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第一章 ⑤ 三人寄らずとも姦しい

 現実で腹を満たしてから再度ログインし、なかなかやってこないプラナシカを待ち惚けていたら、渦中の少女はさっぱりした様子でやってきた。

 ついでに、風呂まで入ってきたから遅くなったという彼女の言葉から、不意に匂いが気になってしまったが、彼女はそれを指摘することもなかった。

 ロポッサの街だけでもかなり広いので、最初に訪れたこの街を隅から隅まで探すのは、なかなか骨が折れる。

 なので、彼女のようなまだ日も浅いプレイヤーからすれば、真新しい建物も多いことだろう。

「わぁ…かわいいお店ですね」

 再び、犬や猫の動物と触れ合いながら、街中を散策していると、一つの店が彼女の目に留まった。

 『ロリポップ』と看板が掲げられた店の外観は、ポップな装いで華やかに彩られているが、男からすればかわいいを通り越して、入りにくい見た目でもある。

「あ、お店もですけど、かわいいお洋服もいっぱいですっ!」

「ちょっと覗いてみるか?」

「え? 良いんですか?」

「ああ、ちょっとくらいならな」

「じゃあ、早速行きましょう!」

 足取りも軽やかなプラナシカは、花に誘われる蝶のようにひらひらと吸い込まれていった。

「あ~、いいなぁ。こっちもかわいい~。いいないいな~」

 大きな独り言がまるで催促されているようにも聞こえたが、ここは無視を決め込んで、次々に店内に並べられた洋服を手に取る彼女を眺めていた。

 未だ初期装備の簡素な服を着ている彼女からすれば、ここの商品がキラキラして見えるのも仕方ない。

 この店は、プレイヤーが建てて経営している衣料店の中でも、一番充実しているといっても過言ではないほど大きな店だ。

 既存の店で売られている装備や服と違い、店に携わる者が素材を集めて、スキルによって作っているものなので、派手だったりかわいさ増しましだったりと、個性が出ている。

 大抵のプレイヤーは、所持金が潤沢になってくると、一度はこの店に世話になるとすら言われており、多くのプレイヤーがその個性を示す為に通る道でもある。

 武器こそ、最初に貰ったものをずっと使い続ける者が多い分、それ以外で見た目の個性を出す為の大きな要因が防具や装飾品なので、その一端を担うこの店が、プレイヤーの中で重要視されているのは自然なことだ。

 俺も利用したことはあるが、見た目よりも装備のステータスや付与効果の方が優先しがちなので、その辺はちょっと認識のズレがあるかもしれない。

「アリガトゴザイマシター!」

「あっ、あの子かわいい!」

 商品の服だけでなく、大きな帽子を被った店員にまでかわいいと声を向けたプラナシカの見境の無さに呆れそうだが、当人同士は特に不快な思いはしていないようだ。

「おやぁ? バレットさんじゃないですかー!? お久しぶりですねー」

 本来レジすら必要ないのに、お店としての雰囲気を出す為に設けられたレジの裏にいた彼女は、その小さな背丈を補う為に乗っていた踏み台を降りて、カウンターからとことこと近寄ってきた。

