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プラネットクロニクル ーある日々の物語ー  作者: 月光皇帝
ある日々の出来事(時系列はぐちゃぐちゃなのです)
7/16

ある日々その5:悪を断つ刃なり!!

今回は主人公を†黒悪魔†さんに担当してもらうお話です。


このゲーム『プラネットクロニクル』はオンラインVRMMORPGである。全国各地にいるエクスゼウスを愛する信者からゲーム大好きな人、実況者に至るまでたくさんの人がそれぞれの目的や楽しみ方を持ってプレイしている。



純粋にゲームとして楽しむ人もいれば、モンスターと戦うという非現実的な日常を楽しむ人、生産ジョブにて自分が思い描く作品を作る人もいれば、噂によると、現実で身体にハンデを持っている人もこのゲームをとして当たり前に出来たことをこの世界でやっている人もいるとかいないとか。



みんなそれぞれ好きなように楽しめるのがこういったゲームのいいところだ。特にプラクロは固定シナリオや物に形状のようなものがないため、プレイヤーの数だけ物語があったり、作品があることが、大ヒットした理由の一つでもあると思う。



そういう訳で最近、第二陣が発売となり、新規ユーザーがたくさん参戦した今日。始まりの街ニルスフィアと、その最初のフィールドであるここ、ニルスフィア大森林には、新しい冒険の幕を開けたばかりのヒヨコたちがたくさんいる訳なんだよね。



一体なんの話をしているのかっていうとね? 最初に言ったけど、このゲームはいろんな楽しみ方をしている人がいるわけで。



「そんなっ!!?レベル50の人に勝てるわけがないじゃないか!!?」



「あまちゃん言ってんじゃないよ!! 出てきた時点で俺ちゃんの獲物ダゼぇ!!!」



「逃げよう二人共!!!!」



「一人も逃がさねぇぞ!! 狩りの獲物は逃がさねぇ!!!」



初心者狩りと言う奴が出てくるのも何ら不思議じゃない。実際は初心者相手にイキっている小物なんだけど。



初心者からしたらいきなり『ウェルネスシール』が襲いかかってくるようなものな訳ですよ。『兇波鋭豹』相手でも普通は勝てないもん、その親分相手に出来るわけがないのだよね。



「ほらほら捕まえたァ!!」



「きゃっ!!」



「「『ユーミン』さん!!」」



「私はいいから二人共逃げて!!!」



「逃げれるもんなら逃げてみなよ子リスちゃん!! 全員泉送りにしてやんよ!!!」



倒れた女の子アバターのプレイヤーを踏みつけて、初狩りの武器であるハンマーをぐりぐりと頭に押し付けている。



「こんちくしょう!!! どうせ逃げられないなら戦ってやる!!!」



「おうともさ!! 玉砕覚悟で激突あるのみ!!!」



「ヒャッハー!! カモがネギ背負って来やがったな!!」



友達なのか、はたまた即席のパーティーなのかはわからないけど、男アバターの二人が初期装備の『アイアンソード』と『ショートボウ』を構えた。



実力差は雲泥の差が有り勝てる見込みはまずないだろうね。けど、仲間を見捨てないっていうのは僕的にはポイント高いね。



「聞いたことがあるかい? 死神は予告なく魂を刈り取るために現れるんだよ?」



「あん? 誰かいやがるのk」



――――◇――――

特殊効果『死神』発動。対象プレイヤー『キラリヤイバ』に『罪人』の烙印

――――◇――――


瞬間。僕が振り抜いた二対のサイス『死神の呼声』が初心者狩りを刈り取り、顔を輪切りにした。特殊効果『死神』が綺麗に発動したみたいで一撃必殺の攻撃となった。





――――◇――――

武器 サイス:『死神の呼声』

攻撃力:+821 特殊効果『死神』

・悪を許さぬ死神が自らの魂を鉄に変えて生み出した鎌。悪から何かを守るために振るわれ続けるこの刃はまさしく悪を断つ刃なり。

――――◇――――

特殊効果『死神』

・対象が一人以上のプレイヤー、NPC、従者を殺害あるいは瀕死にしたことがある場合、自分の攻撃全て『特殊状態:防御力無視』が付与された状態になる。

・対象のヘイト値が一定以上で発動する。全ての攻撃に『即死』が確率で付与される。確率は対象のヘイト値によって変化する。また、ヘイト値がある一定以上のプレイヤーを瀕死状態にした場合、対象のプレイヤーは『称号:罪人』の烙印を押される。

