第33話:見据えた先に‥
ボコボコだった。
圧勝。
在夢:「ひ、酷いよぉ」
宇田:
「次またしようとしたら
今度は容赦ないぞ。
………ウダッ」
あれで
手加減してたんだ‥
在夢:
「うう……そろそろ
元の兄貴に戻って
くれませんかねぇ?」
宇田:「兄貴?」
在夢:
「直弥さんにですよぉ」
宇田:「俺はただの
さすらいの宇田だ。
それ以上でもそれ以下の
宇田でもない」
それ以下の宇田って
何だろう‥‥
在夢:「今日のところは
一時撤退するしか
ないようですねぇ。
というわけで
理人君さらばっ!」
そう言い残すと
在夢さんは向こうに
走り去ってしまった。
宇田:
「俺はさすらいの宇田。
またさすらうか‥」
理人:「あ、じゃあね
直弥‥」
…しまった!
今は直弥じゃ
なかったんだった!
宇田:「………」
理人:「………」
宇田:「宇田最高ぉ!
ひゃっほーーっ!!」
そして駆け出す。
まあ……一件落着。
ヴェル:
「ベリーサプライズ
でした‥‥」
理人:「日本人目線でも
サプライズだよ‥」
寮
理人:「……(ヴェルは
僕たちと居て楽しく
なるのかな?)」
雅紀:「ふー、
あっちぃあっちぃ」
首からタオルを提げた
雅紀が戻ってきた。
理人:
「おかえり、雅紀。
お湯加減どうだった?」
雅紀:「それがよー。
風呂場新装してたぜ」
理人:「そうなの?」
雅紀:「おう。
それがもう異様なほど
熱くてよ。
ほら、皮膚が
焼き爛れたみたいだぜ」
理人:「雅紀それ
本当にお風呂!?」
雅紀:「そうあることを
願うしかねえな」
直弥:「ふー、
いい湯だったな」
直弥が左腕に包帯を
まきながら帰ってきた。
理人:「直弥!
どうしたのその包帯!」
直弥:「どうしたのって…
風呂しかねえだろ?」
理人:
「だから何でさ!?」
要:「はー、はー、はー」
突然息を荒くしながら
要が部屋に入ってきた。
要:「お前たち…
逃げるんだ」
理人:
「何があったの?」
要:「風呂が反旗を
翻したんだ。
もうじき世界は
やつらに支配
されてしまう‥」
理人:「もう…
訳わかんないよ‥‥」
今日は寝よう。
色々と疲れた。
馬鹿3人のせいで
余計に‥‥
翌日
理人:「……」
テレビに僕は
釘付けだった。
これは‥‥
テレビ:
[日本時間
18時50分頃、
ヨーロッパに位置する
カヤマ諸島を中心とした
大規模な紛争が
発生しました。
この諸島には他に
ムス、ヘブラン、
ソシエ、ラグナス共和国
が巻き込まれている
模様です。
WSWは次の‥‥]
ラグナス共和国…
まさか、ヴェルの…
………もしヴェルが
このニュースを見たら。
もしヴェルが向こうに
帰らなければ
いけなくなったら。
もしヴェルが向こうに
行って‥‥‥
様々な思いが
頭をよぎる。
最悪の事態……
ヴェルが、死ぬ。
理人:
「直弥!、雅紀!
先に学校行ってるね!」
急ぎのあまり
ドアをバンッ!、と
思いきり閉めた。
直弥:「ん、どうしたんだ
理人のやつ」
雅紀:「さあ?」
女子寮
本当は男子禁制
なんだけど……
なりふり構って
いられないや。
コンコンッ。
動揺を隠すために
軽くノックをする。
理人:
「ヴェル、起きてる?」
ヴェル:「はい?
おはようございます」
理人:「ニュースは
まだ見てないよね?」
ヴェル:「ニュース?」
理人:「知らないなら
いいんだ」
ヴェル:「はあ……
そうだ、リヒトさん!」
理人:「どうしたの?」
ヴェル:「私決めました!
