第2話「巡回騎士」 13
翌日、宿が朝から騒がしいので起きてしまったアルスが部屋を出ると新しい入居者と鉢合わせした。
「えっ?ルーテシア!それにスー!」
そこには見知った二人の少女が荷物を運んでいた。
「ああ、アルス様。おはようございます」
スーはいつも通り礼儀正しく会釈した。
「お、おうアルス!奇遇だな!お前もこの宿なのか!」
ルーテシアはいかにも偶然という風に大げさに振舞った。
「この街での宿を探していたのだが、たまたま見つけた宿にお前が居るとはいやいや!偶然とは恐ろしいな!!!」
やたら偶然を強調しているのが何とも怪しい。
「何を言っているのルー?昨日リリウムにどこに泊まっているか聞けって言ったのはルーじゃない」
「おいスー!何を言っている!!…ち、違うぞ!わたしは何も聞いていないぞ!!」
「はいはい、そうでしたね」
赤くなって怒るルーテシアにスーは少し呆れ気味に返した。
「という訳で私たちもこちらに泊まりますので宜しくお願いしますね」
「ああ、うん」
その様子をリリウムはアルスの隣の部屋からドアを少し開けてニコニコしながら見ていた。
荷物を置いた彼女たちをアルスはベンの所へ案内していた。
この街では唯一のシヴュラ屋なので彼女たちもお世話になるだろう事と、一応戦闘をしたのでリリウムのチェックに呼ばれたからだ。
「やあ、いらっしゃい。多分問題無いと思うけど一応チェックだけはしておこうか」
出迎えたベンはそう言うとルーテシアたちに視線を向けた。
「どうも、僕はベンと言います。お話は伺っています。オースティンの騎士ポー卿」
ベンはそう言うと深々しく頭を下げた。
「うむ、世話になるぞベン殿」
ルーテシアもそれが当然という態度だ。
「そんなに畏まる必要あるんですか?」
アルスはそう疑問を投げかけた。
「君ね、オースティンのポー家と言えばシヴュラに関わる者なら当然知っているよ…オースティン公国成立時から大公家に仕える古参の名門だし、30年前の帝国と今のルッツ連邦、旧通商連合との戦いにおいては帝国側に援軍として参戦し、帝国十三騎士と共に戦って武勇を示した英雄だよ」
「はぁ」
よく分からないがルーテシアは凄い貴族の娘らしい。
だが、それがそんなに畏まることなんだろうか?
「良いのだ、むしろその方がやり易い」
「そうですか?まあ、失礼で無いなら」
ベンは全員を店内へ招き入れた。