 その甲高い声は、そのロリロリしい見た目から連想されるものではあるが、長時間聞いていると頭痛がしてきそうな気もする。

「よう、マカロン。相変わらず、ちっちゃいな」

「ちっちゃいんじゃ無いんです! かわいいんです!」

「はいはい」

 小さいことを気にしているが、それをかわいいとポジティブに受け止めているのが、このロリ店長ことマカロンだ。

 背丈が小さいだけでなく、膨らみかけで終わったすっかすかの胸はもちろん、パステルグリーンの長い髪をツインテールにしているので、余計ロリロリしさが上がっている。

 小さい身体で猛抗議してくる彼女の頭を、帽子ごと片手で抑え込んでも、両手を上げておざなりな返答についても注意を促してくる。

「いいですか? かわいいは正義なんです! ちゃんと分かってますかー!?」

「あー、うるせー。分かったから、静かにしてくれ」

「あぁっ! 分かりました。久しぶりに来たと思ったら、揶揄いに来たんですね! 冷やかしはお断りです! 今度の依頼料、割増しにしますぅ!」

「おいおい、違うって。人を選んで値上げするの、やめてくれよ」

「バレットさんっ! 小さい子を虐めるのは良くないですよ!」

「あのなぁ…」

 もう一人の余計な横やりが、さらに事態を悪化させようとするので、一先ず店長の頭を撫でて宥めかす。

「はにゃ~ん…。なでなで気持ちぃ~」

「…はっ! ワンちゃんや猫ちゃん相手より、手慣れてます!」

「また余計なことを…」

 例のクエストについては、内密な話だということすら忘れてしまっているプラナシカへ、釘を刺すように鋭い目で睨みつけた。

「うぐっ…。バレットさんは…そういう幼い子が好きだったんですね」

「おい、冗談でもそういう誤解を招くことは言うな」

「わーい。マカロン、お兄ちゃん大好きー!」

「お前も、面白がって抱き着いてくるなよ」

 小さな策略家を引き剥がすと、ようやく少しは落ち着いて静かになった。

 幸い、そこまで店内は込み合っていなかったが、何事かと見ているプレイヤーも当然いた。

 その中でも、くすりと笑う部外者の女が一番気にくわなかったが、ここでその額に風穴を開けてやるわけにもいかないので、仕方なく溜飲を下げた。

「それで、お兄ちゃん。この子はどちらさんですか? 見かけない顔ですけど…アイターっ!」

 また変な呼び方をする女には、デコピンの一発くらい当然の仕打ちだ。

 その癖、大して痛くも無いだろうに、額を抑えて一丁前に被害者面をしている。

「ちょ、ちょっと…かわいそうじゃないですか。こんな幼い子に…」

「何言ってるんだ、お前? こいつ、こんな成りをしてるが、俺より年上だぞ」

「えぇ!? そうなんですか…?」

「あ、それは秘密って言ったのにー!」

 少女の姿をした年上の女は、頬を膨らませて抗議の目を向けている。

「それで…何だっけ? ああ、まだ紹介してなかったな」

「そうですよ。ちゃんとガールフレンドができたなら、マカロンにも教えてくれないと」

 にこにこと明るい表情を浮かべる童顔な少女の笑みは、時としてダメージをもたらす。

「…本当にそう思うか?」

「ふぇ?」

 嬉々として聞いていた少女は、真顔で話す俺を見て、頭に疑問符を浮かべた。

「俺に、そんなもんができると思うかって聞いてるんだ」

「うーん…。0では無いけど、限りなく0に近い気が…なんて」

「じゃあ、言わなくても分かるよな」

「ああ、セ●レですね!」

「どうしてそうなる…」

 彼女の口から真っ先に出た言葉を聞いて頭を抱えるが、経緯としては、あながち間違ってないから、否定もしづらい。

「違いましたか。ということは、お店の方ですね?」

「なんで、そっちに寄るかな…」

「今の時代は、VRにまで来てもらって致すんですね~。まあ、でも病気とかデキちゃう心配もないから、都合が良いのかな」

「致すとか、そういうこと平気で言うんじゃねえよ」

 見た目の幼さに反して、中身が大人なので、外見から飛び出る言葉のチョイスに随分とギャップがある。

「ちょっとクエを手伝うことになっただけの関係だ。名前は、プラナシカ。お前の新しいお客さんだよ」

「よろしく…お願いします? で良いんでしょうか」

「あははー。年上とか忘れちゃっていいよー。現実リアルじゃないんだし」

 見た目と中身のギャップから、どう距離感を取ればいいのか分からず、戸惑っていたプラナシカに優しく提言して、握手を取り交わした。

「マカロンは、マカロンだよー。このお店のオーナー兼店長もやってるの、よろしくね」

「は、はい…って、え? ここ、マカロンさん…あ、マカロンちゃんのお店なの?」

「そうだよー。バレットさんと違って、狩りとか冒険メインじゃない分、こういうお店の経営に力を入れてるの」

「へぇ~。そんなこともできるんだ。すごいですね~」

「えへへ~、まあねー」

 純粋に褒められたことで、恥ずかしそうに顔を掻いているが、その一方で、無い胸を張って誇ってもいた。

「ところが、こいつはそれどころじゃないんだな。商業メインで活動してるクラン、『スウィーツ・メランジェ』のクランマスターでもある」

「えぇっ? じゃあ、もうオーナーとか社長を通り越して、組合長みたいな感じですか?」

「いやぁ…それほどのことでもないよぉ~。そういうお店をやってみたい、って子が集まったクランってだけだから~」

 鼻高々の幼女は、殊勝な言葉とは反対に、随分とふんぞり返っていた。

「でもでも~、プラナシカちゃんもすごいじゃない。ほら、このおっきいおっぱい!」

「きゃっ! く、くすぐったいですぅ~」

 VRとはいえど、人前でこんな事をしたら、男であれば一瞬で白い目で見られること請け合いの女同士のじゃれ合いは、彼女を現実へと引き戻してしまう。

「はぁ~、いいなぁ~。……私も、こんなおっきなおっぱいぶら下げてみたかったなぁ」

「おい、地が出てるぞ」

「はっ! ゴメンゴメン、つい…」