――――◇――――

『罪人』

・特殊状態『死神』の効果などでプレイヤーに強制的に与えられる称号。解除が不可能でこの称号がある限り、自分のHPは100以上にならず、アイテムでの回復ができない。解除するためには街での奉仕活動をする以外に方法はない。

――――◇――――





「始めたばかりの子を襲っていた君は悪だ。悪を断つ刃である死神は君を許しはしないよ」



「て・・・めぇ・・・くろ・・・あく・・・・ま・・・・・・・」



「悪人に裁きを」



残っていた体を切り裂いて、初心者狩りの身体は光となって消えていった。残っていた三人の新規さんだけど、一体何が起きたのかわからず惚けちゃってる。



「大丈夫かい?」



「えっ? あ、はい!!」



倒れていた彼女に手を差し出すと、取ってくれたので起き上がってもらう。仲間の二人も警戒を和らげてくれたみたいで武器を収めてこっちまで来てくれた。



「えっと・・・ありがとうございます!!」



「スゲェかっこよかったです!! ユーミンさんを助けてくれてありがとうございます!!」



「本当にありがとうございました。正直怖くてチビしそうでした・・・アハハ・・・」



「気にしないでいいよ。僕もたまたま近くにいただけだし。それよりも一旦街まで戻ったほうがいいと思うよ? この辺は今みたいな輩が割と湧いて出るから危険だよ?」



エリアボス『恨血の木』までの道には初心者に優しいお兄さんお姉さんプレイヤーが網を張っているのでPKが沸くことは少ないんだけど、少し道を外れると今みたいにPKや初狩りが湧きやすいんだよね。



僕としては獲物がいることに関してありがたいけど、新規さんからしたらたまった物じゃないし。



「徒歩で戻るのは結構危険だから戻るためのアイテムをあげるよ。これ使って」



こういう時のために日常的に街への帰還タグは各種取り揃えている。常に在庫50は確保してるんだよね。『異端審問会』からの支給もあるし、お給料もいいから買い物には困らないし。



「ええっ!!? そんなっ!!もう少しなのに・・・!!!」



「ごめんなさい! 助けてもらって忠告までしてもらったんですけど、僕たちこの先に行かないといけないんです!!」



「この先・・・もしかして『祠の清掃』のクエスト受けたの?」



「「「はい!!」」」



あちゃぁ〜・・・受けちゃったのかぁ〜・・・まぁうん。初心者でも受けられてクリアも可能だし、報酬も結構いいから受ける人は多いんだよね『祠の清掃』。



でも、受けたプレイヤーによって祠の指定場所は違うし、今回みたいに初狩りからすれば完全にカモになる絶好の獲物なんだよね。



しかも『祠の清掃』ってクエストはクリアせずにリタイアするとちょっとしたデメリットでNPCからの信頼を失っちゃうんだよね。回復させることは可能だけど、結構いろいろしないといけないから尚更大変。



「うーん・・・仕方ない。君たち名前は?」



「そうだ名前! 俺『テントウメン』って言います!」



「僕は『スカルエンドⅡ世』です」



「『ユーミン』です。よろしくお願いします」



うんうん。剣士が『テントウメン』君、弓兵が『スカルエンドⅡ世』君で、女の子が『ユーミン』ちゃんね。よし覚えた。



「僕は『†黒悪魔†』だ。君たちのクエストクリアまでお節介を焼こうと思うんだけどどうかな?」



「「「えっ!!? 良いんですか!!?」」」



「事情を知っちゃったからね。ダメかな?」



「「「よろしくお願いします!!!」」」


新規さんが増えるのは嬉しいからね。こんなところで折れて欲しくないし。それにある意味彼らといれば僕の獲物も来る可能性が多いにあるから。



僕はPKKができる。彼らは安全の確保ができる。WinWinの関係ってやつだね。





――――◇――――





「すっげぇ!!『†黒悪魔†』さんってレベル96なんですね!!」



「最近上がったんだよ。少し前までは71だったし」



「「「すげぇ(すごい)!!!」」」



イベントに参加したり、アールさんと共闘したり、PKKしてたりしたらかなりレベル上がったんだよね。他の人たちも結構LV100カンストしたりしたみたいだから僕がすごいって訳でもないんだけどさ。



