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第2話「巡回騎士」 14

調整台の上に寝かされたリリウムは機材を取り付けられて何やら検査されていた。

「バイタルは安定してるし、怪我も無いみたいだし、うん、大丈夫そうだね」

問題は無かったようでリリウムは調整台から降りて立ち上がった。

「大丈夫みたいだね」

「はい、特に違和感もありませんし大丈夫です」

「相変わらず情報は読み取れないし、記憶も戻ってないみたいだけどね」

ベンは苦笑いをした。


「じゃあ、次はそちらの…お名前は?」

「…スーです」

スーは緊張しているのか少し硬い表情だ。

ベンは彼女に機材を取り付けると検査を始めた。

「なあ、リリウム」

「はい?」

ルーテシアはリリウムに話しかけた。

「スーから聞いたがお前は過去の事が分からないのか?」

「はい、戦闘に関する知識などは問題ないのですが自分の事となると全く思い出せないのです」

「…難儀だな」

「いいえ、今はマスターが居てくれます。私にはそれだけで充分なのです」

リリウムは微笑みながらそう返した。

「そうか…」

対するルーテシアは複雑な表情だ。


「よし、バイタルは安定してるみたいだし、エネルギーセルも…ん?」

ベンは何かあったのか首を傾げた。

「どうしたんです?」

アルスが訪ねるとベンは答えた。

「いや、聞いた名前と記録されてる名前が違ってるみたいでねえっと…」

「あ、ちょっと待て!」

ベンが読み上げようとするのに気づいたルーテシアが静止しようとするがリリウムとの会話で遅れてしまった。

「えー、ド…ドドスコイ」

「え?」


あまりの予想外さにその場が固まった。

「え?なに?ドス?」

「ドドスコイって記録されてるね」

ベンが再度読み上げるとスーはがばっ!と起き上がると顔を押さえて泣き始めた。

「ひ、酷いです…2回も読むなんて」

シクシクと泣く彼女にアルスは驚いて硬直しベンも困っていた。

「あの、どういう?」

アルスはルーテシアに説明を求めた。

「まあその、個性があり過ぎる名前なのでな…いつもこう愛称としてスーと呼んでいるんだ」

「いや、それにしてもドドスコイって」

「酷い!!3回も呼ぶなんて!!」

ドドスコイことスーは更に泣いてしまった。

聡明で礼儀正しい彼女がこんな事でここまで冷静さを失うのは予想外過ぎた。

「ああ、分かったぞ!彼女はボンバイエンタール卿の作か!」

ベンは合点がいったようだがアルスには益々分からない。

「ボ、ボンバイエ?」

「そうだ、スーはかのボンバイエンタール卿の作られたシヴュラだ」

「エクスプロード・ボンバイエンタール卿…非常に高名なシヴュラ・プロデューサーさ。高性能で扱いやすく美しいシヴュラを生み出し、その多くは名立たる騎士や王侯貴族に仕えている。ライダー・ナイトなら誰もが憧れるブランド品みたいなものさ」

「じゃあスーはそのボンバイエさんの」

「そのようだね、しかし一つだけ彼には問題があってね…まあ、そのネーミングセンスが独特でね」

ベンは困った顔をして話を続ける。

「シヴュラの名は作成者が着け、それは通常変える事は出来ない、だからシヴュラはマスターが変わっても名前は一生変わらないんだけど」

「ああ、だからずっとドドスコイを変えられないと」

「4回も言ったぁ!!!びえーーーん!!!!!」

アルスの不用意な言葉でついにスーはすすり泣きからガチ泣きになってしまった。

どうやら彼女にとって本名は相当のコンプレックスのようだ。

「おいアルスどうにかしろ!こうなると泣き止ませるのは大変なんだぞ!」

「ええっ!そんなこと言われても!」

こんなに泣きじゃくる女の子をどうしろと言うのか?

「あーでもさ、MAの名前はカッコいいじゃないか!スカーレット・ルージュだっけ?それはスーが着けたんだろ?」

「違いますぅーーー!!!あれはお父様ですーーー!!!それなのにどうして私はこんな…こんな………びえーーー!!!」

「ええー…」

どうやら酷いのはシヴュラの名前のセンスだけのようだ。

リリウムが「まあまあ落ち着いて」と宥めているが泣き止みそうもない。

「ハロー!!リリウムちゃん!ベンさんの所に行ってるって聞いてプリンちゃんがやって来たわよー!新しい服の調子はどうかし…え?どうなってんの???」

また間の悪い来客、シヴュラ服屋の店主であるプリンことプリシーラがやってきた。

相変わらず目が痛くなる色使いの服を着ていてげんなりする。

「んまーーー!!!またこの男がシヴュラちゃんを泣かせているわ!!!なんて酷いクソガキなのかしら!!!この最低鬼畜甲斐性無しのド変態犯罪者マスター!!!!!」

プリシーラはアルスを指差すと暴言を吐いてキーキーと喚き始める。

「もう勘弁してくれ…」

アルスは全てに嫌気がさし、天を仰いで脱力した。


クトーナ役所内 牢獄

「おい、取り調べの時間だぞ…ん?」

看守の男が牢獄の扉を開けて中に入ると違和感に気づいた。

「こ、これは!」

中では昨日捕まった男がシャツで首を吊って死んでいた。

しかし、その死の形相は何かに怯えていたのか安らかとは言えないものだった。

時を同じくして別室に監禁されていた男のパートナーであったシヴュラも姿を消していた。


2話 終

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