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ジオの夢 三十九話 侵入

オレは踊った衣装のまま馬車で、ディレントの街に引き上げた。ディレントの街で化粧を落とし、着替えもした。今は総督府として改装した、金の狼の酒場にある中庭で無為に過ごしている。


・・・これが一番だな・・・

アルギラ様から送られた酒は美味い。アルギラ様の継承式も無事済んだ。ギル兄の使者が来たのには驚いたが・・・

これで、ヴァイスも無理をせず、攻めて来るのを止められれば良いが・・・無理であろうな・・・ 


『レイ様。ご無沙汰しております。』とワーレン殿が現れる。

オレは衣装のままコンスタンチン領をうろうろしている訳にもいかないからと、ワーレン殿にはこちらでお話をお願いした。

『ワーレン殿。驚きました。ギル兄とコンスタンチン家に付き合いがあるとは?』と。

『付き合いと言うよりは、無理強いの借りなのです。ギル様が兵を出された時に、土地を通過させて頂いたのですよ。その時の借りが有りまして、それを、お近くのレイ様に自分の変わりにお返しして頂きたいと、お伝えせよ、と言われてきました。』と、笑う。


『ギル兄も無体な事を言われる。どの様にお返しすればよろしいかわかりませんが・・・』と顔を曇らせて見せる。

『守って頂ければ有り難い、と仰っておられましたぞ。』と、笑っておられる。

それなら・・・ギル兄の頼みと言うよりは、乗りかかっている船だな・・・・


『ところで、ギル兄は戦を誘っておられるのですか?』

『さあ、私などには、ギル様のお考えは解りかねます。』と、ワーレン殿が答える。

・・・まあ、話せる訳は無いか・・・

『あっちもこっちも、火種だらけで、うかうかと近寄れませんね。』とオレ。

『そうなのですか?火種を拾って歩くのがお好きとお聞きしましたが?』と笑われる。

オレは苦虫を噛み潰す。

ふん、誰が好きなものか・・・オレは寝ていたいだけなのに・・・


ワーレン殿は旅団のお手並みを拝見する、と言われ、出て行かれた。旅団に付いては薄々気が付いているのだろう。特に聞かれなかった。


オレはこれからの事を考える・・・もうコンスタンチン家の事は済んだと同じだ。心配はしていない・・・

それより次の事だ・・・クラウス家も厄介な事を・・・仕方ない、取られでもしようなら面倒だ・・・ユリア殿なら上手くやってくれるだろう・・・さて、兵を何処に出すか・・・


兄の方はまだ先の話だ・・・兄も無理矢理するつもりはないようだ・・・熟すのを待っているのだろう・・・


ーーーーーーーーーーーー

レイズ家とプラッター家が出兵の準備、との報が入り、兵を待機させている。両家の領内でも、コンスタンチン家に兵を出す、という噂が流れている。二千、二千の四千の兵が迂回し、街を襲撃するするとの噂も入っている。随分簡単に漏れるものだ・・・


街の入口には、ユリア殿の指示で、簡易の柵を設けたが、如何程の効果があるであろうか・・・

ユリア殿の下には、二人の女性が表れ、付き従ってい・・・


コンスタンチン回廊は一部を除き、両家に割譲された。理由は、ロンバニア家の遠征時に、兵を出さずに侵入を許し、レイズ家、プラッター家への掠奪に手を貸したと言い掛かりをつけられ、仕方なく割譲した。兵は出したくとも出せる兵を保持していなかったのが実情なのにだ。


ついに、両家から兵の一団がコンスタンチン回廊に向かって出立したとの連絡が来た。やはり我が家か・・・我家が何をしたと言うのだ。腹が立つ。しかし、これがこの世の習いか。弱い者が討たれる・・・しかし、負ける訳にはいかない・・・


回廊入口からの報告が来る。レイズ家、プラッター家それぞれ出現。兵は各一万三千。迎撃に入る、と。

やはり、二千が別働隊として街へ侵入して来る可能性が大だ。

ユリア殿もその報告を聞く。副官の女性達は、私と同じで緊張している風に見える。しかし、ユリア殿はレイ殿と同様に、大したコトを感じられていないような風情だ。副官の方々も、それを感じられたのか、落ち着かれたようだ。