「あのあの!! †黒悪魔†さんって普段どこに行けば会えますか?」



「僕? 決まった場所にはあんまりいないんだよね。大陸中に居るPK殺るためにあっちこっち行ってるし」



「そ・・・そうですか・・・しゅーん」



「「・・・(ジー(;一_一))」」



「ま・・まぁせっかくフレンド登録したんだから連絡くれれば会えないこともないかもね?」



「本当ですか!!?」



「お・・おぅ・・・」



ぐ・・・グイグイくるなぁこの子。と言うか皆女の子だったとか予想できないって。なんで男装してたのさこの娘達。



話をしてて、フレンド登録したんだけど、全員性別『女性』だったのを見た瞬間びっくりしたよね。男装女子の『ぞうもつまる』さんは見慣れてるけど、初期からいきなり男装してるとか驚きしかないよ。



今みたいに『ユーミン』さんが落ち込むと、ほか二人の視線がまぁ痛いのよ。どうしてこうなった?



「と・・・とりあえずまずはクエストクリアしようか! うん! それがいいよ!!」



「「(逃げたな)」」



「はい!! †黒悪魔†さんがいれば怖くありません!!」



今僕は『アール』さんの精神力が欲しいって切実に思うよ。あの人メンタル強すぎる・・・女の子が多い場所って結構緊張するんだよ。



どこぞの二刀流でストリームしてる主人公君ってそう考えるとすごくない? よく女子ばかりのパーティーで平常心のままいられるよね。僕には無理。正直さっきの言葉を撤回したいです。



「祠まではどのくらいありそうなんだい?」



「えっと地図によればっと・・・もう少し先ですね」



「そっか〜。ところでモンスター来たけど戦う?」



『ゴギャギィ!!』



『ギィギィ!!』



「本当だ!! もちろん戦いますよ!! 二人共行くぞ!!」



「うん!!(おう!!)」


進路上に出てきたのはゴブリン二匹。いたって普通のゴブリンだね。少し前までゴブリン見たら絶対危険だって状態だったから、こんなふうに初心者の戦いを見ているとなんか和むよね。



それだけ平和(?)になったわけだし。よし、じゃぁ僕も”お仕事”しようかな。



「シッ!!」



戦闘に夢中の三人は今のところ僕が移動したのに気づいていない。戦い終わるまでにこっちも終わらせたいね。



『AS:シャドウジャンプ』と『AS:気配遮断』で僕の姿を見ることはほぼ不可能だ。そしてそれを”見ていた3人”のプレイヤーからしたらこれは死刑宣告でもある。



「やべっ!! ばれてr」





――――◇――――

特殊効果『死神』発動。対象プレイヤー『怨念卿』に『罪人』の烙印

――――◇――――





「一人目」



背後に降りた僕はそのまま隠れていた男の喉を切り裂き、そのまま二本目のサイスで縦に真っ二つに切り裂いた。



そして仲間が殺されたことで残り二人も即座に戦闘態勢を取った。装備から見てレベル帯40から60の間ってところかな。



「怨念卿が一瞬でかよっ!!? クソっ!!」



「落ち着けよ兄弟。確かに相手は強いが俺らが組めば負けはねぇ」



「・・・そうだな兄弟。俺としたことがらしくねぇ。俺たち『キリキルブラザーズ』が揃った場所で狩れなかった奴はいねぇもんな!」



よくもまぁ話す人たちだなぁ。立ち方に身構え方、僕を見たときの反応からして自分より強い相手との戦闘回数は少なそうだ。最初の初狩りほどじゃないにしてもPKに変わりはなさそう。



ならどうして最初の奴は瞬殺したのかって? だってそいつだけ、ターゲットを『ユーミン』に向けていたんだよ。完全に初心者狩り確定でしょ?



