第2話「巡回騎士」 6
「まいっちまいましたよ、住宅街を確認してたら変な女に追いかけられて」
「なんだと?まさか嗅ぎつかれてはいないだろうな?」
「いえいえ!ちゃんと撒きましたって!!」
数名の男達の中でも2名だけ態度が大きい、どうやらあの二人がリーダーのようだ。
「ふふふ、まさか地下から住宅街が攻撃されて甚大な被害が出るなど考えもするまい」
「ここは過去の弱者に対する搾取の証明のような場所…そこからの攻撃とは何とも皮肉だな」
リーダー達は下碑た笑いを浮かべた。
「民を搾取し膨れ上がった豚共など断罪されて当然」
「これは天が与えし罰なのだ、我らはその代行者に過ぎん」
「そうだ!俺たちは搾取されてるんだ!」
「これは報いだ!」
「血を流せ!!」
男達は富裕層に対する憎しみを持っている事が見て取れる。
「地下から二機のMAによる強襲、それによる破壊と殺戮」
「効果的な見せしめになるだろう」
そう薄笑いを浮かべる男達の後ろには二人の少女が控えていた。
質素だが特徴的な胸元の露出した服とクリスタル、間違いなくシヴュラだ。
どうやら連中はこの坑道から住宅街の地下へと侵入してMAによる破壊活動をするつもりのようだ。
そうなれば多数の死者と街に被害が出る事は想像に易い、そんな事を認める訳にはいかない。
アルスが怒りに拳を握り閉めると先にルーテシアが動いていた。
「そこまでだ!!!」
岩の影から飛び出し大声を上げて男達を威圧した。
「ん?」
連中もこちらに気が付き視線を向けて来た。
「貴様らの悪事、断じて許せん!全員役所に突き出してやる!」
「何者だ貴様!!」
「巡回騎士だ!大陸共通法に基づき成敗する!」
「巡回騎士ぃ?」
そう言うと男達は笑い出した。
「「「「がははははっ」」」」
すると男達は見下した視線でルーテシアを見た。
「巡回騎士って言えばお貴族様が身内に名誉を与える為のお飾り役職じゃねぇか」
「王族どもが民へのアピールで作ったリップサービスだ」
「そんなもんが実際に働くと思ってんのか?」
「大陸共通法自体が形だけじゃねーかよ」
口々にルーテシアを馬鹿にする男達。
その言葉にルーテシアは黙って耐えていた。
「そうなのか?」
「法で定められていますので事実として存在する役職であり権限もありますが、適切に運用されているかと言えば疑問はあるでしょう」
アルスの問いにリリウムはそう答えた。
「ルー…」
スーは黙り込むルーテシアを心配そうに見つめた。
「…言いたい事はそれだけか?」
「ああん?」
ルーテシアはそう言うと険しい表情で男達を見つめた。
「確かにお前達の言う事も事実だろう。しかし、わたしは任務を全うし正義を成す!例えお飾りと言われようとわたしはこの職をわたしに授けてくれた祖国と我が誇りを貫くのみ!」
ルーテシアは抜刀すると剣を向けた。
「ちっ!殺せ!!!」
男達はナイフを取り出して襲い掛かってきた。