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第12話 漁師の親方の片想い

「まぁいい。早く昼飯を食え。その後、漁村に行くんだからな」


僕とロジャーの話に横から割り込んできた。


「えっ、漁村って、どこの漁村?」

「ん? シオンの友達かな」

「あ、俺、ジョン。昨日、シオンと仲良くなったんだ。漁師見習いをしているんだ」

「おっ、漁師見習いか。ちょうどいい。ジョンの知っている漁村にいくか」


あ、漁村に行くと言っても、どこでもよかったのね。

渡りに舟って奴だね。


「それがいいよ。俺の親方はすごいんだぞ。マグロ漁師だから。銛一本で、でっかいマグロを仕留めるんだからな」

「おおおーーー、マグロ! マグロが手に入るのか!」

「あー、それはどうかな。マグロが獲れたら仲買人が買っていくから」

「そうだよな。いきなり行ってマグロが買えるはずないよな」


マグロってなんだろう。

でっかい魚みたいだけど、うまいのかな。


「ね、ジョン。マグロって美味いの?」

「シオン、何言っているの? オーマのマグロだぞ。天下一品の魚の大王、オーマのマグロだぞ」

「うまいんだ! 食べてみたいな」


どんな味なんだろう。想像できないな。

僕が食べたことがあるのは、小さい魚を干したのだけ。

それを軽くあぶって食べたときは、すげーうまいと思ったけどな。

魚の大王っていうんだから、その何倍もうまいはず。


「もし、マグロが買い付けできたら、エイヒメの街で売りまくれるだが」

「エイヒメ? 駄目だよ。遠すぎる。マグロってすぐ腐るから無理だね」

「ふっふっふ。そうかな? 早馬で持っていけば1日だ。それなら大丈夫だろう」

「おいおい、マグロを早馬で運ぶのかい。面白いな、それ」

「獲れたてのマグロだったら、エイヒメ街の住民は驚くぞ」


なんか、ロジャーとジョンがマグロビジネスの話で盛り上がっている。

食べたことがない僕はいまいち、置いてきぼりされた感があるなぁ。


「あー、だけど。うちの親方、古い人だからいきなりマグロ売ってくれと言っても断られそうだな」

「うーん。普通の買い入れより1割高い値段でどうだ?」

「どうかな。それは親方に聞いてみて」


☆  ☆  ☆


「マグロは売れん! ずっと買い付けしている仲買人以外は売れん!」


あ、ちゃー。やっぱりなー。

親方の顔を見たとき、悪い予感がしたんだ。

がっちりした体形で日焼けした顔で、銀色の髪は5分刈りだ。

いかにも頑固親父って感じだ。


「値段なら少し高めでもいいですよ」

「ふざけんな! こちとら命がけでマグロを獲っているんだ。信用もない奴のために命かけられるか!」


僕とジョンは「駄目だこりゃ」って顔で見合った。

他の漁師を探さないといけないな。

それともマグロはあきらめて別の魚にするとか。


「うーん、困りましたね。もし、マグロを譲ってくれるなら、必要な物なら手配しますが、いかがでしょう」

「なんでも、いいのか?」

「えっ、もちろんです」

「それじゃ、パープルポーションはどうだ?」


いきなりパープルポーションが出てきてびっくりした。


「パープルポーション?」

「そうだ。パープルポーションを用意してくれるなら、考えないでもないぞ」


あ、なんかジョンが閃いたみたい。


「親方。もしかして、エレンの母ちゃんのために?」

「あー、お前の幼馴染の母ちゃんだろう? なんとかしてやりたくてな」

「ふふ。それだけかなー。本当かなー」

「バカ野郎! 大人をからかうとはふてえ奴だ」


あ、僕にも分かる。

真っ赤になって親方、エレンのお母さんが好きなんだ。


そういえば、エレンのお母さん綺麗だしな。

お父さんは死んじゃったって話だし。


「親方は独身なの?」

「お前も大人の話に口をはさむな!」


なんか面白い。

あんなに頑固な感じだったのに、エレンのお母さんの話になるとぐずぐずになる。


「パープルポーションですか。すぐには無理ですが、手配はできますよ」

「本当か!」


あー、親方見見ていると面白い。

表情が分かりやすく変わっていく。


「あ、でも親方。もう、パープルポーションはいらなくない?」

「なんでだ?」

「今朝、シオンが作ったパープルポーションでエレンの母ちゃん元気になったぞ」

「「なんだって!」」


あ、親方とロジャーがハモった。

そういえば、まだ、時空錬金の話をロジャーにしていなかった。


「と、いうことなのさ」


ジョンが分かりやすく説明してくれた。

僕って説明が下手だから助かるなー。


「なんと。エミリアの命の恩人なのか坊主は」

「えっと。まぁ、そうかな」


エミリアさんはエレナのお母さんだな、きっと。


「そうだよ、お前がいなかったら病気が悪化して大変なことになったかもしれない」

「そうだぞ、坊主。ワシからも礼を言うぞ」


うわっ、親方が頭をさげちゃった。

感謝されるのっていいね。


「あのー。では、パープルポーショんはいらないってことですね」

「ああ。もう必要ない」

「うーん。それじゃ他に必要な物ってあります?」

「何を言ってるんだ。必要な物なんてない。エミリアの恩人だぞ、この坊主は。恩人が頼んでいるのに、マグロを獲らないなんて恩知らずなことを言えるはずなかろう」


あれ?うまくいっちゃった。

よかったー。


「坊主のために、でっかいマグロ獲ってやるぞ。100㎏超えの立派な奴を」

「100㎏!」

「坊主は知らないんだな。マグロは魚の王様だ。でかいし、うまいし」

「そうだよ。俺達は魚の王様と戦っている漁師なんだよ」


なんか、ジョンも偉そうだなー。

胸を張っている姿って、親方そっくり。大きさが違うだけで。(笑)


「それじゃ、お願いできますか」

「もちろんだ。ただ、必ず獲れる物じゃないぞ」

「そうなんですか」

「まぁ、良くて10日に1回くらいしかマグロに遭遇しないからな」

「そんな可能性薄いんですか」


うーん、それは困った。

獲れるまで待っているというのもなー。

だからと言って他の街に商売に行っていたら、獲れた時に間に合わない。


「と、言いたいところだが。ワシは秘密のポイントを知っている」

「おー、さすが親方」

「お前も行ったことがない秘密のポイントだ」

「そこならマグロがいるんだよね」

「もちろんだ。絶対いる。そして絶対獲ってやる。100㎏超えのを」


おー、すごい。

トントン拍子に話が進むぞ。


「じゃあ、ちょっとお願い。僕も生きたマグロを見てみたいな」

「おー、いいぞ。恩人の坊主なら邪魔しなければ連れて行ってやるぞ」


おおー、海ででっかい魚を獲る!

これはとんでもない経験だー。


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― 新着の感想 ―
[一言] 中盤で 「あのー。では、パープルポーショんはいらないってことですね」 「ああ。もう必要ない」 とありますが、毎月一本はのパープルポーションを飲んでませんでした? それともこの漁師のおじさ…
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