商売し、次の日は別の場所で商売する、そんな者達がいると。緑の看板の有った場所も地面が有るだけだ。
ジオは思う。誰だろうこの様な事をするのは・・・思い当たらない。
四人で広場のテントに戻る。皆がそれぞれ思いに耽ける。
ジオは思う。
・・・泉の村に行こう・・・・しかし、嫌な予感がする・・・