ウィアスターズに
入りますっ!」
理人:「本当に!
じゃあ学校で直弥に‥」
直弥から
漏れないだろうか?
ヴェル:
「…リヒトさん?」
理人:「あ、ううん。
何でもないよ。
直弥には僕から
伝えておくから」
ヴェル:「はいっ!
これで私たち
グッドフレンドですね」
理人:「悩み事とか
あったら相談してね」
ヴェル:「はいっ!
それじゃあちょっと
早いですが学校に
行きましょうか」
理人:「うん」
ドアが開きっぱなし
だからちょっと中を
見たけど、
ヴェルはまだ引っ越して
きたばかりだから
部屋にはまだヴェルしか
いなくて、家具も
ベッドや机しか
置いてなかった。
ヴェル:「ん〜
悩み事と言いますと
ルームメートですかね」
理人:
「まだ誰もいないから
寂しいんじゃない?」
ヴェル:
「そうなんですよ。
だから今ルームメート
募集中です」
学校
ヴェル:
「グッドモーニング!」
未頼:「おはよう
ヴェルちゃん」
炎:「…おはよう」
在夢:「おっはー!
今日も絶好調だねぇ〜」
舞風:
「おはようヴェル君。
ウィアスターズに
入ったんだな」
理人:
「なんでそれを
舞風さんが!?」
あんな朝っぱらから
舞風さんが近くに
いたのか?
舞風:「なーに。
ヴェル君の部屋に
つけてある盗撮…」
急に口がこもる。
しかも顔に冷や汗
がついてる!
何か今盗撮って
聞こえたような‥‥
雅紀:「おっす、北神」
ヴェル:「ヴェルで
いいですよ」
雅紀:
「じゃあヴェル」
ヴェル:「OKですっ!」
ピースをする。
雅紀:「惚れたっ!」
理人:「雅紀!?」
要:
「今日も良い天気だ!」
ヴェル:
「スルー
されました!?」
直弥:「おはよう諸君」
理人:
「朝はちゃんとした
挨拶ができなかったね。
おはよう直弥」
直弥:「理人、
あとで話がある」
在夢:「おっと〜!!
直弥さんから理人君への
告白タイムか〜?」
理人:「違うよっ!」
直弥:「そうだ」
理人:「そうなの!?」
直弥:「冗談だ。
俺たちはすぐ戻って
くるから適当に
話しててくれ」
その後、僕たちが
いなくなった教室では
お喋りタイムが始まり‥
ヴェル:「なので
ルームメートを募集
しているんですよ」
要:「なら問題はない」
ヴェル:「ふぅ?」
要:「俺がいる」
舞風:「何!?」
ヴェル:「えーと…
お気持ちは嬉しいの
ですが‥‥」
要:「問題ない」
ヴェル:「寮の規則も
ありますし‥‥」
要:「問題ない」
舞風:「どうやら。
君を懲らしめる日が
ついに来たようだ」
要:「懲らしめる?」
舞風:「貴様には
《死》あるのみだ」
要:「はっはっはっ。
かかってこーい!」
何故か笑う要。
未頼:「あれ?
でもしーちゃんは
要君とはルールで
闘えないんじゃ
ないの〜?」
舞風:「未頼君。
順位は日に日に変化
するものだよ。
今私は3位だ」
未頼:「じゃあ
オッケーだね〜」
FIGHT!
要:「俺の武器は……
納豆!?」
舞風:「私は
アサルトライフルだ」
要:「そんなものが
混じっているのか‥」
舞風:「私が前
仕込んでおいたのだよ」
《北神 ヴェルロッサ》
[きたかみ
ヴェルロッサ]
ひときわ小さい
帰国子女で、
時折英語がまじる。
祖父母ゆずりの
日本好きで、
ラグナス共和国出身。
(現実には存在せず)
料理が得意で
未頼と意気投合する。