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精霊憑きの物語  作者: 味 毛布
青の書
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第九話 ロッジ


 □□□□


 私はシノハとムツミの為に、飲み物を用意することにした。先ほどから二人の様子が変だ。熱中症にでもなりかけているのだろうか。ぞれなら冷たい飲み物の方が良いだろう。まずは川から引いた水を浄化する。この後も使うのであれば、毎回浄化するのも面倒だ。私はナノマシーンを使ってフィルタを作る。ある程度汚れがたまったら、自動的に汚れを川に戻すように設定しておく。


 ついでに熱電素子を使って水が冷えるようにしておく。熱電素子を逆にすれば水を加熱することもできる。逆に温度の違いから発電させることもできる。電流を使っての発熱と吸熱はペルティエ効果、温度差による発電をゼーベック効果という。同じ熱電素子でどちらも可能だ。エネルギー源に光電素子をパイプの外側に並べておく。こちらは光電池の代わりになる。導線には電導率の良い無機ナノマシーンを使う。


 水の用意はできた。コップを作る。地中の無機ナノマシーンを使い、二酸化ケイ素を集めコップの形に結晶化させていく。水晶グラスというものだ。うん? この世界に無色透明なガラスってあったけ? 思い返してみると、色付きのものしかなかった気がする。


 ──フタバ、色の付いていないガラスってあったっけ?

 ──ガラス? ツカハラ家の近くにはなかったと思うかな。


 ──そっか、ありがとうフタバ。

 ──ううん、ヒトミは何してるの?


 ──シノハとムツミの飲み物を用意しているところだよ。

 ──ふふ、ヒトミはやっぱり優しいね。


 ──そ、そんなことないと思うけど。

 ──ううん、私もヒトミの様になるね。


 ──フタバは今でも優しくて良い子だよ。

 ──うん、ありがとうヒトミ。


 ──果物も準備しておくよ、フタバも食べてね。

 ──ふふ、じゃあまた後でね。


 イノカとの稽古を小休止していたフタバに聞いた。無色透明なコップはまだなかった。危ない危ない。これじゃ不自然だ。二酸化ケイ素を地中に戻す。木の器でもいいかな? この休憩所を作ったときに余った有機ナノマシーンを使い、疑似細胞で木のコップを作る。キレイにした水を注ぐ。熱電素子で冷やすのも忘れない。少し氷もできた。ついでにレモンの風味も付けておく。疑似細胞で作った砂糖も少し加え飲みやすくする。


 これでいいかな? シノハとムツミの方へ行き、二人に飲み物を渡す。二人とも不思議そうに飲んでくれたけど、まだ元気がない。すぐには回復しないようだ。果物も用意しておこう。そろそろ休憩の頃あい。軽く食べられるものがいいかな。私は有機ナノマシーンを使い木の皿や楊枝を作る。調子が悪そうな二人でも食べやすいように、切り分けた果物も作っておく。


「かなりイケルわね。シノも食べなさいよ」

「本当美味しい。こんな果物ここにあったかしら」

「私ももらうね。ありがとうヒトミ」


 練習に一区切り付いたミツエとイノカが休憩所にやってきた。フタバも一緒だ。シノハとムツミも不思議そうにしながらも食べている。果物はさっぱりとした梨にした。これなら暑いときでも食べやすいと思う。これも疑似細胞で再現したものだ。少し冷やし食べやすくしておく。


 木のパイプから出る水に軽くレモンの風味を付ける。手を洗ったりできるように砂糖は入れていない。ほどよく冷やすようにしている。水を受ける少し大きめの手水鉢(ちょうずばち)も無機ナノマシーンを使って二段分つくる。手水鉢の上の段は飲用で、下の段は洗いものや軽く汗を流すときにでも使ってもらったら良いだろう。柄杓や木のコップも疑似細胞で再現し近くにならべておく。木のコップは少し多目に作っておく。念のためどちも殺菌作用を設定しておく。


