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精霊憑きの物語  作者: 味 毛布
紫の書
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第十話 中継機


 □□□□


 私とフタバはエア・プレーンでオオエヤマ家のある地方へ向かっている。途中に新しい中継機を設置している。今までの中継機は目立たないように小さくしていた。少し離れると肉眼で見えないほどだ。その分通信距離が短くなっていた。一度に扱える情報量も少ない。新しい中継機はトリ型のドローンを参考にした。浮力は水素を入れた気のうで得る。微妙な動きはドローンを入れた管で制御する。地上から2kmぐらいの高度を保つように設定した。保護色も忘れない。

 

 浮力のほとんどを水素で間に合わせる。鳥ではなく雲のように見せる。気のうを大きくした分、光電素子を多めに設置できる。これで多少大型化しても単独で稼働できる。流線形にして風の影響を小さくする。通信能力は高性能にしておく。都とコテージぐらいの距離でも、短い時間ならアバターを操作できる性能にしておいた。通話だけならいつでも可能だ。補助として、周囲のドローンが定期的にエネルギーを運んで来るように設定しておいた。


 都から順に5kmの間隔で設置していく。以前の中継機は予備回線として残しておく。大型の中継機同士なら10kmぐらいカバーできる。普段身に付けている通信機はヘッドバンドに付いている小型のものだ。今は3kmぐらい届く。大型中継機と繋ぐことができる。都から順に設置し、山々に近付いたとき異変を発見した。里やコテージの異変ではない。エア・プレーンの前方で人が魔物に襲われていた。


 ──フタバ。

 ──うん。


 エア・プレーンはフタバが操縦している。フタバはすぐ現場へ向かう。現場近くで着陸すると同時に飛び降りる。魔物はヤスデが巨大化したものだった。フタバが神刀で斬りかかる。ヤスデは倒れたが瘴気が散らない。襲われていたのは母子の三人連れだった。子供は姉と弟のようだ。弟が侵食されている。


 私はデバッグ・モードに入る。


 小さなドローンを作り、霊刀化する。弟の侵食部分にドローンを当てていく。逆位相の信号も伝える。弟の侵食が止まった。だが治りが遅い。緑をおびた風で三人を包む。治りの遅いところは強引に上書きしていく。リソースは取られるが命には変えられない。風でほかの怪我も同時に治していく。三人とも無事だった。弟以外は小さな怪我しかしていなかった。それももう治療済みだ。


 デバッグ・モードのまま魔物に近付く。フタバが魔物から魔核をえぐり出してくれている。魔核の大部分は古いハイブリッドだ。一つだけ別の瘴気が混じっていた。禍々しい獅子の魔獣の瘴気だった。



 □□□□


「痛むところなどはありませんか」


「はい、もう怪我も治りました。ありがとうございます」

「ありがとうございました」

「ありがとう、お姉ちゃん」


 一瞬デバッグ・モードに入り確認する。怪我も侵食もないようだ。私たちは魔物退治の服装をしていた。特に不自然に思っていないようだ。エア・プレーンは三人からは見えないところに止めてある。


「あのような魔物はよく出るのでしょうか」

「この辺りではほとんど見かけませんでした。何年かに一度耳にする程度でした」


「最近は増えたのでしょうか」

「うーん、少し前からときどき話を聞くようになったよ」


「少し前ですか」

「うん、夏の終わり頃からだったと思う」


 弟が魔物の増えた時期を答えてくれた。今は冬だ。夏の終わり頃というと半年前に近い。あのときの瘴気の一部が風にでも飛ばされて来たのか。


「ほかに怪我をした人や治りの遅い人はいませんか」


「うーん、どうだろう」

「ロクロウさんが、そう言っていたかも」


「ロクロウさんですか。そこへ案内をお願いしても良いでしょうか」

「はい、この道の先に家があるはずです」


 姉がロクロウのことを教えてくれた。母親が家の方向を教えてくれる。三人で案内してくれるようだ。



 □□□□


「おお、治りの遅かった傷が治りました。ありがとうございます」


 ロクロウの左手が侵食されかかっていた。それほど強い瘴気ではなかった。今のバージョンで侵食が広がるのを防いでいた。


「その傷は魔物に負わされたのでしょうか」

「はい。魔物は皆で倒しました。そのおり負うた傷です」


「その魔物に何か変わったことはなかったでしょうか」

「なにぶん魔物自体めったに出ない土地なので、他の魔物を見たこともほとんどありません。お役に立てず申し訳ない」


「いいえ、どうかお気になさらず」


 他に怪我をした人もいないとのことだった。そのときの魔物はもう処理したそうだ。念のため、周り一帯に弱い風を送って他の生き物の怪我も治し浄化もしておいた。



 □□□□


 魔物がいた場所に戻ってきた。禍々しい獅子の魔獣の瘴気は陶器でおおっている。魔物はすでにほどけていた。


 ──ヒトミ、どうだったかな。

 ──うん、怪我人が一人いたよ。


 ──その人も魔物に?

