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第6話 あのさ、2倍って何倍のことなのかな? 

「まいったぜ。全然レベルアップしなくてよ」

「そうよ。みてよ、これ。こんだけゴブリン倒したのに、ギリギリ1レベルアップよ」

「本当に、こいつ。レベル1なのか?」


依頼を達成した冒険者と依頼を出した商人。

報告というか、文句というか。


ロジャーは嬉しそうに彼らの話を聞いている。


「ご苦労さん。報酬はボーナスを出そう。2割プラスだ」

「おおーー、いいのか?」

「もちろんさ。またお願いするかもしれないしね」

「それはそれは。今度はもっと簡単な奴がいいがな」


僕はレベルアップしてどうなったのか実験したくてうずうずしている。


「報酬はギルドに渡してあるから、今はボーナス分だけ渡そう」

「おー、それはありがたいな。これでミッション成功の祝杯をあげようと思うが一緒にどうか?」

「あー、やることがあるから、また今度ということで」

「それなら。みんな行くぞー」

「「やったー」」


冒険者達が帰ると、ロジャーはレベルアップのことを聞いてきた。

冒険者達がいると話せないからね。


「まずは、レベルアップの効果を知りたい。アナウンスはあったか?」

「うん。収納は2倍になったみたい」

「おー、80リットルが160リットルになったってことか」

「そうみたい」

「まずは、それを検証しないとな」

「うん。それだけじゃなくて、新しいコマンド覚えたんだ」

「コマンド?」

「あー、魔法?」

「おー、新魔法か! 時空系の上級魔法ってことか」

「うーん、上級かどうか分からないけど、新しい魔法みたい」


時空魔法では、呪文じゃなくてコマンドを唱えるんだ。

どう違うのか、他の魔法が使えない僕じゃ分からないけど。


昨日までマスターしていたのがスピアとスピダのコマンド。

スピアで時空収納に物を入れて、スピダで時空収納から物を取り出す。


だから、ソルアとソルダのコマンドも、入れるのと取り出すコマンドかなと思う。

だけど、スピとソルがどう違うのかはやってみないと分からないなー。


☆  ☆  ☆


「ここって、何?」

「ここは倉庫。知り合いの商会に話をして借りたのさ」

「そうなんだ。うす暗くて何も見えないよー」

「そうだな」


ロジャーが何か唱えると明かりがついた。


「あ、ロジャーって魔法使えるの?」

「これは魔法じゃないよ。魔道具さ。このリストバンドに組み込んである」

「へぇー、そんな便利な物があるんだ。いいなぁー」

「アイテムボックス持ちに言われたくないよ、それ」


笑いながら、大きな袋をひとつ持ってきた。


「これは小麦が10㎏入っている袋だ。容量だと12リットル。まずはこれをアイテムボックスに入れてみて」

「うん」


まずは時空収納の容量チェックだね。

僕もちゃんと2倍になっているか知りたいな。


《スピア》


うん、もちろん入る。

どんどんいくよ。


「これで6袋だ。レベルアップ前だとギリギリ入るか、無理かの境目だな」

「うん。まだ余裕」


どのくらい残っているかは、正確には分からないけどギリギリになってくると分かる。

無理かも、とか、やばいかも、とか。

今はそれがないから余裕だね。


《スピア》


「よし、次は7袋目だ。容量だと84リットル。間違いなく前のシオンだったら無理だったろう」

「うん」


全然余裕って、感じ。


《スピア》


「よし、どんどんいくぞ。13袋までは一気にいくぞ」

「うん」


《スピア》《スピア》《スピア》《スピア》《スピア》《スピア》《スピア》


「おおっー。13袋は入った。これで156リットルだ。2倍だと、次の14袋目は無理かな」

「えっ、余裕だけど?」


このくらいになると計算はよくわからないけど、まだまだ入る気がする。

気のせいかな。


《スピア》


「あれ? 入ったぞ。168リットルだよ。計算間違いかな。それとも、この小麦、定量より少ないとか?」

「うーん、分かんない。だけど、まだ入るよ」

「そうだな、考えるのは後にするか。どこまで入るかチェックだな」

「うん」


《スピア》《スピア》《スピア》《スピア》《スピア》……


「おいおい、いつまで入るんだ? おかしいだろう」

「そんなこと言っても。まだ入るよ」


《スピア》《スピア》《スピア》《スピア》《スピア》……


「ふう。40袋。こっちに持ってくるだけで、疲れたわ」

「お疲れさん。僕は全然、元気」


《スピア》《スピア》《スピア》《スピア》《スピア》……


「あれ。そろそろ限界みたい、これを入れて」


《スピア》


「そうなのか? これは入らない」

「うん、無理」

「えっと、これが43袋目だから、42袋か。504リットル」

「すごい、一瞬で計算したね」

「いやいや、そんなことより、504リットルが入って、516リットルが入らないか」

「うん」

「あ! 分かった!! 512リットル」

「何、それ」

「240サイズだよ、240サイズ」

「えっと、240じゃなくて、512じゃないの?」

「だから、512リットルというのは縦横奥行がそれぞれ80㎝でちょうどなんだ。80を3つ足して240サイズ」


なんか、ロジャーがすっきりした顔をしている。

僕は何がすっきりしたのか分からなくて、もやもやしている。


「そうかぁー、120サイズが240サイズになって2倍ということか。容量は8倍になるな。64リットルが512リットル。あ、ちょっと確認してみよう」


そういうと、また升を出してきた。

それに小麦を入れて差し出してくる。


「これなら入るだろう」

「うん」


《スピア》


結局それから8升入れて時空収納は一杯になった。


「ほら、ちょうど512リットル。240サイズ。びったりだろう」

「うん」


計算するのが面倒くさいので、相槌をうっておいた。

そのあたりは理解しないでいいとこだ。(笑)


「要は水だと512㎏が入るんだ。水汲みだと前の8回分が1回で運べるぞ」

「すごい!」


やっとレベルアップの効果が分かった。

もうラバ以下なんて絶対言わせない。

ラバだと512㎏運ぶには6頭はいるしね。


「そうなると、あれだな。この街の特産品を買って別の街で売るだろう。ただ、この場合は税金を払うし、馬が必要で借りるとして……」


なんか、商売の計画というか、妄想というか。

そんなモードに入ってしまった、ロジャー。


どうしよう。

もっと知りたいことがあるんだけど。


「ね、ロジャー」

「ん? 邪魔しないでくれる?」

「あー、邪魔するつもりはないけど、ちょっとだけいい?」

「なに?」

「新しい魔法も覚えたんだけど…」

「うわっ、忘れていた。そっちが先だ!」


うん、よかった。

新魔法の検証をはじめようー。


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