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精霊憑きの物語  作者: 味 毛布
赤の書
64/365

第ニ話 コテージ


 □□□□


 私はシノハとムツミに手伝ってもらい、ロッジの改築を始めた。他の人に欠片やホコリがかからないようにする。


「これはいつもの風かしら」

「うん」

「そうね。でも普段より大きいわね」

「ヒトミさまの暖かで優しい風です」

「ありがとヒトミ」


 練習のとき怪我をしないようにまとってもらう風だ。風はナノマシーンを繋いで作った多数の糸でできている。ロッジのナノマシーンを分解する。他の人がいるところは残す。シノハが広めのリビングを作り始める。ムツミはテラスだ。ロッジは小さなものだった。入ってすぐのところに六人分のソファーベッドとテーブルを置いていた。奥にロフトを作り、左側にはバスとトイレ、右側にはキッチンがあった。ロフトとバスとトイレの上に低くめのベッドも設置していた。


 外の東屋をほどいて、入り口の手前にウッド・デッキを作る。休憩所はフタバが気に入っているのでそのままにしておく。ウッド・デッキを上がると入り口になる。玄関は広めに作る。入ってすぐ左に化粧室を作っておく。右は小部屋にする。物置にもできるだろう。玄関からリビングまでは広めの廊下にしておく。


 突き当たりをそのまま入るとリビングになる。突き当たりの右に階段を作る。左側は大きめのお風呂にする。二階に廊下と大きめの二人部屋を三つ作っておく。部屋の防音機能を念入りにセットする。出窓とベランダも作っておく。水場も各部屋に作る。トイレとシャワーもつける。二階を作る前に柱や屋根は作っておいた。


 一階に取りかかる。リビングの右側にキッチンを作る。システムキッチンのようにする。食事用のテーブルと椅子はリビング側だ。キッチンには床下収納庫以外、奥に小部屋を作る。食料の保存もできるように棚も多めに作っておいた。キッチンのコンロは熱電素子を並べておく。冷蔵庫と電子レンジは自粛した。


 食器棚も作り木の食器類を入れておく。水は前と同じように近くの小川から引いておく。フィルターと熱電素子も忘れない。動力源は屋根の上に並べた光電素子でたくわえる。排水はフィルタでろ過してから小川に戻す。たまったゴミはナノマシーンで分解して周りの木の肥料になるようにしておく。


 リビングや他の部屋の掃除もナノマシーンに任せる。お風呂は念入りに作る。寮のものより大きくしておく。露天部分も作る。周りは木の板で目隠しをしておく。植木などもセットしておいた。


 シノハとムツミがリビングとテラスを完成させた。テラスの奥に庭を作る。垣根代わりに木を植え、外からは見つかりにくいようにしておく。すでにシャーレなどは見せている。窓はすべて透明な強化プラスチックで作っておいた。建物も含めて燃えにくいようにしている。空調も熱電素子で行う。換気もナノマシーンで行えるようにしておく。家具や敷物も仕上げる。ベッドは念入りに作った。リビングのソファーも広めのものに変える。


 ──うわあ、すごいよ、ヒトミ!

 ──コテージというものになるかな。


 ──窓はあれで良かったのかな。

 ──うん。四人になら見せても良いと思う。


 ──厨房も素敵。

 ──システムキッチンって言うんだ。二階に部屋も作っておいたよ。


 ──えっ、上もあるの?

 ──防音機能は念入りにセットしましたワ!


 ──もうっ、ヒトミったら。

 ──お風呂場もありましてヨ!