『メドラー、バビアナ。落ち着きましたか。早る必要は有りません。確実に、来たものを仕留めて下さい。』とユリア殿が言われる。

『はっ。』と、二人の声が揃う。


『布陣致します。兵の統率を。』と、ユリア殿が進んで行く。

その後から、三角錐の陣形で兵が付いて行く。私は、見張り台に登る。


敵が出現する。敵兵は柵に誘導され、真っ赤な鎧と外套を纏ったユリア殿の前に押し寄せる。双剣を構えられたユリア殿に斬りかかる。ユリア殿は斬りかかる敵兵の剣を、剣で弾く事無く躱しながら、一撃で斬り伏せて行く。その一撃一撃が全て急所を攻められる。故に、切った者の反撃は無い。偶に、剣の打ち合う音が聞える。ユリア殿の体捌きはレイ殿に似ておられ、まるで舞を舞われている様に見える。


何人かが、ユリア殿を避けて来たが、メドラー殿とバビアナ殿に斬り伏せられる。

敵兵はユリア殿一人と思い、執拗だ。敵が押し寄せて来てからどれくらいの時が立つのだろう。しかし、ユリア殿は疲れる様子も、苛立つ様子も見せず、ただ、淡々と来る敵兵を斬り伏せて行く。


流石に最初は勢いの有った敵兵だが、今はユリア殿を遠巻きに囲むだけだ。すると、ユリア殿が合図をされる。横から別の一団が、敵兵に攻撃を仕掛ける。と、それを合図かのようにユリア殿を囲んでいた敵兵が逃げ出す。ユリア殿はそれを追わせない。


回廊からの報告が入る。両家壊滅、遁走。追撃。両家回廊より撤退。回廊確保。味方損害軽微。

・・・良かった・・・勝てたのは当然だが、味方損害軽微と云うのは、本当に良かった・・・


『ご当主、これで取り敢えず終わりでございますね。良うございました。ただ、これからは自前の兵は一万は必要かと。』と、ユリア殿が言われる。

私は頷き、

『ユリア殿は何故、一人で先頭に立たれるのでございますか?レイ殿もその様に見受けられましたが・・・』と聞いて見る。

『簡単に言えば、上に立つ者の責務でございましょうか。死ぬ事を厭うてはおられません。』


『支族とは云え、武を以って一族を率いる身であれば、どんな理由を付けようが、身の危険を避け、隠れている訳にはいきませぬ。それでは誰もついて来ませぬし、恥を知らぬ事になります。長が恥を知らぬのであれば、一族も恥を知らぬ一族と思われるのです。』


『我らは代々その様に生き、一族を次に統べる者として、その生き様を教えられました。そして次に継ぐ者へ、私の生き様、代々の生き様を教えるのです。』


『言い方を変えるのであれば、味方および敵の兵の殆どは、嫌々参加しております。敵兵とはいえ、我が部下に斬らせるのは偲びなく、また斬られ、怪我なり、死亡なりされるのは断腸の思いなのです。そして、敵兵であっても、ただ、参加させられた兵に対しては、ここで、死なねばならない身なのかと思うと、真に可哀想でなりませぬ。』


『宗家においては、この一つ星を当主から頂いた者は先頭に立つ力があると認められ、私だけでなく、皆が、それを一手に引き受けるのです。さすれば、味方も敵兵も無用な死や怪我が少なくて済みます。故に、斬り掛かって来た者は仕方ありませぬ。しかし、遠巻きに見ている一般の兵を追って斬る気にはなりませぬし、致しませぬ。』


『戦に責任ある者は、強気な甘いことを述べ、戦に誘いますが、当人たちは隠れて出て参りませぬ。真に腹の立つ事で御座います。死んで行った者達への責を感じているのでしょうか。その者達については、必ずその責を゙取らせたいと思うのですが・・・』と、淡々とと言われる。


ユリア殿と副官の方々ほか十数名は、潜伏している敵兵が居ないか、巡回に出られる。

それが居ないことを確認されると、身支度を整えられ出発された。

旅団の方々も、一部を除き本拠地に戻られた。団長殿も挨拶をなされると直ちに出発された。皆忙しいことだ。イサムとマジドは、残られた旅団の方々と共に、回廊の守備に当たっている。戻ったら詳しく聞こう。


