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精霊憑きの物語  作者: 味 毛布
青の書
42/365

第十一話 シノハとミツエ


 □■□□


 体が軽い。ヒトミ様が治してくださったんだ。ヒトミ様はほかの精霊様とは違っておれる。昨日は驚きすぎて倒れそうになった。ムツミ様も同じだったと思う。ヒトミ様とフタバ様はいつも優しくしてくださる。それにとても仲が良い。


 私とミッちゃんのシンパシー率は第2段階。強い思いが互いにわかる。


 ヒトミ様とフタバ様も思いが通じ合っているみたい。でも私たちよりもっと気軽に心でお話をされている。普段の会話と同じような感じで心でお話をされている。お話をされるのも速いみたい。私たちが十数える間にするお話を、瞬き一つの時で行われているよう。


 フタバ様は剣術に長けておられる。この学園で一番強いイノカ様の次ぐらいだとミッちゃんが話してくれた。ヒトミ様は弓術に長けておられると聞いていた。とても美しい動きをされるそうだ。


 でも法術の方は長けておられるどころではなかった。とても難しく時が必要な法術もあっという間に行われる。フタバ様と心でお話をしながら、なんでもないことの様に行われる。広場をととのられたときも驚いた。ご自分の霊気を使われずに、ほかの霊気を動かされる。


 私たちの様に法術を使う巫女や精霊様達は、自分の体の中にある馴染んだ霊気を使って、馴染んでいない霊気にも動いてもらう。馴染んでいない霊気だけだと動かしにくい。ほかの生き物の中にある霊気なら、尚更動かしにくい。私ではほかの生き物の中に入っている霊気はほとんど動かせない。怪我を治すときはほかの生き物が自分で治そうとする力に合わせて霊気を動かす。ほかの生き物が嫌がるような動かし方は難しい。


 ヒトミ様はご自分の霊気も使われずに、ほかの生き物の霊気を自在に動かされる。木々の霊気をほどかれたときもあっという間だった。食べ物も自在に作られる。水も美味しくされておられた。気が付いたら果物と器を作られていた。とても美味しくいただけた。一度作られた建物でも自在にほどかれ、別のものを作られておられた。東屋や建物を作られたときもそうだった。フタバ様とお話をされながら、息をするかの様に自然に行われていた。


 あまりのことに私とムツミ様は倒れそうになった。それを見たヒトミ様はとても心配してくださった。私をベッドに運ばれるときも、霊気を使って小さな木を作られ、それを成長させて運んでくださった。ほかの生き物の霊気を動かすのは難しい。ましてや自在に成長させるなんて私にはできない。あまりのことに私は気を失いそうになった。


 ヒトミ様はとてもお優しい。気を失いそうになった私を見て、暖かくて優しい風で霊気の乱れを治してくださった。私の中にあった黒いよどみまで治してくださった。とても体が軽く感じられる。体の中の黒いよどみが無くなった。よどみそうになると、別の力でよどみが消えていく。ヒトミ様がやってくださったのだと思う。


 ⋯⋯ミッちゃんの中の黒いものは残っている。


 ミッちゃんの中にある黒いものは普通の霊気より強いものでできている。普通の霊気より強い白いものもある。私の力では治すこともできない。


 ⋯⋯私のせいだ。


 私は急いでその気持ちを抑え込む。この気持ちがミッちゃんに伝わってはいけない。ミッちゃんを悲しませてしまう。ミッちゃんは私を助けようとして、白くて強い霊気を取り込んだ。白くて強い霊気は手に入れにくい。イクノブ家の近くにある清らかな場所で、時をかけて変化させる。白くて強い霊気は元々は魔核だった。時をかけて清めれば手に入る。でもミッちゃんは私を助けるために、浄化の済んでいないものも取り込んだ。


 ヒトミ様は気付いておられると思う。ヒトミ様でも黒いものを浄化されるのは難しいと思う。魔核であればヒトミ様ならアッサリ浄化されそう。でも黒いものはミッちゃんの体の中にある。ヒトミ様が浄化されようとすると、多分ミッちゃんの体がほどけてしまう。それほどヒトミ様のお力は強い。


 ミッちゃんは精霊様だけど、体をまとったのは一度しかないはず。そのあとはずっと体をまとっていた。急に体をほどかれると、還ってしまうかもしれない。


 あの優しい眼差しで私たちを見てくださるヒトミ様なら、時をかければミッちゃんを助けてくださると思う。私に残された時は少ない。ミッちゃんがまた無茶をしそうで怖い。私の時が残っているうちに、ヒトミ様にお願いしてみよう。ヒトミ様なら、一生懸命お願いすれば助けてくださるかもしれない。



