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名無しから伯爵へ



「それでは叙爵者、前へ」


檀上の上で、威厳と威圧感に満ちた初老の男性がこちらを向き、俺にそう告げる。


こんな華美な式を執り行われることに、正直実感はないが……

叙爵者である俺はその指示に従って席を立ち、壇上の男性の元へと向かった。


その途中、背中から期待・羨望・願望・思慕……

そういったものが込められた視線が感じられた。


様々な重圧に耐えながら壇上までたどり着き、事前に教えられた通りにそこで跪くと、初老の男は両手で大きな印を手に取ると、式場に居る皆を相手にするように、厳かに語り始めた。


「今この時をもって、偉大なる9柱の大精霊とゼロニアスの名において、新たなる兄弟にサイランド伯の爵位を叙爵する!

 この奇跡の出会いが、新たなる時代の繁栄の礎とならんことを!!」


そして、手に持った印を俺の方に差し出してきたので、俺はまたも先ほど指示された通りにその印を受け取って一礼をし、立ち上がって後ろを振り向き印を高く掲げた。



―――わぁぁぁァァァッ……(パチパチパチ)


すると、途端に貴賓席からはまばらな拍手が……

そして客席の方からは、それがかき消されてしまいそうな勢いの黄色い歓喜の声援が響いた。


(俺、どう考えても、伯爵なんてガラじゃないよな……?)


一層強くなった重圧で、ついそんな事を考えてしまう。

なにしろ、こちとら貴族の生まれどころか、数日前まで何も持たない、文字通りの何者でもない存在だったのだから……



そんな俺が、どうしていきなり伯爵になってしまったのかと言えば、目の前にある光景そのものが、その問いに対するある意味の答えだともいえる。



壇の下で、静かに拍手を送ってくれているのは、本来の叙爵式の時期から外れているため、少しばかり数が少ないが皆パリッとした正装で身を固めた俺と同じ各地の領主達……


皆若く、各々違いはあるが衣装や体格から、全員間違いなく男性だと断言できる。


それに対して、そこから大きく離れた観客席で声援を送ってくれているのは……


新しい領主の顔を一目見ようと、やれ押すなとばかりにみっしりと集まった、各々異なる見た目や服装をした一般人と思われる女性たち……


貴賓席に女性はおらず、一般席には男性がいない。


正式に叙爵する事が出来るのは男性だけ……ではあるが、式典に平民の男性が参加できないと言う訳ではない。


これは、この国……いや、この世界が抱える根本的な問題そのものにして……


何も持たない存在であったはずの俺が領主となる事が出来た、唯一にして最大の理由なのだから。


忘れないようにとわかりやすいように、次回からあとがきに現時点での成果等をつけておきます。

ステータスとかシステムメッセージとかは、登場人物にわからないように書かないと雰囲気が台無しになるからね

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