最近手に入れた『UtS:死神眼』のおかげでプレイヤーがいったい誰を狙おうとしているのかわかるようになったから目線から相手に位置を特定しやすくなったんだよね。



「一応君たちは彼ほど、あの子達を狙っていたわけじゃないからこうして猶予は与えてるけど、引かないなら僕の獲物だよ?」



「言ってろ死神『†黒悪魔†』! 今日でお前の命運も終わるぜ!!」



「俺たち『キリキルブラザーズ』がお前をキルして名を上げる記念日だ!!」



「ふーん。僕のことを知った上でPKを狙うわけだ。いいよ。なら少し本気で相手してあげるよ。格の違いってやつをその身で味わいな!!!」





――――◇――――





「よっし!!倒した!!」



「†黒悪魔†さん!! みていてくれまし・・・あれ?」



「ど・・・どこいったの?」



「あぁ、ごめんごめん!!」



少しだけ遅くなって倒した瞬間を見られなかった。ひょっこり木の陰から出てきたけど三人とも不満そうだ。



「むぅ〜!! なんでそんな所にいるんですか!!? 私たちの戦い見ててくれなかったんですか?」



「違うよ。後ろから”ゴブリン”が現れてさ。倒してたんだよ。僕も油断したら瀕死にされるからね」



「むぅ・・・納得いきませんけど分かりました。でも次はちゃんと見ててくださいね?」



「アハハ・・・了解だよ。”襲われない限り”しっかり見てるから今回は許してくれない?」



「僕はいいですよ? それに今こうして†黒悪魔†さんが後ろから来たモンスター倒しててくれたから僕らもこうして戦えたんですし!!」



「そうそう!! やっぱりレベル高いと見えない相手からの奇襲にも気付けるんですね!!かっけぇ!!」



二人の男装少女たちはそう言ってくれた。しかも戦いで興奮したみたいでぴょんぴょんはねてる。元気があるね。ユーミンさんは納得いかないように顔を膨らませつつも、許してくれるみたい。



「よし!! それじゃぁ祠までしゅっぱーつ!! 僕に続けぇい!」



「「おおー!!」」



「元気だねぇ」





――――◇――――



「「や・・・やられたぁ・・・」」



そこには全身輪切りにされて尚生きている二人のプレイヤーの姿があった。一体何があったのか、なぜ生きているのか。彼らにはわからない。だけど・・・



『グルルゥ・・・』



「「ゲッ!!? モンスター!!?」」



『ウォォォ!!!!』



「「ギャァァァ!!!!!?」」



その末路は、モンスターに捕食されるというものだったことだけは、誰の目に見ても、そして当の本人たちも予測ができていたことだった。



――――◇――――





――――◇――――

・プレイヤー『キルリー』『キリリードン』がモンスターにより瀕死。

――――◇――――





随分長かったけど、やっと逝ったね。まぁ初心者フィールドでモンスターに殺られるって言うのは間違いなく堪えるだろうし、彼らにはいい薬だよ。ヘイト値が思ったよりも低かったから烙印は押せなかったけど、これに懲りたら自分以下のプレイヤーに対してのPKは改めてくれると僕としては嬉しい。



「あった祠!!」



「結構歩いたぁ・・・ちょい休まない?」



「うん・・・私も少し休みたいです」



歩いて戦闘、少し歩いてまた戦闘。こんな感じで繰り返すこと30分。四人揃って無事に指定された祠に到着。彼らが倒したモンスターはゴブリン5体にスライム2体、それと狼3匹。



初心者からすれば結構な数を倒したんじゃないかな? 僕? 僕は今逝った二人の含めて12人だよ? 既に相当のヘイト値を積んでいた輩が多かったからほぼ一撃必殺だったのもあるから余計にね。



「周辺にモンスターもいないみたいだしいいんじゃないかな。警戒はしててあげるからゆっくり休んでて」



「ありがとうございます†黒悪魔†さん! 一緒に居てるれるからさっきみたいな人にも会わないし本当にありがとう!!」



「気にしないでよ。もしかしたら僕が気にしすぎてただけかもだし」



「まったまた〜、実は†黒悪魔†さんってあんな感じの人から恐れられる凄い人だったりするんじゃないですか?」



「ないない。僕はそんなんじゃないよ。もっと全プレイヤーから一目置かれてる人はいるからね」



「あっ!! もしかしてPVに出てた人ですか?」



「そう言えばいた!! すごい動きでモンスターなぎ払ってた人!! なんだっけあのぉ・・・えっと・・・そう!!剣なんやら!!!」



「剣聖だよ。でも私はその人とよりも†黒悪魔†さんがかっこいいです!!」



「おふっ!!? あ・・・ありがとうね?」



グイグイくるよこの娘・・・無自覚? それとも意図的に? どこかの高田くんを沸騰とさせるんだけど? 西村さんの気持ちが今ならわかる。すごく恥ずかしい・・・!!!



