第2話「巡回騎士」 3
アルスがルーテシアに誘拐されて暫く後。
「おっそーーーーーーーい!!!!!どこをほっつき歩いてるのよあのガキ!!!!」
プリンことプリシーラはアルスが戻ってこない事に激怒していた。
「時間を守らない男って最低よね!やっぱり甲斐性無しの変態鬼畜クソガキマスターだわ!」
怒り狂うプリシーラを見つつリリウムは椅子から立ち上がると扉へ向かった。
「マスターを探してきます。それではプリンさん、素敵な衣装をありがとうございました」
微調整が終わり真新しい衣装のリリウムは薄く笑うと扉を開けて出て行った。
「また来てねリリウムちゃん!次こそはもっとド派手で可愛いのを作っておくからね!」
彼女の言葉をどこまで聞いていたか分からないがリリウムは店を出ると歩き出した。
「どうしたのかしらマスター…」
リリウムが辺りを見回していると歩いてくる人影があった。
「も~困るなぁルーったら、すぐ目の前しか見えなくなっちゃうんだから」
その人物はぶつぶつと言いながら歩いていた。
「初めて来た街ではぐれたら大変なの分かってるはずなのに、どこかで誰かに迷惑を掛けてないと良いけど」
歩いているのは栗色の髪をシニヨンで纏めた少女だ。
外見的にはアルスやルーテシアと同じくらいのミドルティーンで、体は細くあまり起伏は見られない体形だ。
今は困った顔をしているがかなりの美少女である。
だが特徴的なのは纏っている衣装だろう、豪華な装飾が施され背中にはどこかの家紋だろう紋章が大きく描かれていた。
胸部上辺が露出した特徴的なデザインはリリウムと同じシヴュラ服の特徴である。
「ん?」
リリウムの近くまで歩いてきた少女は立ち止まると顔を上げて二人は無言で見つめ合った。
その頃、アルスとルーテシアは町を歩き回っていた。
泥棒探しではあるが、土地勘の無いルーテシアをアルスが案内している形だ。
アルスもそれ程街に詳しくはないので、殆どただの街歩きである。
傍から見れば若いカップルのデートに見えるかもしれない。
「ふん、まあまあ美味いじゃないか」
パン屋で買ったパンを千切って食べながらルーテシアは素直では無いが褒めていた。
アルスはリリウムの事が気になっているが、ルーテシアを置いて行く訳にもいかず内心で困っていた。
「(きっとあの店主にボロカス言われている気がする)」
アルスの勘も捨てたものでは無いらしい。
「店主よ、一つ訪ねたいのだが?」
「ええ、なんでしょう?」
「最近、泥棒や強盗なんかが起きていないか?」
「泥棒ですか?まあ、こんなご時世なんで小さい事件なんかはよくありますが大きい事件はそんなに…ああでも、最近この辺りを騒がせた山賊が退治されましたね」
「ほう?山賊が?」
「ええ、噂によると元傭兵のライダー・ナイトでMAを出してきたらしいんですよ」
「むぅ、そうなると甚大な被害が出たのではないのか?」
「いやそれがね、若いライダー・ナイトが現れて倒したらしいんですよ」
「成る程、そいつは中々に良い奴みたいだな」
「まだこの街に居るみたいですよ、私も会った事は無いですが」
「ふむ、覚えておこう」
「…」
目の前で自分の話がされていてこそばゆい感じがするが、名乗り出るのも面倒だ。
「泥棒、見つからないな」
「うーむ…この街は割と平和なようだからな、だからこそ悪漢は目立つはずだが」
会話しつつ二人は歩き出した。
「よし、ならば一度犯行現場へ戻るぞ!最初の場所こそ見落としがちなのだ」
「あーそっか、じゃあ俺はそろそろ」
「むっ!」
いい加減に帰りたいが彼女の批難の視線が痛くてそうも行かない。
結局、泥棒を見た場所まで行くことになってしまった。