【第2話】病院へ通院
※注意事項
この小説は高齢者や認知症を誹謗中傷することを意図していませんが、不快に思われる方は閲覧を控えるようにお願いします。
「でかい病院はやはり待つのう…」
一か月以上前に予約し、予約時間30分前来院し、既に2時間待たされているが未だに呼ばれる気配がない。
老人が右手に装着した腕輪が震え、青く光る。
「おぉ、やっとか」
光った色と同じ道案内をたどり、診察室が見えた。
彼の息子より若い医者に促され、彼は座った。
「秋山釣蔵さんでよろしいでしょうか?」
医者というには体格の良い筋肉質の男が尋ねる。
「秋山釣蔵です」
肯定を意味する頷きののちに老人は告げた。
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「はい、ではこれですべての診察が終了しました、続いてテストプレイにおける被験者としてしての説明と契約に入ります」
失った感覚器官や部位を仮想現実で再現し、理想の生活の実現やQOLの向上を図るためにこの計画はスタートしていると医者は告げる。
「仮想現実に関わる前と後の心理面を含めた変化の観察、その記録と情報の活用が主な目的ですね」
「希望があれば途中でも被験者の終了は可能です、2年経過せずの自己都合の場合、残り日数に応じて初期費用のいくらかを自己負担していただきます
「報酬はゲーム内通貨で支払われ、変動するレートで円に変換することも可能です」
「これは全くの新しいシステムで、非常に高機能な…」
徐々にヒートアップし、目が輝く…
「せんせーい、そろそろお時間でーす」
間延びした女性の声で医者は我にかえる。
「あぁ、すいません、熱く語ってしまった、それでは今までの内容に承諾いただけるならサインをください」
個人識別での認証が一般的になった時代に、手書きの自署でのサインは珍しい。
契約の説明を録音録画し、自署によるサインとは自己意思での契約を結んだという強い証になる。
「先生、これでよいですかな」
作蔵は書き心地の良いペンと共に契約書を渡した。
「はい、はい。不備はありません。今後必要な設備の設置がありますが、よろしくお願いします。それから今後は月に一回程度の診察があります、かかりつけ医としても当病院が指定されますので、何かありましたらどうぞ」
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