「「ほほーう???」」



ほか二人は『おもろいもん見つけたぜ』みたいな視線でニヤニヤしてるし!! 誰でもいからヘルプ!! あ、PKはお呼びじゃないのでくるな。来たら始末するのでよろしく。



「あれ?黒悪魔じゃん。珍しいねこんな場所で」



「いやいやレイレイさん? 貴女がいる方が珍しいんですけど?」



やってきたのはまさかまさかの人物。プラクロ内にて知らない人はいない超大物が一角。知らない情報はほとんど無いと言われている屈指の情報屋で『挨殺者』とも呼ばれているプレイヤー『レイレイ』さんでした。



「アタシ? あたしはちょっと久しぶりにニルスフィアで気になったクエスト見つけてね。その調査も兼ねて。あんたは・・・って、聞くまでもなさそうね」



「†黒悪魔†さん? こちらの方は?」



「この人は『レイレイ』さんです。情報屋さんなので聞けばなんでも教えてくれますよ? レイレイさん。この娘たちはそちらの娘から『テントウメン』『スカルエンドⅡ世』『ユーミン』さんです」



「見た感じ初心者ね。初めまして『レイレイ』よ。聞きたいことがあればお金か情報と交換で教えてあげるからなんでも聞いていいわよ」



等価交換さえすればなんでも教えてくれるすごい情報量の持ち主ですからね。といっても等価交換とは言っても、かなり破格の値段で教えてくれますけどね。



しかも割と多くの情報は無償で流してくれているので踏みいった情報が欲しい時くらいにしか基本はお願いしませんし。あ、そうだ。



「レイレイさん。この周囲のPKについて何か情報あります?」



「お? なんだよ黒悪魔。先輩らしくサッソクお手本?」



「結果的にはそうなるかもですが、僕が気になったことですので」



「ま、そういうことにしといてあげるよ。いくら出す?」



「とりあえずこのくらいでどうでしょう?」



「「「おおっ・・・!!!」」」



取り出したのは袋にパンパンに詰まった大量のD。大体5万Dくらいなので多分全部教えてくれるとは思います。受け取ったレイレイさんは重さを見たり中身を確認すると笑顔を浮かべてくれました。



「毎度有り♫ この辺に来たPKは初心者狩り含めて大体138人くらいかしら。既に反撃くらって瀕死になったのはっと・・・48人。それとアンタみたいにPKK狙いできたのが9人、それとアールが雇った『レイエル』もPKKで動いてるから今はもう少し少ないかも」



これである。この人は一体どこからどうやってそこまでの情報を集めているのか一切が不明だが、持っている情報はまるで衛星で映像でも見ているかと思うくらいに正確で的確なんです。



アールさん達といる時は全く凄いように見えないですが、アールさん達と敵対した場合、最も注意しなければならないのが彼女の情報網です。



隠れても、逃げても彼女が集めた情報を元にマー坊さんとリークさんが逃げ道を潰す。そして情報の要であるレイレイさんを狙えば現最強プレイヤー筆頭のアールさんがその相手を仕留める。



小細工なしでも戦いたくない相手なのに、そこに戦略や小細工が加わればどうなるか、予想も想像もしたくない光景です。現にクラン『剣星』にクラン戦を挑んだトップ陣営の一角『フリー団』との戦いはプレイヤーの中では有名な話です。



『剣星』が、癖も実力も強い『フリー団』相手にほぼ一方的に押し込んだのは衝撃でした。と言うかルークくんをぶつけて半分以上を戦闘不能に追い込むのはえげつないと思います。



