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ジオの夢 幕間七話

ノックが聞こえる。男の人が入室して来る。五十歳位の眼鏡を掛けた、まさしくミスター行員と言うような方だ。

『お待たせ致しました。支店長の佐藤と申します。』と名刺を下さる。

・・・名刺らしきものが有ったな・・・どうするか・・・

と、漣さんが名刺を出して下さる。有難い。持って来て下さっていたのか・・・

オレも名刺を渡す。漣さんの名刺も用意しておかないといけない・・・


『佐藤支店長とは初めてでございますよね。』と申し上げる。

『はい。こちらに配属になりまして一年になりますが、お会いするのは初めてでございます。』と言われる。

オレは免許証を出し、確認して貰う。これで安心された様だ。言い出す前に確認が出来、ほっとしているようすが伺える。

『こちらには二十億程置いてあると思うのですが、ご挨拶の代わりにと申しては何ですが、更に二十億お預けしたいと思っております。』と私が言う。

勿論、店長は喜んで下さる。預かり資産が増えるのは店長の成績だ。

『で、実はお願いしたい事がございます。信頼のおける弁護士の方と会計士、もしくは税理士の方をご紹介頂きたいのです。』と、支店長の顔を見る。

支店長は、何となくやはりという顔をされている。

・・・これは困った事になりそうだ・・・


『で、もう一つは、銀行の取引印と管理者を変更したいのですが出来ますか?』と。

『勿論、新井様のご希望に添えると思います。今、商店街の祭の話で会長と副会長が見えられておりまして、その会長は弁護士の先生で、副会長は税理士の先生です。お二方とも、こちらの商店街で長く続けられており、信用は十分に築かれておられるかと・・・』と言われる。


『それは助かります。ところで街の祭があるとか、それはいかなる祭なのでしょうか。』

『はい。商店街の真ん中にあります、稲荷神社への商売繁盛の御礼を行う神輿祭りであります。商店街や地元の皆様のご寄付にて毎年実施されております。』

『なるほど、では私も会社と私でお出しさせて頂きましょう。』

『それは、商店街の皆様もお喜びになります。なにせ、お名前を頂ければ、祭に箔がつくというもの・・・・あっ、ではお二方をお呼び致しましょう。』

・・・箔?荒井の名前はそれ程なのか?

と漣さんの顔を見るが、漣さんも驚いているようだ。


ノックの音がする。私達は椅子から立ち上がる。扉が開く。男性が二人、店長の後に入って来る。店長は二人を紹介してくれると、厄介事と思ったのだろう。また後程と言われると出て行かれた。


商店街の会長で弁護士をされている方は、堅田氏と言われた。そして副会長で税理士の方は片岡氏と言われる。

なんだか、似た名前で間違えそうだ・・・


『荒井社長は、新しい弁護士と税理士を探されているとか・・・』と堅田氏が言われる。

『はい、今は、安田弁護士と住田税理士にお願い致しております。顧問契約は来月で切れます。これからは、私自ら会社に力を入れようかと思いまして、全て刷新したほうが良いと考え、新たな方々を探しております。こちらの女性は笛井漣さんです。彼女には昨日から私の補佐をお願いしております。お二方には今日より顧問をお願い出来ればと思っております。』と、二人を交互に見る。


四十代半ばの痩せた体型の片田弁護士が言われる。

『私は、安田先生とは面識があるのです。先輩にあたります。ですから、仕事を取ったと思われると、これからの仕事に差し障りがでます。勿論、荒井社長からの話は大変有難く、出来ればお断りなどしたくないのですが・・・』と言葉を濁される。


『そうですか・・・それは残念です。地元の先生をと思ったのですが・・・しかし、安田弁護士は契約の継続は望まれていないと思います。それより、誰が私の顧問になるか気にされ、知り合いの方が顧問となれば、多少は安心されるかも知れません。何せ、私から告訴されるだろうと解っておられますから。』と笑う。


『住田税理士も同じ境遇に在ります。』と、片岡税理士を見る。こちらも、四十代半ばに見えるが、眼鏡を掛け、少々ふくよかに見える。


『それは、私に告訴をしろ、と。』と片田弁護士。

『事と次第によっては。それを税理士の先生に調べて頂く事になりますが、まずそう成ります。』

お二人は顔を見合わせ頷く。

『そう云うことであれば、是非お引き受け致したいと思います。』と堅田弁護士が言われ、片岡税理士も頷かれる。


『それは助かります。折角の御縁ですから。それともう一つお願いがあるのです。』と。

『何でしょうか?』と片岡税理士が応えられたが、言葉が硬い。

『実は、先月の請求書の中に、鮨直の分が有りまして、それで、二人で食べに行ったのです。ところが、店は閉まっていました。外の様子からここ二、三か月のことではなさそうなので、呼び鈴を押して見ました。すると、店主も女将も居られましたので、話を致しました。』と二人を見る。

二人はそれぞれ何か考えているが・・・


『外は兎も角、店の中は、見事な造りで有りました。この店の店主だ、腕は良いに違いないと思いました。そこで、店を再びやる気はないのかと聞きました。すると、遣りたいのは山々だが、騙されて金が無いし、誤解で商店街からも信用を失くしてしまったと申されます。では、資金は貸して差し上げましょう。再び鮨店を開かれたらいかがでしょうかと提案いたしました。勿論、金利は頂きますが。であるならば商店街にも頼んで貰えないかと言われました。荒井社長が頼んでくれれば許可は下りるから、と言うのです・・・私のような若造にそれは無いだろうと申したのですが、いや大丈夫だと申されるのです・・・どうなのでしょう。』と二人を交互に見る。


『告訴はしないのですか?』と堅田弁護士が聞かれる。

『ええ。請求書については申告するようにとお願いしておきました。』

『申告ですか・・・なるほど。』と片岡税理士が言われる。

『この件は、鮨直さんが悪い訳では無いと思います。ですから、申告さえして頂ければ、会社にも傷は付きませんから。』

『確かに、荒井AMCさんにして見れば大した金額ではないだろうが・・・』堅田弁護士が考えている。


『わかりました。荒井社長がそれで良いと言う事であればその様に致しましょう。』と堅田弁護士。

『はい、宜しくお願い致します。』



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