↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊憑きの物語  作者: 味 毛布
紫の書
95/365

第一話 けんちん汁

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


ここから四章となります。登場人物が増えたこともあり四章は話数が多くなってしまいました。ツグミ以外の世界のために力を使う精霊も出てきます。


よろしければ、お付き合いください。



 □□□□


 あの影の魔人を倒してから半年が過ぎた。


 私とフタバ、ミツエとシノハはそれぞれの家に一度報告し、再びこの地方へ戻ってきた。イノカとムツミを加えた六人で行動を共にしている。引き続きコテージを拠点にしている。情報が必要になるかも知れない。学園の籍はまだそのままだ。ときどき学園にも行く。この地方を完全に空けるわけにはいかない。そろって行くときは日帰りになる。私とフタバで知識の補完に行くこともある。


「すっかり冬になったかしら」

「うん、お姉ちゃん」


「そうね、そろそろ雪も積もるわよ」

「はい、もうすぐです」


「やっぱり寒いのは苦手かな」


 ──フタバさんのことなら、いつでも暖めますワ。

 ──ふふ、ありがとヒトミ。


 ──今夜からでも構いませんワ。

 ──じゃ、お願いしようかな。


 ──心も体も熱くして差し上げますワ。

 ──もうっ、ヒトミったら、ふふ。


 私とフタバのエモーショナル・シンパシー率は第3段階。少し強く思っただけで、互いに通じあう。ミツエとシノハも第3段階。イノカとムツミは第2段階だ。



 □□□□


 北の山脈自体は岩場が多い。ふもとの方に草原や小さな森はある。瘴気がたまりやすい場所になる。魔物や魔獣も生まれる。この辺りに住む人は滅多にいない。


 北の山脈から少し離れると、小高い山々が多くなる。里があるのは小高い山々の近くが多い。里は山の南側に作られることが多い。もう少し南に行くと小さな町もある。大きな川はさらに南側だ。小高い山々の間には小さな渓流もある。今年の秋はどの里も豊作だったと聞いている。冬越し用の食料も十分に備蓄できたそうだ。ひもじい思いをする人はほとんどいないと思う。


 この世界はリゾート用巨大宇宙ステーションの再現データが使われている。体感的に10倍の大きさに感じられる設定だ。他の生物はリアルのものと同じ大きさに感じられる。元のリゾート用宇宙ステーションは巨大な帯の輪のように見える。厚みが2Km幅が10Kmの帯を、直径30Kmの輪のようにしている。地球ではなく、月の公転軌道上にある。植物や動物も多い。宇宙での長期生活の実証実験も兼ねている。


挿絵(By みてみん)


 主な材料は月から採集された。小惑星から送られてきた分もある。過去に打ち上げられた人工衛星も素材を慎重に選別され使われている。自転による擬似的な重力もある。建設には無機ナノマシーンが大量に使われた。多数のカーボンナノチューブのケーブルで引っ張り強度を得ている。材料の炭素はC型小惑星と呼ばれる炭素化合物が多い小惑星から採られたそうだ。大量の無機ナノマシーンがカーボンナノチューブを作ったと聞いている。


 カーボンナノチューブは引かれる力にはかなり強い。逆に押される力には弱い。宇宙空間でなければ建設自体不可能だったそうだ。表面を鏡状にして熱や放射線の影響を緩和している。内部の岩石層や水も役立っている。


 内部には浅い海のような場所や小さな山々がある。海のある地域は暖かくなるように設定されている。山には人工的に作られた雪が積もる場所もある。南国のリゾートとウィンタースポーツを同時に楽しめるようにしている。


 この世界はそのデータを流用し再現している。この世界も海岸地方は暖かく、海の幸や塩がとれる。山は気温が低めに設定されている。一日や季節の変化が感じられる程度に明るさや気温が変わる。人工的な雨や雪も降る。北の山脈の奥は一年中雪が積もる。この辺り一帯は冬に設定されている時期に雪が降る。夏は高原リゾートのように涼しい。南にある都は気温が高い。光量も増える設定だ。間には草原地帯や林がある。今は耕作地帯になっている。元々過ごしやすい場所が多い。


 今は魔物や魔獣の脅威がある。北の山脈近くに魔物から人々を守る家がいくつかある。ツカハラ家やイクノブ家もそれにあたる。イノカのオオエヤマ家も同じだった。ツカハラ家の近くが一番魔物が多い。数は減るが、他の家の近くにも魔物や魔獣は出現する。魔人と呼ばれるものまでいる。これらは瘴気に侵されて攻撃的になる。


 バグのあるナノマシーンが瘴気と呼ばれている。バグのあるナノマシーンで体を構成する魔物は巨大化するものもいる。昆虫が魔物になれば、人の身長を越えることもある。ある程度大きくなると、攻撃力や敏捷性にリソースが使われる。魔人や魔獣はその傾向が強い。



