第27話 アリア姉ちゃんをスカウト
第1部 書きあがりました。
第50話で第1部が終わります。
それまでは毎日更新の予定です、はい。
「これこれは。すばらしい贈り物をありがとうございます」
「いえ、農園主さんの贈り物は私からではなく、シオンからです」
「なんと! シオンがこんな素晴らしい物を」
農園主様へのプレゼントは魔法の杖。
と言っても、魔法が使える杖じゃなくて、身体強化効果のある杖。
最近、歩くのがつらいって言っていた農園主様にって考えたら、これになった。
「私のも開けていい?」
親子ほど離れた奥様だから、まだ20代かな。
3番目の奥様だね。
「うん。開けてみて」
中にはロジャーと一緒に選んだブローチが入っているんだ。
僕はどんなのいいか分からなかったから。ロジャーにお任せだけど。
「わぁー、7色宝石のブローチ。すごいわ」
ぱぁっと明るい顔になった。
うん、ロジャーの言う通り、女性には光り物だね。
「おー、シオンすげーな」
「かっこいいっ、シオン」
農園の同年代の仲間たちが走り寄ってきた。
「シオンじゃないぞ。もうシオンさんだ、いや、シオン様だ」
「いいよ、シオンで。みんな元気か?」
「おお、シオン。みんな元気だぞ」
うん、元気でよかった。
「みんなにもプレゼントがあるからね」
「おおーー、俺達にもかっ」
「ありがとう、シオン」
あ、ちゅっ、されちった。
急にモテモテ?
「いいなー。俺達もスカウトされたいな」
「私もーーー」
「お前みたいなチンチクリンがスカウトされるかよ」
「なによ。あんたなんかより、計算しっかりできるんだから」
あー、なんかいいな。
昔の日常の中にいる。
だけど、僕はもう、そこにはいないんだ。
ロジャーと一緒に時空師として生きていくんだ。
「さぁさ。中に入って。とっておきのお茶をいれたわ」
あ、奥様のサロンだ。
お客さんが来た時に、歓迎するための部屋。
そうか、今日は僕らがお客さんなんだ。
ちょっと照れるな。
☆ ☆ ☆
奥様のお茶を真っ白なカップでいただいた。
いつも使っていた木のカップじゃなくて、磁器っていうみたい。
おいしい紅茶を淹れてもらって、飲んだ。
だけど、まだ紅茶のおいしさはよく分からないなー。
「それで、奥様。今日、来たのはスカウトの件でして」
「あら、また誰かスカウトしていただけるの? ロジャーさんなら歓迎よ」
「いえ、私じゃなくて。シオンです」
「ええっ、シオンがスカウトするの!?」
驚くのも無理ないよなー。
3週間前にスカウトされたばっかりの僕だもん。
「うん。今度はスカウトに来たんだ」
「すごいわっ。たった3週間で、そんなに偉くなったのね」
偉くなったのかな。
お金はたくさん稼いだみたいだけど。
「それで、誰をスカウトするの? シオン」
「アリア姉ちゃんっ」
「アリアなのね。仲良かったからね。えっ、もしかして結婚相手として?」
びっくりしている。
だけど、そうなんだよね。
「最初は身の回りの世話をしてくれる役割で。シオンが成人したら、結婚するのもいいな」
僕の代わりにロジャーが答えてくれた。
うん、そんな感じで。
「じゃあ、アリアを呼ぶわね。ちょっと!」
奥様が手を叩くとメイドさんがやってくる。
耳打ちすると、メイドさんが去っていく。
なんか、どきどきとしてきたぞ。
「奥様、お呼びですか?」
アリア姉ちゃんが入ってきた。
ロジャーがじろじろ見ている。
僕の奥さんとしてどうなのか、値踏みしている?
「ここにお座りなさい」
「はい」
それだけ言うと奥様は黙ってしまう。
なんで呼ばれたか分からない姉ちゃんはきょどきょどしている。
あれ?
誰も発言しないの?
奥様を見るとニコニコしている。
発言する気はなさそうだ。
ロジャーを見るとニヤニヤしている。
黙っているつもりらしい。
えっ、僕が言うの?
「えっと。アリア姉ちゃん」
「何? シオン」
「僕はアリア姉ちゃんをスカウトしたいんだ」
「えっ?」
意味が分からないって感じで、アリア姉ちゃんは奥様、ロジャーの順で顔を見る。
だんだんと意味が分かってきたみたいで表情が変わってくる。
「えっ、私をスカウト? ぇっ、シオンが?」
「うん」
「えーーー」
驚きまくっているみたい。
喜んでくれるのかな。
「だって、私、もう16歳よ。シオンより3つ上だし」
「うん、知ってるよ」
「15歳を越えちゃったから、スカウトは無理って言われてて。一生この農園で暮らしていくのかと」
「アリア姉ちゃんはスカウトそれたくないの?」
ちょっと不安になってしまった。
だって、農園を出ると何が起きるか分からないし。
「そんなことない! スカウトされるのが夢だったの。だけど、無理だってあきらめて」
「よかった。あ、でも、スカウトするのが僕でもいい?」
「何言ってるの。シオンにスカウトされるなんて最高に幸せっ」
あー、よかった。
拒否されたらどうしようと思っちゃった。
こんな大げさなことしたのに、フラれねってカッコ悪いし。
「ふつつか物ですが、よろしくお願いします。シオン様」
「えっ、シオンでいいよ」
「駄目です。スカウトした物とされた物。ちゃんと、立場をわきまえませんと」
「そんなー」
ちょっとびっくりしたけど、スカウトを受けてもらえてよかった。
「アリアは私の一番弟子なのよ。サロンのホストの練習されているから。お客様の対応もうまくできるわ」
「そんな奥様。私なんてまだまだですわ」
「そんなことないわ。アリアは素敵なサロンのホストになれるわよ」
へぇー、そんなことをしていたんだ、アリア姉ちゃん。
僕なんて、このサロンに入ったことが無かったから知らなかった。
「シオンに幸せにしてもらいなさいね、アリア」
「はい!」
なんか、奥様もアリアも、とってもいい顔をしていた。
僕がスカウトすることで、こんなにいい笑顔を見れるなんて。
なんか良いことをした気分だなー。
「だが、断る!」
って言われてしまうかも、ですが。
↓で☆評価してもらえないでしょうか。。。。