ライーダさん筆頭にした『ルーク教』なる人達にとっては神に刃を向けることと同義らしく笑顔で自滅していきましたよ。カレイさんが頭を抱えていましたよ。



「なら残っているPKで要注意な相手はいますか?」



「うーん・・・アンタが相手だとしてちょっかいをかけそうなのはそうねぇ・・・『浄化僧』くらいかしら」



「あの人いるんですか・・・だっる・・・」



「気持ちはわかる。けど諦めなさい。あら?あららぁ?」



「むぅ・・・」



なんでしょう? すごく嫌な予感が・・・



「いやごめんごめん!! アンタに夢中になってる女の子がいたのに気づかなかったよ!! 『ユーミン』ちゃんだっけ? 大丈夫よ? アタシこいつに興味ないから。それよりも特別サービスでいいこと教えてあげよっか?」



「本当ですか!?」



「黒悪魔はニーソが好きよ」



「ちょおまっ!!?」



「空間に耳あり。アタシの情報網舐めないでよね?」



「悪ぅぅ!!!!!」



「おっと!! じゃぁね!! バイバーイ!」



「この悪魔ッァァァ!!!!!」





――――◇――――





祠は綺麗になりました。あとはこれを三人が依頼を受けた方に報告すれば完了です。



「「「(ニヤニヤ)」」」



「ぐっ・・・・忘れなさい。僕の性癖は忘れなさい」



なんで僕の性癖を知っているのかは謎です。本当にあの悪魔みたいな人だけは敵にしてはいけない。でもこの恨みは絶対にはらします。



具体的にはアールさんに言いつけます。



『無駄無駄!! アハハハ!!!!』



なんて言っている幻聴が聞こえますが無視です。絶対に言いつけます。これで悪質PKしてたら迷いなく狩れるのにあの人自己防衛が基本なのでPK自体が珍しいんですよね。



今の自分の役職が、今だけは煩わしい・・・!!!



「†黒悪魔†さん! 私装備でニーソ見つけたら着ますから見てくださいね!!」



「「(ほぼ告白やん?)」」



「もちろんd・・・ゲフンゲフン!!! 防御力重視で装備は見つけたほうがいいですよ? それと出会ったばかりなのでそういうことはあまり言わないほうがいいですよ?」



「大丈夫です!! これからこの距離を詰めるために私頑張りますので!!! 私結構一途だと思いますので頑張ります!!!」



ついに好意を隠さなくなってきたぞこの娘!!? 助けられた吊り橋効果でここまで来るの!!? 最近の若い子(自分よりも年下)の考えることはわかりません!!



「†黒悪魔†諦めたほうがいいですよ? ユーミンさんは一度決めたら達成するまで諦めないので」



「リアルでもかなりイイ娘だからきっと惚れちゃいますよ?」



「二人も面白がらないでください! それとネットは危険なこともあるんですから誰に対してもそういうことは言ってはいけませんからね!!?」



「「「†黒悪魔†さんは信頼できると思ってるから大丈夫です!!!」」」



なんで僕の好感度こんなに高いんですか!!? かなり怪しい見た目で武器だから絶対警戒心高いと思うんですけど!!?



最近の娘ってやっぱりわからない!!!



