第2話「巡回騎士」 11
その頃、スカーレット・ルージュともう一体のファング・ドッグの戦いも決着しようとしていた。
重量武器同士の火花が散る程の打ち合いが続いていたが、ルーテシアは大きく後ろに下がって距離を取った。
「合図したら突っ込む!ブースト行けるな!」
「はいマスター!いつでも!」
「よし、カウント…3…2…1」
勝負を決めるべく突進するスカーレット・ルージュに対して相手は武器の大斧を大きく振り上げて迎撃の構えだ。
「今だ!ブーストアップ!」
「はい!」
するとスカーレット・ルージュの背中にある噴射口からエネルギーのようなものが放出されて機体は一気に加速した。
その急加速は敵に取っては予想外だったらしく反応が遅れた。
「行っけぇええ!!!」
加速の勢いのままに突き出されたハルバードは敵MAの腹部に突き刺さるとそのまま貫通して背中まで貫いた。
胴体を貫かれたファング・ドッグは火花を散らして爆発すると膝から崩れ落ちて実体化が解除された。
すると地面にはダメージを負ったライダー・ナイトとシヴュラが倒れていた。
「ふぅ…」
戦いに勝利したルーテシアは軽くため息を吐いた。
「ルー、お疲れ様でした」
「ああ、スーもな」
戦闘が終了した所で街の方から二体のMAが向かって来ていた。
「あれは?」
「ジグムント帝国の量産タイプ、ロチェスター、総合バランスに優れた機体です。恐らくは街の警備隊と思われます」
リリウムはMAを認識するといつものように情報を教えてくれた。
やや細身なくすんだ銀色の機体は盾と長槍を構えていた。
「今更来られてもなぁ…」
もう決着は着いているし、遅い対応にアルスは少し呆れた様子だ。
「聞こえるか!こちらはクトーナ警備隊だ!状況の説明を願いたい!!」
警備隊のロチェスターからこちらに通信が送られてきた。
「どうする?ルーテシア」
「こいつらの聴取の為にどうせ引き渡さなければならんからな、説明をしよう」
こうしてアルスの2度目の実戦は終わった。
少し離れた場所でその戦いを監視していた人影。
それはシュヴァルツェンベルグ侯爵の臣下である青年ヨハン・バルツァーであった。
「ふっ、こう早くも2度目のMA戦、それもオースティンの騎士と接触してテロリストを見つけ出すとはな…余程の幸運かむしろ悪運と言うべきか」
ヨハンは双眼鏡を降ろすと踵を返した。
「しかし、ポー家の者と接触したのは予想外だな。予定より早く俺も接触するべきか…」
ヨハンは考えを巡らせながらその場を離れた。