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精霊憑きの物語  作者: 味 毛布
紫の書
105/365

第十一話 白くて強い霊気


 □■□□


「シノハとムツミに手伝ってもらいたいことがあります」


「はい、ヒトミさま」

「うん」


 ヒトミ様が私とムツミ様に声をかけてこられた。ヒトミ様とフタバ様のお二人は昨日学園から戻ってこられた。私たちのことをずいぶん案じておられた。新しい中継機がこの地方の近くに設置された頃、お話もできるようになった。山々に入る少し前の場所だったみたい。そこで魔物に襲われている人々を助けられていた。そのとき強い瘴気を見つけたと言っておられた。


 半年前、ミッちゃんと私が戦った獅子の魔獣が放っていた強い瘴気だった。あの瘴気はとても強かった。私とミッちゃんも侵食されてしまった。私とミッちゃんの霊気はヒトミ様に強くしていただいている。霊珠の霊気と同じ、白くて強い霊気に代えていただけた。ミッちゃんの黒いところも全部なくなった。私に届く世界の声も小さくなった。ヒトミ様のおかげでミッちゃんと一緒にいることができる。


 数日前現れた二人も精霊様だった。世界のために力を使っておられる精霊様みたい。とても強い感じがした。私たちに挨拶だけされて帰っていかれた。ヒトミ様のことを知っておられる様子だった。すぐヒトミ様に連絡した。


 ヒトミ様に教えていただけた通信符号を使った。そのときの中継機でお話はできなかった。近い場所ならお話はできる。ヒトミ様たちは都の学園におられた。そこまで遠いとお話ができない。信号が少し届くだけになってしまう。その信号を使って二人の精霊様のことを伝えた。二人の精霊様はヒトミ様の近くにおられた。これだけ離れているのに分け身を操られていたみたい。世界の一部を通して遠い分け身を操っていたとのことだった。


 ヒトミ様は対立を避けようとされている。あのお二人の精霊様が来られてもむやみに敵対しないよう私たちに言っておられた。ヒトミ様のお言葉なら私たちも守りたい。けれどあのお二人の精霊様はヒトミ様を連れて行くかもしれない。ミッちゃんたちと相談し、ヒトミ様が無理に連れて行かれそうになったら、私たちが止めることにしている。イノカ様とムツミ様も手伝ってくださる。


 あのお二人の精霊様は強い。でも黙って見ていることはできない。ヒトミ様は私たちのことを案じておられる。いつも優しくしてくださる。私とミッちゃんもヒトミ様に助けていただけた。ヒトミ様が望んで行かれるのならいい。そうでなければ私たちがヒトミ様のお手伝いをするつもり。



 □■□□


「まず普段の霊気を集めてください」


「はい、ヒトミさま」

「うん」


 私とムツミ様で普段使っている霊気を集める。普段の霊気は生き物の体も作っている。落ち葉をほどいてヒトミ様が作られたシャーレに入れていく。周りはうっすらと雪が積もっている。


 ヒトミ様に作っていただけた服はとても暖かい。夏は涼しくすることもできる。色や柄も変えられる。汗や汚れもキレイにしてくれる。ほつれたところは、しばらくすると直っている。もっと小さないたみも直っているみたい。魔核の牙や爪からも守ってくれる。イノカ様の太刀でも切ることができなかった。私は体をまといながら服を作るのが得意ではない。ヒトミ様にいただけた簡単な服のデータをようやくまとえるぐらい。


 この強い服を作るには時がかかってしまう。あの強かった魔獣の牙にとらえられたときも簡単な服しかまとえなかった。ヒトミ様に鍛練を見ていただいた。体をまといながらでも強い服の一部ならまとえるようになった。他の部分は体をまとってから作っている。


「次に土の中の霊気を集めることはできますか」


「はい、ヒトミさま」

「うん」


 土の中の霊気は普段使わない。学園にいた頃からヒトミ様にたくさんのデータをいただけた。そのデータ通りにものを作る鍛練もした。鍛練を続けると土の中の霊気まで動かせるようになっていた。ムツミ様もおんなじみたい。私とムツミ様で別のシャーレに土の中の霊気を集めていく。