 ──手水鉢まで作ってくれたんだ。

 ──よかったらフタバも使ってね。


 ──うわ、冷たくて気持ちいいよ。

 ──飲めるようにもしておいたから。


 ──ふふ、ありがとうヒトミ。


「冷たく気持ちいいわね」

「何か良い香りもするかしら」


「飲めるようにもしておきました」


「ヒトミの法術は本当便利ね、シノも来なさいよ」

「私もいただこうかしら、ムツミもおいで」


「冷たくてキレイな水しか出てきません」

「ううー」


 フタバと話をしていると、ほかの人もやって来た。シノハとムツミの顔色は悪いままだ。日射しにでもあてられたのだろうか。この世界はリゾート用宇宙ステーションの再現データで作られている。時間が経つと気温や明るさも変化する。夜はうっすらまわりが見えるぐらいの明るさだ。季節の変化を感じとれるぐらいには調整されている。


 日によっては日射しが強くなるように感じられる。逆に冬は寒い日もあるように設定されている。西の海辺は泳ぎやすい暑い日が多い。北の山脈近くでは雪が降り積もる場所もある。都は南よりなので暑い日が多い。日々の気温や明るさはある程度ランダムに決められる。シノハとムツミは更に顔色が悪くなっている。楽に休めるように東屋でも作っておこう。


「休みやすいように東屋でも作りましょうか」


「そうね、さっきからシノの調子が悪いみたいだし、頼んだわ」

「ムツミもそうだわ。お願いできるかしら」


 ──ヒトミはやっぱり優しいね。

 ──そ、そんなことないと思うけど。


 ──ふふ、でもシノハちゃんとムツミ様を放っておけないんでしょ?

 ──う、うん。


 ──私はちょっと寂しいかな?

 ──もちろん私はフタバさん一筋ですワ!


 ──ふふ、うれしいよヒトミ。


 フタバと話しながら休憩所の横の木々をほどき、スペースを作る。あとは休憩所のときと同じだ。東屋の椅子は横になりやすい幅にしておく。もう少し休みやすいものも作っておこうか。更に奥の木々をほどく。ロッジの様なものも作る。中に小さめのキッチンやバス、トイレも作っておく。ソファーベッドやテーブルも作っておく。全部で六人だから大きさはこんなものだろう。


 水回りはさっきと同じで川から水を引いてくる。あとは木のパイプと同じ要領だ。キッチンの火の代わりに熱電素子を並べておく。簡単なスイッチも付ける。これで誰でも使える。動力源として光電素子を屋根に並べる。温度管理も自動でできるにしておく。電導線やソファーベッドのスプリングは無機ナノマシーンで作った。


 ──フタバ、ソファーベッドってあったっけ?

 ──うーん、学舎の職員室にあったと思う。


 ──ありがとうフタバ。

 ──ふふ、いいよ。でも素敵な建物だね。


 ──ロッジって言うんだ。

 ──中もキレイそう。


 ──六人ぐらいなら大丈夫だよ。

 ──あっ、ガラスがあるよ。


 ──本当だ、ウッカリしていた。


 窓にはめていた無色透明なガラスを地中に戻し、木の窓に変える。ブラインドのように、隙間の開閉で、風を通すことができるようにしておく。窓全体の開閉もできる。


 ──ありがとうフタバ。

 ──ふふ、いいよ。


 ──あっ、台所用品も忘れていたよ。


 地中の無機ナノマシーンを使って金属を集める。鍋や包丁をいくつか作る。食器類は木で作った。キッチンスペースに棚も作っておく。日持ちが良い備蓄用食料もいくつか用意する。場所はどうしよう。床下収納で良いかな。床下収納スペースを作り食器棚の下にも入れておく。簡単なお菓子や茶葉も忘れないで作った。


 ──フタバ、これでどうかな?

 ──うわー、素敵! いいと思う。


 私とフタバは第3段階なので、ある程度なら映像情報をやり取りできる。フタバが不自然に思わなければ、この世界の人々にとっても見慣れたものだと思う。


「えっ、東屋だけじゃなかったの?」

「ムツミを休ませるにはちょうど良いかしら」


「そうね、シノを休ませるには良さそうね。ありがとうヒトミ」

「お礼を言い忘れていたかしら。ありがとうございます、ヒトミ様」

「ヒトミ、ありがとね」


「たいしたことはしておりません。お気になさらず」


 ──でも、すごいよ! ヒトミ。

 ──ふふ、あなたの精霊は優秀でしょ?


 ──う、うん。ふふ。


「では、中の説明をいたします」


 シノハとムツミは更に顔色が悪くなっていた。早く休ませなきゃ。

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