第32話 クレジットが溜まってきたぞー
「えっ、又。火炎酒のリクエスト?」
いつものように薬草と魔物素材をソルアしていたら、リクエストがあった。
火炎酒だって。
領主様の依頼のドワーフ印農具はとりあえず100本納品したから、農具はもういいんだけどな。
ドワーフ印ではない、普通の虎の帝国印の農具はまだ欲しい人がいるみたいで、出品があると買っている。
ドワーフ印の別の何か、必要な物はないかな。
あ、そうだ。
火炎酒を売っているおっちゃんが剣をほしがっていたな。
ドワーフ印の。
「本当か! ワシの火炎酒がドワーフに人気とは」
ネタとして受けていたなー。
まさか本当にドワーフが飲んでいるとは信じてなかったけど。
このあたりにはドワーフはいないから当然か。
「じゃあ。もし、ドワーフにドワーフ印の剣をもっていたら、譲ってもらってくれや」
やっぱり、剣というのは男の象徴。
火炎酒のおっちゃんは、冒険者でも兵士でもないから、剣なんて使わないとは思うけど。
だけど、欲しいみたいね。
「それなら、剣をもってきたら火炎酒と交換してくれる?」
「もちろんだ。だが、変な剣をもってくるなよ。ワシは剣の良し悪しは分かるからな」
うん、本当のドワーフ印ならきっと良い剣だろう。
鋼鉄剣だろうし。
「えっと、ドワーフ印の長剣をリクエストっと」
うん、いいね。
☆ ☆ ☆
なにこの剣、すごいんじゃない?
すでにエイヒメの街にある武器屋は貴族向けの所を除いてすべてチェックしている。
高級店の一番良い剣として飾ってある剣と同じレベルに感じる。
切れ味がよさそうな刀身。
凝った細工がほどこされた柄。
どこを見ても一流の鍛冶師が作った剣だと分かる。
そして、☆に囲われたドワーフ印。
たぶん、ドワーフの中でも有名な人の作品を示す物なのだろう。
「こんなに良い剣を酒屋のおっちゃんに渡したら、すごく強い酒を用意してくれるに違いない」
うん、きっとドワーフの鍛冶師も喜んでくれるはずだ。
なんといっても、エイヒメ街の特産品は山の斜面で作られる果実だ。
その果実を使った酒、それも酒精を濃縮した火酒も有名だ。
まだ飲めないから、どのくらい美味いのかは不明だけどね。
だんだんと分かってきたぞ。
商人っていうのは、こっちで欲しがっている物を別のところで見つけて持ってくるのが仕事なんだ。
普通は馬車を使って、持ってくるんだけど、僕にはソル市場がある。
ちょっと有利なんだ。
ドワーフが望んでいる物がここにある。
錬金術士が望んでいる物がここにある。
街の人達が望んでいる物がドワーフや錬金術士の所にある。
それを僕が結ぶことでそれぞれが喜ぶ。
喜ばすことができたら、クレジットが溜まる。
うん、とっても楽しい仕事じゃないか、商人って。
もっとも、商品を売るっていうややこしい交渉はロジャー任せだけどね。
☆ ☆ ☆
「おっちゃんいる?」
「おー、いるぞ。剣、みつかったか?」
「うん、すげーの見つけちゃった」
「おー、見せてみろ」
時空収納から☆囲いのドワーフ長剣を取り出してみた。
じゃじゃあーんって感じ。
「おー、いい感じじゃないか。えっと印は・・・ロイヤルドワーフ!」
「あ、☆のドワーフ印はロイヤルドワーフって言うんだ」
「まさか、本物のロイヤルドワーフってことはないよな」
「えっと、本物かなと思うけど」
火炎酒を喜んでいるドワーフが出してきた剣。
むちゃくちゃクレジットも高かったし。
「信じられん。もし、本物だとすると騎士団レベルの剣だぞ、これ」
「うわっ、やっぱりすごいんだ」
「うちの家宝にしよう。もちろん、魔物が襲ってきたら俺が使うんだけどな」
「うん。その代わり、それを作ったドワーフが喜ぶような火炎酒を頂戴」
「わ、わかった! 最高に強くて美味い火炎酒を用意するから、1日待ってくれ」
「うん」
おっちゃんは喜んでくれたぞ。
あとは、ドワーフ鍛冶師さんが喜ぶ火炎酒を用意したらきっと喜んでくれる。
うん、良い取引だね。
僕も一人前の商人になれたのかな。
☆ ☆ ☆
「一人前の商人ね~~」
酒屋の隅に隠れていた白猫。
シオンの考えていることを見て、独り言を言っている。
ただの白い猫じゃない。
白装束というのだろうか。
影とも忍びとも呼ばれている忍者の黒装束。
それと全く同じで、色が白。
白忍者猫?
それとも、白猫忍者。
そう呼びたくなる恰好をした猫。
「ロイヤルドワーフ印のロングソードは一流商人しか扱えないんじゃないのかニャ? だいたいロイヤルが付いている時点で騎士爵以上の貴族向けだろうニャ」
白猫忍者がそんなことをひとり、つぶやいていた。
白猫ニャー。
忍者なのかニャー。
白い☆より黒い★が好きだニャー。
↓で☆をぽちっとするニャー。




