ブラウンシュガー
背中だけでもわかったんだよ
あなたがわたしの運命だって
変えられていく生活に苛立ったこともあったけど
目が合うだけで声を聴くだけで
こころがふっと緩んでいく
あなたと会う前のわたしは
どうやり過ごしていたんだろう
絶え間なく襲ってくる日々の波を
いのちはかぎりあるものだから
別れの日があるのも知っているけど
遠い未来でも握っていたいよ
焦げた砂糖の匂いのする
あなたのてのひらを
何万年分の恵みを煮詰めた
鉱石みたいな瞳をのぞく
わたしの膝に頭をあずける鼓動は少し早くて
せつないけれど今日の奇跡を
めいっぱいぎゅっと噛みしめる
あなたのせいで最近のわたしは
意味もなく微笑んでばかり
不機嫌だった過去に気付くんだ
いのちはくりかえすものだから
出会いの日はまたやって来るはず
そんな未来でも差し伸べてほしい
やわらかく世界を回してしまう
あなたのてのひらを
起きぬけにはおいしい水を
眠れぬ夜には静かな映画を
しあわせは祝祭の真ん中じゃなく
やさしくつむがれる暮らしにある