 ──うん、原因は同じだと思う。


 弟とロクロウの侵食は似ていた。弟が侵食される勢いが少し強かった。体の大きさの違いかもしれない。小さな霊気は侵食されやすい。弟は大人と比べると体が小さい。体の大きさではなく瘴気の違いかもしれないが。



 □□□□


 フタバと相談し、付近を回ることにした。この辺りは小さな村がいくつかある。ときどき怪我の治りが遅い人がいた。みんな魔物に負わされた傷だそうだ。魔物に襲われた時期も半年以内だった。怪我を治すとき付近の浄化もしておいた。もう少し山々の奥に行くと、普段回っている里がある。この辺りはうっすらと雪が積もっている。ついでなので里を回っていく。里の人々は怪我もしていなかった。冬越しの用意もととのっている。


 里をゆるめの霊気のネットでおおっていくことにした。コテージのある森で使っているネットと同じものだ。一本ずつは目に見えないほど細い。設定はゆるめにしておく。人々や動物の出入りは自由にできる。ただし霊刀化はしている。小さな魔物や魔獣は入れない。やや大きな魔物か魔獣が近付いて来ると、霊刀化したドローンが処理する。弱い魔物だけときどき通すようにしている。身の守り方を忘れないためだ。ここまでは以前設定していた。


 今回は弱い魔物や瘴気も排除するようにした。神刀化したドローンも控えている。霊刀で浄化できないときは神刀が浄化するようにしておいた。弱い雪や風は入る。大雪や強風は入りにくいようにしておいた。急な寒さも緩和するように設定しておく。これで少し過ごしやすくなったと思う。あまり手を入れすぎないように注意する。里から出る人もいる。里を快適にしすぎるとほかの場所で生活するとき困ると思う。


 瘴気の対策を強化しておく。神刀は最新のハイブリッドに手を加えたものを使う。神刀化したドローンの数も増やしておいた。オオエヤマ家が守護していた範囲に霊刀化したドローンと神刀化したドローンを大量に設置しておく。オオエヤマ家が守護していた場所は南北が10km東西が30kmほどだ。


 ここにも新しい中継機を設置することにする。南北に三機ずつ東西に六機ずつ設置した。一番北側は北の山脈に近い。神刀化したドローンを多めに配置しておく。南側は山々に入るまえの村もカバーできる。ロクロウや三人連れの母子がいた場所だ。


 神刀用のハイブリッドは手に入りにくい。人々や生き物の体の中に少しずつ混ざっている。ツグミさん達が配布した分だ。生き物全体の耐性は強くなっている。みんなで分けているので個々のハイブリッドの数は少ない。


 魔核を浄化させても霊珠を得ることはできる。ハイブリッドの集まりは霊珠と呼ばれている。バグのあるハイブリッドの集まりは魔核と呼ばれている。神刀は魔核のバグを治す働きがある。小さな魔核なら神刀だけで浄化できる。小さな魔物を倒すことで、霊珠を補給していた。大きな魔核があると小さなドローンでは厳しい。そのときは私たちが倒しに行く。そこで得られる魔核も霊珠の材料にできる。


 神刀は刃先の部分をハイブリッドでコーティングしている。バックアップ用に刃物の内部にハイブリッドを入れている。瘴気に負けそうになったときすぐ霊気に戻すためだ。健康な人々や他の生き物からハイブリッドを集めることは避ける。瘴気に対する耐性が下がってしまう。大量のリソースを使って強引に上書きすれば普通の霊気をハイブリッドにすることはできる。


 リソースが必要なので、小さなドローンにやらせることは難しい。小さなドローンが定期的にハイブリッドを補給できるようにしておきたい。ハイブリッドの量産化だ。シノハとムツミにも手伝ってもらおう。

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