「二人とも霊気の動かし方がずいぶん上手になりましたね」


「はい」

「うん」


 ヒトミ様に褒めていただけた。嬉しくなる。


「ではこの二つを合わせて強い霊気を作りたいと思います。やり方のデータはこちらです。最初に二つの霊気を合わせましょう」


 ヒトミ様からデータをいただけた。ムツミ様も直接データを受け取れるようになられている。学園で鍛練していた頃は、私がヒトミ様からの通信を受け取り、それをムツミ様に伝えていた。今は他のみんなもデータを受け取ることができるようになった。


 強い霊気は普段の霊気の中に土の中の霊気が入っている。この二つを合わせるのは難しい。霊気は少しの傷なら自分で治す。同じ種類の霊気同士ならいくつも繋げることができる。そのそばに違う種類の霊気を並べることもできる。生き物の体はそうやって作られている。普段の霊気の中に土の中の霊気を入れようとすると、傷を治すときと同じ力が働く。そのまま無理に入れると、どちらの霊気も離れようとする。普段の霊気の傷を治そうとする力が大きくなる。無理に入れてもすぐに離れてしまう。


 ヒトミ様のやり方は普段の霊気の動きを遅くする。霊刀や神刀を作ったとき霊気の動きを遅くするやり方も教えていただけた。普段の霊気はさらに小さい霊気が集まり作られている。霊気の動きを完全に止めると、小さい霊気の繋がりが緩くなってほどけやすくなる。小さい霊気が緩まないよう加減する必要がある。


 動きを遅くしてから傷を治そうとする力をなるべく小さくする。治そうとする力を完全になくしても小さい霊気にほどけてしまう。普段の霊気の形を保ったまま治す力を抑える。以前ならこんな繊細な操り方はできなかった。ヒトミ様にコマンドやプログラムの使い方を教えていただけた。霊気の改良のお手伝いもした。データの再現の鍛練もたくさんした。ミッちゃんの治療のために多くのことを教えていただけた。今なら繊細な動かし方も少しはできるみたい。


 普段の霊気の傷を治そうとする力を抑えながら、小さな隙間を作る。その隙間に土の中の霊気をそっと入れていく。このまま霊気の動きをもとに戻すと土の中の霊気が押し出されてしまう。普段の霊気を抑えながら、二つ霊気の信号を何度も交換させる。二つの霊気が馴染んできたみたい。さらに馴染ませていく。十分に馴染ませてから、普段の霊気の動きをもとに戻した。二つ霊気は離れようとしなくなった。


「二人とも良くできています。ではこのまま強くしていきましょう」


「はい、ヒトミさま」

「うん」


 ヒトミ様にまた褒めていただけた。嬉しい気持ちが増える。ムツミ様もおんなじみたい。


 二つの霊気を合わせたものは白くて強い霊気に似ている。今の新しい白くて強い霊気に比べるとまだ弱いみたい。私とムツミ様は何度も霊気を強くするお手伝いをしている。霊気を強くするたんびに、世界の声が喜んでいるように聞こえる。ヒトミ様は私とムツミ様が還ることなく、世界のために力を使うよう促してくださる。私とミッちゃんが一緒にいられるようにしてくださっている。ムツミ様とイノカ様の時も増やそうとされている。霊気を強くするお手伝いにも慣れてきたみたい。


 普段の霊気が治そうとする力を強くする。治そうとする回数も増やす。土の中の霊気も治す力を強くして回数も増やす。お互いを治す力と回数も増やす。お互いに伝わる信号を強くする。伝わる回数も増やす。白くて強い霊気ができあがった。世界の声も喜んでいるみたい。私の心も軽くなる。


 ミッちゃんと一緒にいてもいいんだ。ムツミ様もおんなじみたい。イノカ様も一緒にいられる時が増えたみたい。普段より嬉しそうにされている。


「今二人がしてくれた方法を使うと、更に多くの強い霊気を作ることができます。これでこの世界を守る力が増えました。二人ともよく頑張りましたね」


「はい、ヒトミさま」

「うん」


 私とムツミ様の返事は普段より弾んでいた。


挿絵(By みてみん)


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