第29話:リトルハーフ
《……》
の部分は、
ゆっくり読んで
くださると、
良いと思います
朝礼
先生:「ええとだな。
もう知ってる者も
いるかと思うが、
転入生がこのクラスに
来たぞ」
ヴェル:「……
き、北神ヴェルロッサ
ですっ!
しゅ、趣味は
誰かの遊び道具になる
ことですっ!‥‥」
一同:「……え?」
クラス全員の脳裏に、
聞き間違えか?
、と疑問符が浮かぶ。
ヴェル:「…と、
直弥さんに言えと
言われました‥‥」
一同:「じ〜〜‥‥」
クラスの視線が直弥に
集中する。
ヴェル:「言えば、
楽しいことが待っている
、とも言われました」
理人:「な、直弥?」
直弥:「……ゴソゴソ‥」
宇田:「ウダッ!」
理人:「逃げない
でねっ!!」
不穏な雰囲気の中、
クラスに新しい仲間が
増えた……
1時限目後
女子生徒:「北神さんて
どこ出身?」
女子生徒:「ねぇ、
あとで校内を説明して
あげよっか?」
女子生徒:「どんな風に
呼んでほしいとかある?」
女子生徒:「あのバカ兄
が変なことしようと
してきたら、容赦なく
私か舞風を呼ぶんだぞ」
直弥:「こらっ、炎!
なにちゃっかり
〈女子生徒〉
として登場してんだ」
炎:「時にはアリだろ?」
直弥:「まあな」
簡単に納得しちゃった!
要:「直弥。
いくらお前でも
北神に何か不埒なことを
しようとするならば…」
直弥:「しねえよ!
何で俺だけそんなに警戒
されなきゃ
いけねえんだよ!」
理人:「朝のヴェルの
言動に問題ありでしょ」
直弥:「俺は別にヴェルに
あんなことやこんなこと
をしようってわけじゃ
ねえだろ!」
炎:「舞風ー!」
バンッ!
突然教室の掃除ロッカー
が開けられ、中から
人が出てきた。
舞風:「直弥とやら。
それは不届きな発言だな」
雅紀:「うおっ!
どっからわいて
でたんだよ!?」
舞風:「失敬だな。
まずは貴様からだ。
私を虫扱いした
ことについて、
みっちり、ぎっしり、
むふふ、と
断罪してやろう」
直弥:「最後のむふふって
何だよ‥‥」
舞風:「ヴェル君。
……むふふ♪」
舞風さんのヴェルに
対するその発言は、
誰もが《危険》と
感じた…
炎:「舞風から離れろぉ!」
未頼:「わわわ、
ヴェルちゃん逃げて〜!」
要:「喝っ!
故時や北神は俺が
守り抜いてみせるぞ!」
在夢:「わ〜おぅぅ!
姉貴の理性がここで
ついに崩壊かぁぁ!?」
舞風:「貴様ら…
……………斬るぞ」
そう言い放ったときの
舞風さんの表情は今でも
忘れられない‥‥
理人:「…そ、そうだ!
ヴェルもこの学校に来て
まだ音楽室とか
どこにあるのか
わからないでしょ?
案内してあげるよ」
ヴェル:「は、はい!…」
何よりもまずは、
ヴェルをあそこから
遠ざけないと。
最悪、トラウマになる‥
舞風:「…ほんの冗談
だったんだがな」
在夢:「そう
聞こえないのが、
姉貴らしさですよ‥」
廊下
理人:「…で、ここが
家庭科室で、
横が調理室だよ」
ヴェル:「ふんふん」
理人:「これでこの階の
案内は全部だよ」
ヴェル:「ありがとう
ございます、
リヒトさん」
理人:「あ、さん付け
なんだ」
ヴェル:「やっぱり
ほとんど初対面の人に
むかって呼び捨てもどうかと思ったんです」
理人:「そっか……
それにしても日本語
上手だね。どこかで
習ってたの?」
ヴェル:「おじい様と
おばあ様が私が幼少の頃
から少しずつ教えて
くれたのです。
それで日本が好きに
なっちゃいました」
理人:「そう、それは
良かった。
でもカルチャーショック
とかないの?」
ヴェル:「私はほとんど
家から出たことがなくて
、家の中は日本の様式と
あまり変わらないように
おじい様が設計して
くれたのです。
ですから、特別、
カルチャーショックはないのです」
理人:「学校は
どうしてたの?」
ヴェル:「通信教育です」
理人:「あれって本当に
頭良くなるの?」
ヴェル:「使い方
次第ですね」
理人:「そうなんだ‥」
ヴェル:「……この学校
には、動物はいますか?」
理人:「ああ……
高校ってそういう
農業の学校じゃない限り
あんまり動物は
いないんだよ」
ヴェル:
「そうなんですか‥」
落ち込んだように
視線を下にさげる。
理人:「…あっ、でも
炎ならどこかで飼ってる
かもしれないよ」
ヴェル:「炎さんですか?」
理人:「うん。
炎も動物が好きなんだよ」
ヴェル:「そうだったん
ですか!
それじゃあ昼休みに
1年生の教室に
行ってきますね」
理人:「あ、それなら
行かなくてもいいよ。
炎の方からいつも
来てくれるからさ」
ヴェル:「昼休みが
楽しみです〜!」
理人:「ねえ直弥」
直弥:「どうした理人」
理人:「あの仮面さ。
どこに入れてるの?」
直弥:「俺に不可能は
ないぜっ!」
理人:「そんなあっさり
片付けられる問題じゃ
ないんだけどね‥」