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第2話「巡回騎士」 2

仕方が無いのでその辺をぶらぶらする事にしたが、行く当ては無い。

周りを見ながら当ても無く徘徊する。

路地を歩いているとその先の道を男が走って横切って行った。

フードで顔を隠した怪しい男だ。

「なんだ?」

アルスは気になりながらも深く考えずに路地を出ると声が聞こえた。

「待て!泥棒!!」

声に振り返ると共に何かが走ってぶつかってきた。

「おわっ!」

「うわっ!」

二人はぶつかり声を上げながら転倒した。


「痛ってぇ…なんなんどぅわっ!!!」

アルスが目を開けると目の前には尻があった。

正確には倒れたアルスの上にぶつかってきた人物が乗っているのだが、相手は短いスカートを穿いており、この位置からでは下着が丸見えである。

可愛らしい白い下着が目の前でフラフラ揺れており、アルスはどうしても見てしまう。

「(お尻大きいな)」

アルスがそんな失礼な事を考えているとその人物はようやく状況を理解したのかこちらを見ると素早く立ち上がって真っ赤になって怒り始めた。

「な!なん!!なんだお前は!!!痴漢か?!そうか、泥棒の仲間の悪漢だな!!おのれ許せん!!!」

相手はどうやら若い女性のようだ、見た所は10代でアルスとあまり変わらなさそうだ。

赤い髪を後ろで束ねたポニーテールという髪型だろう。

怒っている事もあるが少しキツめの印象を受ける顔だが中々の美人だ。

少女は腰に下げた剣に手を掛けいつでも抜刀出来そうだ。

「ちょ、ちょっと待って!誤解だ!」

「誤解だと?おのれ往生際も悪いとは益々許せん!命を奪おうとは思わんが手足の一本程度は覚悟しろ!」

少女は鞘から抜刀するとそのまま斬り掛かってきた。

「うわっ!」

意外にもその剣は鋭く、避けなければ斬られていただろう。

「むっ…わたしの剣を避けるとは、だが!」

少女は剣を構え直すと再度斬りかかってきた。

「ちょ!」

アルスは流石にたまらず抜刀して剣を受けた。

「ぐっ!」

「むむむ!」

剣を交えてつばぜり合うと少女が口を開いた。

「貴様、それなりに強いな…何故、悪漢に組する?」

「だから、誤解だって言ってるだろう」

「何?」

少女は後ろに下がると剣を収めた。

「どういう事だ?」

怪訝そうな顔をした少女にアルスは身の潔白を話し始めた。


「………そうか、それは大変すまなかった」

少女は納得したのかアルスに謝罪した。

「分かってくれたならまあ」

「し、しかし!わたしのその…下着を覗いたのは、じ、事実だからな!」

何とか文句を言いたいのか少女はこちらに非難の視線を向けて来た。

「だからそれも不可抗力というかさ」

「とにかくだ!泥棒を取り逃がしてしまった。早急に追わなければ」

「そう言えば何で泥棒なんか追っていたんだ?」

アルスの問いに少女はポケットから何かを取り出して見せて来た。

革で閉じられた包装を捲ると中には何やら書かれた紙のような物が挟まっていた。

「これは?」

「身分証だ!我が公国オースティンのな」

少女は腰に手を当てるとこう答えた。

「我が名はルーテシア・リオネール・ポー…公国に誉れ高き貴族ポー伯爵家の五女にして現在は巡回騎士の職にある」

どうやら彼女ルーテシアは貴族であり、それも名門のようだ。

「そうなんだ」

「なんだお前、我が家を知らんのか?全く帝国とは言え田舎者め」

「それで?その貴族様がなんで泥棒を追ってたんだよ?」

「無論、巡回騎士としての職務の為だ」

「巡回騎士?」

良く分からない単語が多くてアルスは困惑してばかりだ。

「それも知らんのか?腕はそこそこだが知識はまるで無いな…巡回騎士とは大陸共通法によって決められた国家の堺無く各地を巡回して悪人を捕らえ人々の生活を守る職務を帯びた者だ」

つまりどこでも活動する憲兵のようなものだろうとアルスは理解した。

「それで泥棒を追ってたのか」

「そうだ、この街には来たばかりで色々と見回っていた所で不審な動きの輩を見つけたので尾行したら裕福そうな家に忍び込もうとしているではないか!これは泥棒に違いないと追いかけたが逃げられてしまったのだ」

そう言うとルーテシアは落ち込んだのか下を向いてしまった。

「しかも追いかけるのに夢中で一緒に来たパートナーともはぐれてしまった…夢中になるとどうしてもその事に全力になってしまうというか何というか」

聞いていると色々と無茶な事が多いが困っているようだ。

年も近そうだしとても危なっかしい感じがして妙に放っておけない気になる少女だ。


そう考えているとガシッと急に腕を掴まれた。

「え?」

「…つだえ」

ルーテシアに腕を掴まれて呆けていると彼女はボソボソと何かを言っている。

「な、なに?」

「手伝え!お前のせいで取り逃したんだぞ!この街の事も分からんし…その、いいから手伝え!!じゃないと憲兵に突き出すぞ!!!」

「そんな滅茶苦茶な…」

ルーテシアは目じりを赤くして怒っているが何だか不安そうだ、確かに放っておけないとは思う。

「分かった、分かったけど人を待たせてるから少しま」

「そうか!話が早くて助かる!さあ、行くぞ!すぐ行くぞ!!」

そのまま彼女に引っ張られてしまう。

「ちょちょっと!だから用事が」

「泥棒、悪漢許すまじ!スーも探さなければならんしな!!」

ルーテシアは全く話を聞いていないようだ。

目の前の事に必死になると周りが見えないのは正しいらしい。

アルスは彼女に引きずられて行った。

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