第25話:黒く輝く白い石
ゆ、油断も隙も
あったものじゃない…
要注意人物だ、やっぱり。
ヴェル:「じゃあ
私はまた逃げますね〜!」
理人:「あ、ヴェル!」
あっさり逃げられて
しまった‥
10時30分頃…
カンッ、カンッ、
カラカラ‥‥
缶が階段から転がり
落ちていく音がする‥
もう何回蹴られたこと
だろうか‥
うん。4回は蹴られた。
舞風さんにはあっさり
蹴られ、
炎の連れてきた猫には
どこかに持っていかれ、
要には普通に蹴られて、
雅紀は直弥の仕掛けた
罠に間違って
引っかかって階段から
転倒、
直弥は廊下の壁に、
煙が出る仕掛けを施して
床を見えないようにして
目の前で堂々と倒され、
雅紀は何もないところで
倒れて失神しかけて……
今、缶は3階に転がって
いってしまった。
ここは確か‥‥
理人:「…誰かいるの
かな」
ひとまず、走らずに
缶を探す。
……あった。
執行部室前だ。
理人:「(ゆっくり、
ゆっくり‥)」
もうちょっと…
というところで横の
執行部室から何か声が
聞こえる。
悪い気もするが、
気になるので聞き耳を
たてる。
?:「…であんたがこれを
持ってるの?」
?:「何のことかしら?」
?:「それは私と…」
?:「私と…誰かしら?」
?:「…お姉ちゃん?」
?:「…なのかもね」
?:「…そういえば
ちゃんと名前を聞いた
ことがなかったね」
?:「白石天海。
もう何度か言ったはず
だけど?」
?:「白石天海…
……白石…黒輝」
?:「…聞いてるんじゃ
ないかしら。
あなたには、姉が
いることを」
?:「白石天海…
黒輝在夢…
…じゃ、じゃあ本当に?」
?:「ええ。
私があなたの姉よ。
憎むべきね」
な、なんか凄い雰囲気だ。
この声は話からして
白石さんと在夢さんだ。
さっきから聞いてるけど
まだ意味がわからな‥
白石:「何をしているの!
…あなたは水無月理人!」
理人:「や、やあ‥」
部屋の中では在夢さんが
長いテーブルに顔を
俯いているのが確認
できた。
在夢:「…理人君?」
理人:「こんばんは、
在夢さん」
白石:「あなた、まさか
盗み聞きをしてたの!?」
理人:「え、いや、
その……
た、たまたま忘れ物を
取りに横を歩いていた
だけだよ」
これで騙せるとは
思えないけど、ひとまず
はこれで‥‥
ビビビビビビ!!
近くから受信機の音が
鳴り響く。
白石さんも驚いてその音
の正体を確かめようと
振り向く。
直弥:「……あ」
最悪だ‥‥
直弥が絡んでいると
わかったら、
きっと白石さんは…
…ほら、眉間にシワが
寄ってきてる。
白石:「あなたたちは…」
直弥:「よお!
久しぶりだな」
そんなこと言ってる
場合じゃない
のにさぁぁ!
在夢:「に、逃げる!」
在夢さんが白石さんの
隙をついて逃げる。
白石:「あ、こら!
黒輝在夢!」
直弥:「理人。
いまのうちだ、
逃げるぞ!」
直弥が僕の手をとる。
理人:「え、直弥!?」
白石:「っ!
あなたたちも!」
直弥が通信機を取り出す。
直弥:「みんなよく聞け。
緊急事態が発生した!
直ちに学校から脱出
するんだ!」
僕は直弥を改めて
リーダーだと認識した。
直弥:「理人もほらっ!」
理人:「う、うん」
振り返ってみると
白石さんは追いかける
気配を見せず、
ただただ、手を
組んでいた。