我がコンスタンチン家が続くことが出来るのは、多くの方々のお蔭である事を忘れずに、その方々に後悔をさせぬようにしよう・・・

ーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーー

『ワーレン。戻ったか?』

『はっ。ギル様、無事済みましてございます。』と、ワーレンが答える

『レイズもプラッターも懲りない奴らだ。もし、コンスタンチンに何かあったら、俺が潰してやる。』

『まあ、今回はレイ様が先代の依頼を受けられており、良うございました。レイ様でなければ、あの様にあっさりと撃退は行かなかったかと・・・』


『旅団とやらはどうだ?』

『お強いですな。指揮官、副官、侮れせんな。兵の統率も申し分有りません。もし、本当の傭兵団であれば、行く行くは面倒な存在ではありますが・・・』

『レイが手配したのだろう?ならばレイの配下だ。レイが他に頼む筈がない。』

『確かに、兵に乱れた処は見受けられませんでしたな・・・』


『それに、コンスタンチンの先代は一筋縄でいかん男であっただけはあるな。用意周到な事だ。』

『しかし、何故にコンスタンチン家は十分な兵を置いてないのでしょう?』

『それはな、ワーレンやシュヴァルツヴァルトに分からんだろうな・・・』

『何故、わからんのですか?』

『それは、お主の武も、シュヴァルツヴァルトの武も長く続いた一族の武だからだ。その最たるものはレイだ。そのような一族はそう多くは無い。戦に於いて多少数で劣っていても、そなた等二人が加われば、簡単に引っくり返すことができる。しかし、新興の家ではそのような人材がおらん。だから、先代は兵を養う金を傭兵に使うことにした。兵を養い、一角の兵にするには時間も金も掛かる。しかし、傭兵は金さえ出せば、能力の高い者が直ぐに集まるからな。』


『先代も何時かは自前の兵が必要なのは分かっていた。だから、主だった二人を外に出していたのだろう。』


『戦い方が、新しい手段にならん限り、古い家は有利なのは昔も今も変わらん。本来、古い家は代々の領地から動かんし、戦いに加わらん。全てを支配するのは簡単だ。しかし、一族以外を統べるのは苦労が絶えん。それは過去の宗家をみれば分かる。

新興の家は、戦いの本質が何処にあるか、それに気付けば、古い家と戦うと云う愚は犯さん。それが、戦いの抑止にもなる。しかし、中には領地が大きれば、兵が多ければと勘違いする奴。それを焚きつける奴が出る。愚かだな。』


『だから、あの時我は引いた。掠奪してな。宗家の動きが読めなかったからな。あの代の宗家は小さくしていたが、それでも宗家は宗家だ。一騎当千が何れ程いるか不明だった。だから宗家と当たって勝つことは無理だ。せいぜい引き分けだ。すれば漁父之利を得るやつが出る。それは腹が立つしな。』


『そう云うことなのですか・・・』とワーレンは納得したようだ。

『そう云えば、レイ様の代理として紅蓮の御嬢と呼ばれた凄腕の傭兵が来ておりましたぞ。レイ殿と舞を披露されておりました。それは見事でございました。』とワーレン。

ワーレンが凄腕とは珍しいな・・・レイしか褒めたことが無い男だ。

『凄腕とは・・・』と声が出る。


『シュヴァルツヴァルトが以前言っておりました。リューリヒトの戦いのオーランを見に行った時に、オーランを捕えた、若き女傭兵を見たが、あれは凄腕だ、恐ろしいと。後に調べたところ、紅蓮の御嬢と呼ばれ、名が通っており有名だと。』と、ワーレンが言う。

そうか、シュヴァルツヴァルトが言っていたのか・・・今度レイに頼んで会ってみるか・・・


『レイ様が、ギル様は戦を呼び込むつもりかと聞かれましたが・・・』と苦笑している。

『レイめ、相変わらず鋭い。なんて答えた?』

『我ではギル様のお考えはわかりませぬと。』

『そうか・・・』

自然に笑いが込み上げる。


『兄、楽しそうだな。』と、声がする。

弟のガイが部屋に入って来る。

『ああ、レイが相変わらず、火種を拾って歩いているからな。』

『兵は出さんのか?』

『ああ、東の方はレイが火種を拾ってしまった。』

『レイも難儀な事だな。』


『だな。・・・ベルハーレンは上手くやっているのか?』

『ああ、少しは集まりそうだ。』と、ガイ。

『まあ、しっかり集めてもらわんと、奴らも仕掛けて来んからな。』

『面倒だな。一気に潰しては駄目なのか?』と、ガイ。

『それが楽だが・・・根が残るだろう。』

『またやればいいだろう・・・が、まあ、兄の好きにするさ・・・』と部屋を出て行く。

ガイに任せれば、それこそ根絶やしにしかねないな、と思う。

『オーロフの若当主は何をしている?』

『はっ。兵の訓練に熱心と聞きます。』

『そうか・・・カトーはどうだ?』

『カトーは、先代から離れる気は無いようですな。』

『ふん。若当主と一緒に沈むつもりは無いか・・・』

『はい。そのようです。何せ、出来る娘がおりますから。』

『出来る娘か・・・』

カトーはオーロフにあっての武人であり、戦略家だからな・・・出て来ると面倒な、とは思ったが・・・流石に無理はせぬか・・・

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