 □□■■


 シノがまた自分を責めている。そんな風に思って欲しくない。けれどシノは元々そういう子だ。私が何度言っても自分のせいだと思ってしまう。シノが助かるなら、私なんてどうなっても良いのに。シノは本当にすごい。法術の力は歴代イクノブ家の中でも最強だと言われている。もしかしたらほかの地方を入れても最強だと思っていた。


 でも今日ヒトミの法術を見て、そうではないことがわかった。ツカハラ家とはそれほどのものなの? 何代にも渡って、多くの魔物や魔獣から人々を守り続けてきただけのことはあるわね。イクノブ家の近くにも魔物や魔獣は出る。ツカハラ家の近くほど多くはないけど。多分魔物や魔獣の強さも違うんだわ。


 フタバも剣術が強いわ。しかもまだ伸びている。この学園で一番剣術の強いイノカ相手に、三度に一度は勝つようになってきたわ。ヒトミは弓術もうまい。教練の合間に少し見ただけだけど、とても美しい射をしていた。動きも美しかったわ。体術も少し使えるようなことも言っていたわね。


 それに比べて私はやっぱり。


 私たちには時がない。イクノブ家の文献に残されていた手を使うためにもアレが必要だ。私はそのためにこの学園に来た。でも今の私の力ではまだ難しい。何度か下調べにも行ったけど、とても強い気配を感じたわ。このままじゃ間に合わない。


 イノカとフタバの稽古に参加することにしたのも強くなりたかったから。学舎の教練では伸び悩んでいたからちょうど良かったわ。この学園に来る人は主に剣術をやっている人が多い。体術を少しは使える人もいる。ただ私が強くなれるほどの稽古相手はいない。私も教練中は剣術を使う人と稽古をする。それも自分の経験や力になる。剣術との稽古ならなるべく強い相手が良いわ。イノカとフタバなら申し分ないわ。あの二人が学園で最も剣術が強い。今はイノカの方が強い。フタバも伸びている。


 できれば体術の強い人と稽古を積みたかった。でもこの学園に体術の強い人はいない。なら剣術が強い人と稽古した方が良いわ。ヒトミはたしなむ程度だと言っていた。それでもありがたいわね。巻き藁も私の鍛練に合っていたわ。今日だけで少し強くなれたと思う。


 今日はシノとムツミの調子が悪くなって、鍛練の続きどころではなかったけど。シノとムツミはヒトミの法術を見て驚きすぎたみたい。それだけヒトミの法術がすごかったらしい。私は体術が中心だから驚いたことは驚いたけどシノとムツミほどではなかったわ。その後ヒトミがシノの体調をととのえてくれたわ。ずいぶん体調がよくなったみたい。シノから伝わってくるのでそれもわかるわ。


 ヒトミが私の形を見て作ってくれた巻き藁は鍛練に最適だった。イノカやフタバを待っている間も有効に使えるわね。そこで不自然さに気付く。ヒトミは私の形の一部しか見てない。でも巻き藁は全ての鍛練に向くようにいくつも作ってくれた。まるで私の使う技を全て知っているかのようだった。ツカハラ家でも体術用の巻き藁がいくつか有って、それを作ってくれたのかもしれない。ツカハラ家ならその可能性もあるわ。


 でもフタバは剣術以外の稽古や鍛練をあまりしない。最近は弓術を始めて、どんどん上達している。少ししか見ていないけど、フタバに手本を見せているときのヒトミの動きは、とても自然で美しかったわね。もしほかの武術も同じうまさだったら?


 そういえばヒトミに誘われたとき、イノカはとても喜んでいたわ。私はてっきりフタバとの稽古が増えるのを喜んでいたと思ったのだけど。フタバとの稽古を増やしたいのなら、学舎の教練場で遅くまで残って増やせば良いだけだわ。わざわざ寮の裏に行く必要はないわ。


 イノカはヒトミと稽古がしたかった? ヒトミは弓術以外は人前でしないと言っていた。ヒトミの剣術が優れているのなら辻褄は合うわ。イノカより剣術が強い人は、イクノブ家には少ししかいない。ヒトミはイノカより強い? 一度確かめておきたいわね。

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