9話:話し合い
達也と虎太郎は契約をした。それは虎太郎が達也のサポートをする代わりに1つ願いを叶える為に協力するというものだ。しかし、虎太郎の願いは分かっていない。
しかし、契約をしたと言ってもお試しだ。達也は自分の力に着いて虎太郎には話していないし、虎太郎も自分が持っている能力や技術を全てさらけ出しているわけではない。だが、虎太郎は達也に契約を継続させ寝ければいけない立場。
その為にできる事として達也と共に完全個室制の店に来ていた虎太郎はある質問と警告をすることにした。
「達也。これからも君は悪者を殺していくのか?」
虎太郎は達也に問う。虎太郎に唐突に質問された為、本心が漏れてしまっていた。
「えっ。……あぁ、俺は殺さなくちゃいけない。殺さないと……いけないからな」
「?……そうなのか。それならば問題ない。そんな君には話しておく事がある」
虎太郎は達也の口調に違和感を覚えたが、この質問が本題では無い為、意識を切り替えていた。
「なら、達也。君はこれから情報端末で……ログが残るような調べ方はしない方が良い。今までの達也の情報端末は改ざんしたから大丈夫だけど」
達也は虎太郎の話していることの意味を理解すると同時に納得していた。虎太郎自身が達也を見つけることが出来たのも情報端末のログからという話を思い出したからだ。
「だけど……他に調べる方法って無くないか?」
達也は理解も納得もしているが、単純にこれからどうやって悪者について調べていけば良いか分からない故の疑問だった。
しかし虎太郎は契約した相手が愚鈍であることに落胆を隠せないし、隠す気も無い。
「度し難いな……君は。どうして僕がいると思っているんだ?」
虎太郎は持ち込んだパソコンを操作して達也に画面を見せる。
「この画面を見たまえ」
達也は虎太郎に促され、パソコンに表示された画面を見る。その画面の中には人の顔写真と名前、行った犯罪などが多種多様に書かれている
「僕が調べた悪者や犯罪者のリストだよ。此処から君が殺したいと思うやつを選べばいい」
虎太郎はニヤリと達也に笑いかける。達也が中身に目を通していく。
「殺人犯、強盗犯、テロリスト……本当に沢山いるんだな」
「そう。君が殺す相手もここから選べるだろう> なかには悪者警報にも載っていない奴が大勢いる」
「凄いな。こんなに悪人がいるなんて……だが、どうやってこんなに調べたんだ?」
「ふん! 僕はネットが得意なんだよ。どんな情報でもネットに繋がっていれば調べ出せるさ」
虎太郎は少し誇らしげだった。そんな虎太郎をよそに達也はリストに目を通し続ける。
(こんなに犯罪者がいるのか……しかも窃盗なんかじゃなく、重犯罪者。なんだ……平気じゃないか)
達也はリストに目を通すことで自分が犯罪者を裁くという思いと少しの安堵を得た。この安堵を達也はエネルギーのストックを増やせる相手が無数に存在する事だと考えていた。しかし本当は、自分と同じ犯罪者が世の中にはたくさん存在するという事実が理由であると達也は気づかない。
「なんだ。君はそんな顔をするのだな」
虎太郎に言われて達也は何を言っているんだという顔をする。
「……?」
虎太郎は補足するように言葉を重ねる。
「僕と会ってから君は1度も笑わなかったが……今の君はとても良い笑顔だ」
「え?」
そして犯罪者を裁くために犯罪を行う犯罪者のコンビが誕生した。のちに呼ばれる名は”復讐者”。そして異能統括機構が長年にわたり、追い掛ける相手となる者だった。




