第28話 小さいながらも楽しい我が家
「お帰りなさい、シオン様」
「なんか、ちがうなー。アリア姉ちゃんは僕のメイドじゃないんだ」
「えっと、そうなると。私の役割は?」
「うーん、愛人?」
結婚している訳じゃないから奥さんじゃない。
でも愛している人だから、愛人かな。
「あ、愛人。うん、愛人」
「そうそう、愛人」
なんか伝わったみたい、よかった。
ここは、ロジャーが手配してくれたエイヒメの街にある小さなお家。
街の中ではあるけど、繁華街から外れているから静かな住宅地だ。
部屋が2つあって、あとは土間の台所がある。
トイレはあるけど、お風呂はない。
一人前の職人が家族と住む家。
アリア姉ちゃんとふたりで住むには十分だろうとロジャーが選んでくれた。
今はまだ賃貸しだけど、買い取ることもできる。
金貨100枚って言っていたから、ちょっとがんばれば買い取れる。
ちなみにアリアのスカウトは金貨40枚かかったんだって。
15歳の女の子だと金貨50枚くらいだって言うから、ちょっとディスカウントしてもらったらしい。
「それでは、シオン様」
「あ、愛人なんだからシオン様はNGね」
「じゃあ、前と一緒でシオンって呼んでいい?」
「うん」
別に変えなくてもいいよね。
「アリア姉ちゃん」
「じゃあ、シオンもアリアって呼んで欲しいな」
「あっ、そうだね。アリア」
「なぁに?」
いきなりだけど、いいかな。
言っちゃおう。
「して欲しいことがあるんだけど」
「うん」
「ギューっとして欲しい」
「うん、いいわ」
ギューッとしてもらった。
大きい胸に顔をうずめて抱きしめられる。
小さい時はよくしてもらったなー。
その時はこんなに胸、大きくなかったけど。
「なんか、いいな。安心する」
「私も」
ずーっと、こうしていたい気もするけど、胸から顔を上げてアリアを見た。
アリアも僕を見つめている。
自然にキスした。
それも、大人なキスで長い時間。
もう抑えられない。
奥の部屋のベットにふたりで倒れ込んだ。
☆ ☆ ☆
「ね、シオン」
「なあに、アリア」
名実ともに愛人となったアリア。
朝、起きたら横に愛する人がいる。
これって幸せなことだね。
「シオンはずっとこの街にいるの?」
「うー、たぶん違う。ロジャーと一緒にあちこちの街に行くはず」
「そうよね。だけど、この街にいるときは、ここに帰ってきてくれる?」
「もちろん。ここは僕の帰る家だからね」
そう言った時、なぜかほんわか暖かい感じがした。
農園にいるときは、農園のみんなと一緒の部屋が帰る場所だった。
1日農園で働いて、帰ってきて寝る。
みんなで遊んだりもする。
そんな部屋が帰る場所だった。
ロジャーにスカウトされて帰る場所がなくなった。
街の宿屋が寝る場所にはなった。
だけど、帰る場所とは違っている。
「アリアはずっとここで僕のこと待っていてくれる?」
「もちろん。だって、アリアはシオンの愛人だから」
うん、愛する人がいる場所が帰る場所だよね。
どんなに遠くまでロジャーと行っても、帰る場所はここ。
そういうの、いいね。
「今日はロジャーと一緒に買い物に行こう。必要な物いろいろとあるよね」
「うん。いろいろと揃えたいから。まずは当面必要な物ね」
何を買ったらいいのかは、僕は全く分からないだけどね。
でも、ロジャーとアリアが選んでくれるから心配ない。
僕はお金を払うだけだね。
そうだな。↓で☆評価をするというのは。
いいことではないでしょうか……作者が喜ぶし。




