10話:エピローグ
達也が初めて人を殺した次の日。達也は学校に登校していた。教師からはもちろん連絡無く休んだことを心配され、友達からは心配された。そして……。
「達也。3日も休んでどうしたのさ。連絡も出なかったからボク心配だったんだけど?」
樹に問い詰められていた。
「いや、すまない。ちょっと気分が悪くて寝込んでいたんだ。今はもうこの通り」
達也は力こぶを見せるようにして弁明をする。
「それでもだよ! 全く……連絡を入れたんだから返してくれてもいいだろうに」
樹は不満そうに頬を膨らませている。
そんな樹を見ながら結局解消されていない疑問について考える。
(あの日、結局樹たちは現れなかった。あれは俺の聞き間違いか?)
自分の聞き間違いではないかという疑問が浮かんでくる。耳にはっきりと聞こえ、しっかりと記憶している会話が間違いのはずが無いというのに。
(もしくはあの日じゃなくて別の日だったのか……そしたら俺は大間抜けという事になるが)
自嘲しながら別の可能性も考える達也。しかしこの大間抜けである方が筋が通りそうだと考えていた。
「達也! 聞いているのかい?」
「あっ、あぁ。そうだな。今度から気を付ける」
達也は考えを棚上げし、次の授業の準備を始める。異常な一軒から風通な日常へと戻った達也。
しかし、異能が無いが幸せを感じていた頃よりも貪欲で活力に満ちた目をしていた。
そしてそれからの達也の行動は早い。回転式拳銃のストックが無くなるよりも前に悪者を探し殺し始めたのだ。
悪者は社会に隠れ潜み、凶悪な犯罪をしている者もいる。しかし、達也は確実に探し出し、拳銃を用いて殺しを行い始めた。
すると世間は騒ぎ出す。血が一滴も出ずに胸を貫かれ死ぬ悪者が何件も連続して発生している。防犯カメラには映ったことは無い。目撃情報もない。ただ、死体のみが存在する。
凶悪な犯罪を行う悪者を同じ手口で何人も葬ることから悪者に恨みがある悪者であるという考察が世間に出回り始めた。
社会は物語性を求める。面白ければ人はそれを騒ぎ立てる。悪者を殺す悪者。さながらそれは復讐する悪鬼羅刹のよう。
そのため悪者を殺す悪者はこう呼ばれた。
復讐者と。