「ほら! 早く街に戻りますよ!! せっかくクリアしたんですから報酬もしっかりと・・・・・・」



「??? †黒悪魔†さん?」



話を聞いていたのでもしかしてはと思っていましたが、やはりきましたか。出来れば会いたくない筆頭ですのに。



「皆さん。絶対に僕の前に出ないでください。敵です」



「敵とは酷い御人だ。拙僧はただ死神と死神に魅入られた汚れし魂を浄化するために来ただけである」



鈴を鳴らして僕らから少し離れた木陰から出てきたのは先ほどレイレイさんから話を聞いていた会いたくない筆頭『浄化僧』という名前のPK。



目を閉じ、“僧”名に付くだけあって住職のように手を合わせている。背負っているのは巨大な箱。それを軽々と背負い『浄化僧』は歩いている。



彼は、彼の中で『汚れた魂』を見つけるとそこが戦場だろうと、街であろうと、大事な場面であろうともそのプレイヤーを殺す悪質なPKのひとりである。



本人はそれを認めることなく、あくまでも『汚れた魂の浄化』としているため悪質だ。吐き気がするほどのPKだ。僕とは相容れないレベルで嫌いなやつだ。



「人を死神という前に自分のことを改めた方がいいですよ。誰がどう見て害悪悪質PKですよ貴方。だから『異端審問会』が貴方の断罪を決めたんです」



「否、『異端審問会』は既に死神に魅入られていた汚れの集まりであった。真なる浄化を行うために拙僧は魂の救済を行うのだ」



「ほんっとに言葉通じねぇ此奴・・・じゃぁその理論で行けばこの後貴方はどうします?」



「魂の浄化を行う。死神に魂の救済を、死神に魅入られし悲しき魂に救済を」



「シぃっ!!」



直後、僕と僕の後ろで浄化僧に対して恐れを抱いていた三人に対して、見えない何かが襲いかかった。



僕はともかく、三人は一撃当たれば間違いなく瀕死するから、僕は手にとったサイスを振るい三人を守る。



――――◇――――

特殊効果『死神』発動。対象プレイヤー『浄化僧』及びその従者『浄化蟲』

――――◇――――



「「「ヒッ!!?」」」



衝突音と共に襲いかかってきた存在が特殊効果『死神』の効果を受けてそのまま地面に落ちる。ギチギチと体液をぶちまけて地面に落ちたのは『浄化蟲』と名を与えられたモンスター『殺戮クワガタ』である。



何処ぞのジョ〇ョで出てきた飛行機の中で主人公達を襲ったス〇ンドというのが一番しっくりくる。



気色の悪い青い体液をぶちまけて三匹の『浄化蟲』が死んでいく。自分の従者が死んだというのに、この人は顔色一つ変えなかった。いや、変える必要がなかったというべきですね。



「その魂は浄化された。死神に作られた魂は今浄化されたのだ。”彼ら”に続くのだ」



『ギギギギ』



「「「ヒィッ!!?」」」



箱から羽音を響かせて現れたのは今倒したばかりの『浄化蟲』と名付けられた『殺戮クワガタ』。その数約30は超えるでしょう。



「相変わらずその箱に女王を飼ってるんですね」



「否、死神に汚された哀れな魂を浄化するための我が救済である。そのような俗物的な行為ではない」



「何度来たって同じです!!!」



鳥肌が立ちそうな羽音を鳴らし、一斉に襲いかかってくる『殺戮クワガタ』を切り裂きへし折り殺していく。



ちらりと見れば後ろの三人は既に腰を抜かしており、逃げろといっても逃げられないでしょう。こんな気持ちの悪い光景を女の子が見たらそうなるに決まっています。



「クソ坊主!! 場所を変えましょう!! 彼らが怯えています!!」



「否。怯えは浄化を恐れる魂が見せる汚れの証。故に拙僧が浄化しなければならないのだ」



「こんのクソ害悪PKがっ!!」



こいつの従者にトラウマを持ち、虫を見ることが怖くなったというプレイヤーが少なくとも6人いるんです。彼らはしばらく虫を見ただけで怯え、泣いていました。



そのうち一人はプラクロを辞めてしまい、一人は前線から身を引いて現在は街で小さなお店を開いています。



けど、彼らは皆本当ならルシオンさんやチーザーさんのように時に前線で活躍し、楽しいゲーム生活をするはずの人たちだったんです。



それをこの人がむちゃくちゃにした。だから異端審問会が彼を罪人と審判し、僕が動いたんです。しかしこの人は何度烙印を押されても、奉仕活動をせず、そのままの状態でこうしてPKに勤しんでいる。



武器は既に失っているのに『ジョブ:狩人』で従者にした『殺戮女王クワガタ』を使い、こうして人にトラウマを与えながらPKを繰り返す。本当に害悪以外のなにものでないです。



『ギギギギ』



「っ!!? 此奴っ!!」



動きがさっきまでに奴らと違ってきている!? まさか強化しているとでも言うんですか? 僕が振るう刃を受けるものの、まだ息があり、少し離れて回復、追いたくてもほかの個体が襲いかかってくるためトドメをさせない。



そして、本体である『浄化僧』の箱の中にいる『殺戮女王クワガタ』をやらない限り無限湧きです。せめてもの救いは次に生まれる個体は、前の誕生から時間が必要なことくらいです。



「くぅっ!!」



その中の一匹が僕の腹部へ突き刺さる。顎を締めて僕の肉体を剥ぐように抉る。しかもかなり痛いですよ。



――――◇――――

・『状態異常:蟲毒』に感染。

――――◇――――

状態異常『蟲毒』

・『状態異常:猛毒』『状態異常:神経毒』『状態異常:麻痺』が同時にかかる状態異常。回復はアイテム使用でも困難であり、確率でしか回復できない。

――――◇――――



なんですかこれは!?以前の攻撃にはこんな能力はなかったはずっ!!?まさか、能力まで進化したとでも言うんですか!!?



