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第8話 海はでかいな、どでかいな

「うわー、何、これ?」

「あー。これは海さ。海が見えたら、もう少しでオーマの街に着くぞ」

「海っていうの? なんでこんなに大きいの?」

「知らんがな。海はでかいの。昔からそう決まっているの」

「でかいなー、どでかいなー」

「まぁ、初めて海を見たら驚くわな」


僕はまだ、全然知らない物がたくさんあるって分かってきた。

野菜スープが美味いのも、綺麗なお姉さんがいるのも、馬ってこんなに速いっていうのも。


知らないことばかりだ。


農園で農奴をしていたら一生知らないことだったんだね。

ロジャーにスカウトされて本当に良かった。


「おい、しっかりと綱を掴んでいろよ。早馬から落ちたら大怪我するぞ」

「あー、はい!」


そうだった。

今はロジャーと一緒に早馬に乗っているんだった。

本来、早馬はひとりで乗る物だっていうけど、僕が馬に乗れるはずないからなー。

ロジャーの前に乗せてもらっている。

馬の首につけられた綱を持ってね。


「この分なら日没の後6刻より1刻前には付けるはずだ。今日のうちに賞品をさばくことができるな」

「うん」


今、僕の時空収納には400㎏の果実が入っている。

朝に収獲したばかりの物だ。


昨日までいたエイヒメの街は、柑橘の果実が名産で時期もちょうどよかったみたい。

だから、街の近くの果樹農園に行って朝から柑橘のミカンという果実を収獲してもらった。

時空収納に入る分だけ。


これをオーマの街に持ち込んで売りさばこうというのがロジャーの計画。

オーマの街は海に近いから木が育たず、果実は他の街から買うしかない。

だから、高級品なんだって。


「朝採れの果実なら、3倍の値段で売れるぞ。早馬代を払っても金貨3枚の利益は出せるぞ」

「ええー、金貨3枚!」

「1日でそれだけというのは、すごいだろう。その上、オーマの街の近くには漁村がたくさんあるんだ」

「漁村?」

「そうだ。魚を獲る人達の村だ。新鮮な魚が仕入れられるぞ」

「あ、次は魚を運ぶんだね」

「シオンもだんだんわかってきたじゃないか。うまい魚を選んで新鮮なままエイヒメの街に持って行ってみろ。魚の干物しか売っていない街なら新鮮な魚だったら金持ちも買うぞ」

「じゃあ、金貨3枚、儲かるの?」

「いや、その倍はいけるんじゃないかな」

「すげー、金貨6枚ってこと?」

「そうだ。そのくらいの計算はできるんだな」

「あー、バカにした。3と3を足すと6でしょ。そのくらい計算できなかったら買い物もできないよ」

「そりゃ、そうだ」


☆  ☆  ☆


「あー、暇だなぁー」


アイテムボックスは秘密だから、でっかい荷車にのせたミカン。

それを市場で売るのかなと思ったら違った。

商人ギルドに納めたらおしまい。


晩飯は道端の屋台で焼麺っていうのを食べた。


広い石板の上で焼く、細長く小麦粉を伸ばした物が麺っていうみたい。

石板の下には炭が赤々と燃えている。


じゅっ。ソースと呼んでいる茶黒い液体を石板にかけると大きな音と共にいい匂いがしてくる。

ぐるぅぅぅ。腹が大きな音を食べる。


麺と野菜をソースにまぶして焼麺の完成。

大きな葉に載せて手渡してくれる。

一人前、銅貨3枚。


あー、やっぱり。これ、うまい奴だ。

匂いからしたたまらなかった。

口に入れた瞬間、ピリ辛なソースの味が広がる。



だけど、すぐに食べ終わっちゃった。

うまいから、口に一杯、頬張ったら無くなっちゃった。


屋台はたくさんの人が利用するから、食べ終わったらすぐに立ち去らないといけないみたい。


「シオン、行くぞ」

「うん」


ちょっと心残りだけど仕方ない。

宿を取って、寝るんだよね。


「あ、宿は決まっていてな、一緒に行って鍵をもらう」

「うん」

「だけど、そこからは別行動だ」

「えっ」


なんか、ソワソワしているね。


「私は野暮用があってな」

「えっと」

「明日の昼までは帰らないから」

「えー」


ちょっと抗議の声を上げると、こんなことを言われた。


「そうだな。シオンも13歳なんだから、ひとりで遊べるようにならないとな」

「小さい子供じゃないんだから、ひとり遊びなんて」

「そうじゃなくて、街遊びだな」

「街遊び?」

「ああ。街にはいろいろと楽しいところがある」

「うん」

「夜だけやっている所もある」

「あーーーー」

「そういうことだ。大人の私は行かなければいけないところがある。それも仕事がうまくいったときは特にな」


わかった。エッチなとこだ。

娼館っていうんだ。英雄物語にも出てきたもん。


「シオンにはまだ早いからな。そうだな………おっ、いいこと思いついた」

「何?」

「この街には、12歳から入れるダンス館がある」

「えー、ダンス? 農園でもダンスしたけど。円になって踊るあれ?」

「あー、農園とは違うけどな。まぁー、下手でもそのうち覚えるだろう。13歳くらいの男の子も女の子もいるぞ」


想像してみた。


「もしかして、夏祭りみたいな物?」

「おー、そうそう。夏祭り。若い男女が出会う所だろう。街では毎夜、夏祭りをしているダンス館というのがあるのさ」

「すごい! 街ってすごい」

「ただ、そこはお金がいるからな。特別にこれをやる」


ロジャーが握らせてくれたのが、なんと銀貨!

そんなお金がいるとこなのか。


「入って果実水のんでいるだけなら、大してかからないがな。いろいろとお金が必要になるかもしれないから」

「じゃあ、使わなかったら返すの?」

「あー、それはもうシオンの物だ。返さないでいい」


うっひょーー。

すげーーー、銀貨もらってしまった。


「ただな。夜の街には悪い奴がたくさんいるから、変な奴についていくなよ」

「うん」


前にもらった大銅貨が1枚残っているのに、銀貨をもらってしまった。

変な奴なんかについていくもんか。


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― 新着の感想 ―
[良い点] エイヒメ! オーマ! 街の名前にときめきを感じます! ダンス館! クラブやディスコ的な感じでしょうか! 楽しそうですね!
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