第13話:瞬速の風
別れを告げて僕たちは
部屋に戻っていった。
朝
理人:「ふわ〜あ…
…おはよう、直弥」
直弥:「おはよう、理人」
理人:「雅紀は
やっぱり…これ?」
指でバツ印をつくる。
直弥:「いや、大丈夫
だったみたいだぜ。
玄関にいつのまにか
いたんだ」
理人:「え?」
ドアの傍に雅紀は
寄りかかっていた。
直弥:「誰かがあの後、
ここまで運び込んで
くれたらしい」
理人:「よかった〜」
直弥:「…雅紀!
朝だぞ。起きろ」
雅紀:「zzz‥」
理人:「起きないね」
直弥:「しょうがねえな。
……理人、ちょっと
待ってろ」
そういうと直弥は
押し入れの中から何かを探した。
直弥:「ふ〜ん、
ふふ〜ん、ふ〜、
ふふふ〜ん…っと!
あったあった」
ベートーベンの鼻歌を
歌いながら直弥は何かを見つけたみたいだ。
理人:「直弥、
それは何?」
直弥:「じゃじゃじゃ
じゃっじゃじゃ〜ん!
〈エイの缶詰〉〜
(未開封)」
理人:「エ、エイ?」
直弥:「知ってるか?
くさやっていう
臭い魚あるだろ。
あんなの目じゃない
くらいの臭さを持つのが
このエイの缶詰さ!」
理人:「それを
匂わせるの?」
直弥:「まあちょっと
見てな…
…開けるぞ」
雅紀:「zzz……!
のわぁぁぁぁ!
臭い!」
直弥:「やっと起きたか」
理人:「本当に
酷い匂いだね」
鼻をつまむしか
なかった。
雅紀:「もうちょっと
優しい起こし方に
してくれよ!」
直弥:「(無視)
ほら、急ぐぞ!」
雅紀:「…にしても
何か体中が痛えな」
理人:「昨日のこと
覚えてないの?」
雅紀:「あ?
何のことだ」
本当に炎の
言うとおりだ。
忘れてるや。
まあ、それはそれで
良しってことで‥
学校
未頼:「おはよう
ございます〜、皆さん」
理人:「未頼さん
おはよう」
雅紀:「おっす!」
直弥:「おう」
要:「やっと来たな」
直弥:「ん、どうした?」
要:「俺の友人を紹介
したい。
図書室で知り合った
んだ。」
直弥:「図書室で
出会いなんて
あるのか?」
要:「同じ本をとろうと
してたんだ」
まあ有り得るかも‥
直弥:「そいつは今
どこにいるんだ?」
要:「色々と忙しい
らしくてな。
放課後まで待ってくれ」
理人:「その人は
どんな人なの?」
要:「第一印象は捨てろ。
それだけだ」
理人:「どういう
こと?」
要:「会ったらわかるさ」
理人:「……」
休憩時間
雅紀と一緒に僕は
廊下を歩いていた。
雅紀:「なあ、理人。
何して遊ぶ?」
理人:「久しぶりに
フリスピーでも
してみよっか」
雅紀:「でもあの円盤
っぽいのがないぜ?」
理人:「探してみよう」
雅紀:「なら、
いいのがあるぜ。
これなんてどうだ」
雅紀が取り出したのは
ポリバケツのふただった。
なんで直弥みたいに
どこからともなく
そんなものが
出てくるのさ‥
雅紀:「いっくぜ〜!」
理人:「え、ちょっと
待った!ここ廊下だから」
雅紀:「うおりゃー!」
駄目だ、雅紀は
止まらない。
?:「危ないな‥」
急に飛び出したその影は、ポリバケツのふた
をいともたやすく
とめてしまった。
?:「こんなところで
フリスピーなど、
危ないぞ?」
理人:「え、あ、はい。
すみません‥」
?:「わかればいいんだ。
では私は急いで
いるのでな」
その人はふたを僕に
返すと、走っていって
視界からすぐ消えて
しまった。
雅紀:「なんだあいつ?」
理人:「さあ?
それより、あれを
フリスピーとわかるのが不思議だよ」
放課後
直弥:「要!
時が来たぞ」
要:「じゃあ紹介しよう。
この人だ」
要の後ろからその人は
前に出てきた。
舞風:「《舞風》と
いう者だ。
よろしく頼…ん?」
理人:「あ、さっきの!」
直弥:「何だ理人、
もう会っていたのか」
舞風:「そうか、君が
宮島君の言っていた
少年か」
要と舞風の出会うまで
図書室
要:「ウィアスターズを
支えているのが
俺だということを雅紀に
思いしらさねば…
…お、やっと第6話の本が
返ってきたな」
要がその本に手を
のばしたとき、
要は何かを感じた。
要:「…っ!
何だ、一瞬殺気を
感じた‥」
気のせいだろうと
要が再び本をとろうと
したとき‥
要:「ん?」
舞風:「ん?」
………
………
要:「(殺気の正体は
これか!)」
舞風:「(この男、
やる)」
要&舞風:
「(気を抜いたら、
死ぬ!)」
これが〈出会い〉です。
理人:「ここから
どう発展したら
友達になれるんだろう‥」