 それで済んだら、世の男達もこぞって同じことをするだろうと思いながら、プラナシカの全身を改めて見直す幼女の姿を眺めていた。

「でも、確かに…まだ初期の防具着けてるくらいなら、うちの店を贔屓にしてもらわないといけないねー」

「プラナシカちゃんも、もっとかわいいお洋服とか着たいでしょ?」

「はいっ、もちろんです!」

「だったら…、今はまだ買うお金も無いかもしれないけど、代わりにバレットさんに買ってもらえばいいよ」

「え? えぇっと…、それは…」

 申し訳無さそうな声を出しても、ちょっと期待してしまっているのが見てとれる。

「そりゃあ、お前は売り上げが伸びれば、何でもいいだろうけどさ…。わざわざ、俺がそんなことをするメリットがあるか?」

「もちろん、あるとも。男なら、そのくらいの甲斐性を見せておかないと、それこそガールフレンドの一人もできないよ」

「それに味を占めて集られるのが嫌だから、そうしてこなかったんだがな」

「あははー。そこに目を瞑って、スッと支払えるのがイイ男ってもんさ」

「助言は有難く受け取っておくが、今回はパスだな」

「ありゃー、それは残念。バレットさんの男前ポイント、マイナス1ぃー」

「元からそんなもんは無いから、別に痛くも痒くもないわ」

「それに、欲しい物があるなら、自分で金や素材を集めて手に入れた方が良いだろ? そっちの方が、愛着も湧くってもんだ」

「おぉー、それは確かにぃ。でも、それだと売り上げが落ちるから、オーナーとしては一概には言えないなぁ」

「まあ、オーダーメイドも承ってるのは事実だし、プラナシカちゃんも、もし欲しい物があったら、お気軽にどうぞってねー」

「はい、その時はお願いします」

 買ってもらえなかったことへの未練よりも、どういう服を作ってもらおうかという展望に想いを馳せているような面をしていた。

「うん、これでよし。最近、プラナシカちゃんみたいに新しく入ってくる子は、なかなかいないんだから、初心者には優しくしてあげるんだよ、バレットさん」

「オーナーさんは、店の心配があって大変だな」

「そういうことを言ってるんじゃないよ。もう…」

「分かってるって。でも、そういうのはガラじゃないんだ」

「あぁ。一応、硬派を気取ってるんだもんね」

「言い方に、随分トゲがあるな」

「へへっ、さっきのお返しぃ~」

 結局、冷やかすだけで何も買うことも無く店を後にした俺たちは、小さな店長に見送られ、本来の目的へ立ち返る。

 また街中を歩き回って犬猫を追いかけ、結局一日がかりになってしまったが、なんとか既定の回数をようやくこなすことができた。

「これで、第一段階クリアだな」

「やりましたね! 私は楽しみながらできましたから、とっても幸せな時間でしたけど」

 動物の好き嫌いがここまで如実な結果を生むとは思っていなかったが、彼女にはまだ一つやってもらわなければならないことがある。

「その幸せな余韻に浸っているところ悪いが、この件を手伝うためになんでもすると言ったことをちゃんと覚えているか?」

「あっ…。そうでした」

 幸せそうな笑顔を浮かべていた顔は、みるみるうちに赤みを増していく。

「もう、そろそろ帰る気でいただろう? 報酬は、前払いで貰うと言ったはずだぞ」

「はい、すいません…」

「じゃあ、どこかの宿屋にでも行くか。…嫌なら逃げてもいいけど、もうこれ以上手伝わないからな」

「…もう約束しましたから、ちゃんとついていきますよ」

 アダルトな雰囲気のホテルなど無かったので、普通の民宿みたいな宿を一室取った。

 プラナシカは女に二言は無いとでも言うように大人しくついてきたが、そわそわと終始落ち着きの無い様子だった。

 部屋には、簡素なベッドが一つあるだけで、色気もへったくれも無かったが、彼女が一肌脱げば、その様相も違って見えるだろう。

「装備を脱いで、そこに座れ」

「…はい」

 嫌なのか恥ずかしいのか、あるいはその両方なのか。俺には彼女の気持ちなど分からなかったが、彼女がなんでもしてくれるというなら、せいぜい好きにさせてもらおうではないか。

「これで、いいですか…?」

「まあ、いいだろう」

 下着も初期装備のままなのか、上下とも簡素な白い下着のセットだった。

 スポーツブラのような形状をしているので、彼女のはち切れんばかりの膨らみを覆い隠す布は、随分肥大化してしまっている。

 さらに、よく見れば、白い布の奥にピンク色の円すら透けて見えてきた気もする。

「あんまり、見ないで下さい…」

 許可を貰っていたので、ここぞとばかりにじろじろ見ていたのだが、耐えられなくなった彼女は早々に音を上げて、自らの手で秘部を覆い隠してしまった。

「じゃあ、終わりだな。あとは、一人で頑張ってくれ」

 勘違いして欲しくないのだが、なにも、俺は彼女に無理強いしているわけではない。彼女が交換条件として、自らの身体を差し出すことも厭わず、なんでもするというのだから話に乗っただけだ。

 彼女がその条件を飲み込めないというのなら、俺はこの件から手を引く。ただそれだけだ。

「…待って下さい。言う通りにしますから、今後も協力して下さい」

 ベッドから降りて立ち去ろうとした俺の手を掴んで引き留めると、自らの秘部を隠していた手も退けた。

「それでいい。さあ、続きをしようか…」

 彼女の顎をそっと持ち上げて、その潤んだ瞳を凝視すると、薄笑いを浮かべて女性的な象徴へと無遠慮に手を伸ばした。

「んっ…、んぁっ…、あっ…、ん、んぅっ…」

 その柔らかさを確かめるように、大きく手を開いて揉み込んでいけば、次第に彼女の顔も赤みを増して、息が荒くなってくる。

「バレットさん…」

「なぁに、怖がることは無い。悪いようにはしないさ」

 その夜、彼女は自分の本当の武器を最大限生かす術を知ることとなった。

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