 □□□□


「おお、ヒトミ様が来られたぞ」

「イノカ様とムツミ様もだ」

「ミツエ様とシノハ様も来てくださったぞ」

「フタバ様もだ」


 ここはオタミさんがいる里。私たちはそれぞれの家へ一度報告しに帰った。その間もイノカとムツミはこの地方の魔物や魔獣を退治していた。この里の復興も毎日のように手伝っていたそうだ。


「何か不自由はないかしら」

「ケガや病気の人はいませんか」


「イノカ様のおかげで皆安心して暮らせてます」

「ムツミ様、先日はこの子の病気を治していただき、ありがとうございました」


「ずいぶん雰囲気が良くなったようね」

「うん、私もそう思う」


「イノカ様が元々面倒見の良い方というのもあるかな」


 里の活気が感じられるようになった。イノカは里に近付く魔物や魔獣の退治を続けていた。ムツミは怪我や病気を治していたそうだ。治療用の風を使うと軽い病気なら治せる。風が治癒力を高めるからだ。重い怪我や病気のときは私も手伝った。


 この世界にも細菌やウィルスを模倣した医療用ナノマシーンは存在している。リアルの宇宙ステーションも軽い症状になる病原菌やウィルスを不定期に散布している。免疫力をたもつためだ。循環器系や呼吸器系などの病気もある。ムツミとシノハには人体のデータを渡している。フタバたちにも念のため渡しておいた。


 法術の微妙な操作はシノハとムツミが上手い。他の三人はまだ慣れていない。この世界の法術はナノマシーンを動かすことを指している。シノハとムツミは以前からそれができていた。フタバも軽い怪我なら治療ができる。ミツエとイノカも少し治療ができるようになった。怪我や病気を治すとき、ナノマシーンを慎重に動かす。場合によっては微妙な操作になる。


 この世界で法術を学んだ者には難しいようだ。他の生き物の霊気を動かすのは難しいとシノハも言っていた。ナノマシーンのことはここでは霊気と呼ばれる。私はプログラムやコマンドを入力して動かしている。私に霊気という認識はなかった。プログラムやコマンドを伝えるのが難しいとは思わなかった。リソースをかなり使えば、バグのあるナノマシーンのデータでも上書きできる。


 この世界の全ての生き物はナノマシーンの再現データで構成されている。有機ナノマシーンが多い。ツグミさんがフタバに会いに来たとき教えてもらえたので調べてみるとハイブリッド・ナノマシーンが少しだけ混ざっていた。ハイブリッド・ナノマシーンが少しでもあれば瘴気に対する耐性が強化される。ツグミさんのような世界のために力を使う精霊たちが散布しているとのことだった。



 □□□□


「ふん、またあんたたちかい。まあ、上がっていきな」


「はい、失礼します。オタミさん」

「私も失礼します」


「そうね、おじゃまするわよ」

「はい、上がらせていただきます」


「は、はい。おじゃまします」

「う、うん」


 まだ少し緊張しているみたいだけどイノカとムツミに以前のような陰りは感じられなくなった。


「作りすぎちまってね。余らすのももったいないから、食っていきな」


 オタミさんは私たちが来ると、いつも何か作ってくれる。今回はけんちん汁だった。寒くなってきたので暖かいものは嬉しい。里の畑でとれた大根やニンジンに「はっと」と呼ばれる小麦粉を練って作ったものが加えられている。材料はありふれたものなのに不思議といつも美味しい。


「はい、いただきます」

「美味しい、これも習いたいかな」


「相変わらず、いけるわね」

「はい、美味しくいただいています」


「とても暖かいかしら」

「うん」


「ふん、ほめたって、これ以上何も出ないさね」


 オタミさんも加わって一緒に食べる。



 □□□□


「ごちそうさまでした、オタミさん」

「ふん、たいしたもんは出しちゃいないさね」


 オタミさんの家の食料や薪の残りを小さなドローンで確認しておいた。衣服や寝具も問題なさそうだった。家も含めてこっそり手を加えておく。これで少しは暖かく冬を越せると思う。


「私とフタバは少しの間、都の学園に行ってまいります。何かあれば鐘を叩いて下さい。すぐに戻って来ます」

「そうかい、ありがとよ」


 この地方の全ての里に鐘を設置している。何かあったときに鐘を叩くと、信号が私たちに届くように設定してある。オタミさんの家にも小型の鐘は設置している。私から頼んで置かせてもらった。オタミさんは自分に何かあっても鐘をたたかないと思う。家や里の周囲は多めにドローンを設置している。里の人たちもいる。イノカとムツミもよく来ている。


「そんな顔しなくたって、何かありゃ鐘をたたくさね。都でのんびりしてきな」

「⋯⋯はい、ではまた来ます」


 私たちはコテージへの帰途につく。


登場人物の視点記号も増えてしまいました。


 □□□□ ヒトミ

 □□□■ 一美

 □□■□ フタバ

 □□■■ ミツエ

 □■□□ シノハ

 □■□■ イノカ

 □■■□ ムツミ


 □■■■ ナナミ

 ■□□□ ヤツエ


 ■■□□ トウジ


となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。