 ──他の人のことは見ちゃダメだよ。

 ──も、もちろん、ですワ。



「素敵すぎるかしら」

「そうね、シノも手伝ったの?」


「私とムツミ様は少しだけです、ミッちゃん」

「うん」


「部屋やお風呂場も作っておきました」


「部屋まで作っていただけたのかしら」

「お風呂場まであるのだったら寮に戻らなくても良さそうねえ」


「お台所も素敵です、ヒトミさま」

「あ、りがと」


 ムツミがしゃべってくれた。すぐにお菓子を用意しよう。食事用のテーブルもあるのでパフェにしようか。私はナノマシーンと疑似細胞を使ってイチゴパフェを作った。他の人の分も忘れない。再現データもシノハとムツミに渡しておいた。


挿絵(By みてみん)


「キレイな菓子かしら」

「入れ物も透き通っているわね」


「作り方も教わりました。ありがとございます、ヒトミさま」

「あり、がと、ヒトミ」


「お礼を言い忘れていたかしら。ありがとございます、ヒトミ様」

「そうね、いつもありがとうヒトミ」


「ヒトミ、ありがと」


 ──うわあ、キレイ。

 ──パフェて言うんだ。


 ──食べるのがもったいないぐらいかな。

 ──フタバが欲しいのなら、いつでも作るよ。


 ──ふふ、ありがとヒトミ。

 ──フタバさんのためなら頑張りますワ!



 □□□□


「イノカ様とムツミ様に見ていただきたいものがあります」


 パフェを食べ終えたので、各部屋の案内と設備の使い方を説明した。研究施設で得たハイブリッドのデータを使ってそれぞれの武器を神刀にしておいた。木刀や暗器は念のため霊刀にしてある。服の表面も霊刀化しておく。許可を得てからイノカとムツミの体表もハイブリッドでコーティングしておいた。シノハに使ったものと同じプログラムも入れておく。


 ムツミはまだ小さいので精霊としての自覚もあまりない。今後どうなるかは分からないが。研究施設にあった魔核をイノカとムツミに見せている。直接触らないように陶器の一部を透明にしている。


「オオエヤマ家の霊気と似ている光り方かしら」

「う、うん」


「学園の研究施設の奥にありました」


「ここは各地の情報や珍しいものが集まってくるわ。でもそんな強い魔核まで集まるとは思っていなかったかしら」

「うん」


「イノカ様が追っている魔人と関係がありそうでしょうか」


「私が見たときはこれほど禍々しくはなかったかしら」

「私が遠目に見たときもこれほどではなかったと思います」

「私とツグミ様が戦った相手もそうだったよ、ヒトミ」


 シノハとフタバも以前のことを話してくれる。例の魔人はそれほど強い瘴気は出していなかったようだ。ただ魔人は時間が経つと変化していくらしい。


「時が経って、より禍々しくなる可能性はないでしょうか」


「そうね。私が読み漁った文献の中に、そのような記述があったと思うわ」

「可能性としてはあるかしら」

「それなら、その魔人はもう倒されたのでしょうか」

「うーん、そう簡単に倒せる相手でなかったと思うよ、シノハちゃん」


 この中で一番文献に詳しいミツエも意見を言ってくれる。ツグミさんでも追い払うことしかできなかった。魔人はまだ生きている可能性があると思う。


「この魔核がどのような経緯で、学園に来たのかが分かれば、手がかりになるかもしれません」


「文献を調べ始めた頃から、イクノブ家で諜報の鍛練もしたわ。私が一番詳しそうだし、研究施設を調べてみるわ」

「私は職員の方達にお聞きします」


「えっ、でもあなたたちの問題はもう解決したのでしょ?」

「うん」


「私も手伝うわよ。あの程度では私たちの気が済まないしね。シノもそれでいい?」

「はい。私とミッちゃんで、少しでもお返ししたいと思います」


「⋯⋯そうなのね。ありがとう。ミツエ様、シノハ」

「うん」


 ミツエとシノハも手伝ってくれるらしい。みんなで手分けすれば情報も集めやすくなる。ミツエとシノハの体はハイブリッドに置き換わっている。侵食されにくい。


「私とヒトミは最初からそのお約束です。イノカ様」

「ええ、もちろん最後までお付き合いしますよ」


「⋯⋯これがヒトミ様が言われる新しい世界なのかしら。みんなありがとう」

「あり、がと」


 新しいイノカさんが涙ぐんでいる。例の魔人はさっさと倒そう。みんなで新しい世界へ行くんだ。私は改めて決意をかためる。フタバさんから剣気がバシバシ飛んでくる。新しい世界の前に新しい扉が開きそうですワ!

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