「死神よ。それが清き魂を怪我してきた汝の罪の重さだ。その身を持って償うがいい」



「グハッ!!」



それを好機と見たのか、一気に攻勢に転じてきたクワガタ達。残り6匹だったのに・・!!!



手足と腕にまとわりつき、僕の肉を喰むクワガタ。激痛が走り僕は武器を手放しそうになる。激しい痛みが僕の体中を駆け巡り、意識を刈り取ろうとしてくる。



「さぁ懺悔せよ死神よ。その汚れた魂、今こそ浄化の時だ」



ぼんやりとする視界の先に生まれたばかりの『殺戮クワガタ』がいた。二つの鋏には禍々しい刺が見えている。これは不味いですよ。流石にこの状況、よけられる気がしません。



羽音が迫ってきました。悔しいですけど、僕の負けみたいです。



「女は度胸です!!!!」



「うおっ!!?」



ぶつかる直前に、後ろからの声と共に僕の体は第三者によって動かされました。そして接近していた新型の『殺戮クワガタ』は空を切りました。



「クソこのやろう!! †黒悪魔†さんから離れろ!!」



「キショイキショイキショイッ!!!!!」



「†黒悪魔†さん!!これ飲んでください!!!」



助けてくれたのは守っていた三人でした。『テントウメン』『スカルエンドⅡ世』『ユーミン』は地面を這って動き、僕を助けてくれたみたいで泥だらけでした。



まだ立ち上がれもせずに、自分たちの方が危ないのに、、顔を歪めながら僕にまとわりつく『殺戮クワガタ』を倒そうと武器を当てています。それだけじゃなく、新規プレイヤーに配布される回復ポーションを惜しげもなく使ってくれました。



それが初期ではどれだけ入手が大変なのか知らないわけじゃないはずなのに。それを使っても僕のHPは全快しないと気づいているはずなのに。三人は所持していたそれを惜しげもなく僕に飲ませてくれました。



「悲しい。汚れし魂は死神によって戻れない汚れを負ってしまったの「うるさいです!!!」・・・汚れよ?」



『ユーミン』のぷるぷると震えてが僕の手を通して伝わってきます。武器をクワガタに当てる『テントウメン』は涙目で、『スカルエンドⅡ世』は半分泣いています。それでも彼女たちは力強く言葉の矢を放ちました。



「汚れ汚れってうるさいです!! 私たちの恩人さんにそういう事を言う人は悪人です!!!」



「そうだそうだ!! 蟲にばっかり戦わせる弱虫!!!」



「お前なんてきらいだ!!カエレ!!」



「・・・・・・拙僧は悲しい。汚れし魂は、死神となってしまった・・・あぁ、拙僧がその哀れな魂を浄化しよう」



僕を喰んでいたクワガタたちが飛び上がり、クソ坊主の正面に整列しました。その中には回避できた新種のクワガタも



「や・・・やってやらぁ!! 元々†黒悪魔†さんが居なかったらやられてたんだ!! 恩返しにじゃないけどやってやるぜ!!」



「今度こそ玉砕してやるんだから!!!」



「今度は私たちが頑張ります!!!」



胸が熱くなります。自分よりも弱いレベルの、しかも始めたばかりの新規プレイヤーが、僕を守ろうと、恐怖を乗り越えようと立ち上がってくれるんです。



えぇ、今ならアールさんがルークくんに抱く気持ち、そしてそれを見てルークくん信者の気持ちも少しだけわかります。こんなに暖かい気持ちをくれるんですね。勇気ある行動を自分のためにしてくれるっていうことは。



そして同時に、この娘達を守って街に連れていくと約束したんです。他ならぬ僕が決めて約束したんですよ。



立ちなさい『†黒悪魔†』! 自分で決めたことを貫くんです! 僕は『悪を断つ刃』異端審問会のメンバーなんです!! そして一人の男です! たかが害悪PKから新規さんを守れずしては男がすたるでしょう!!!



――――◇――――

・特殊ジョブ『死神』が真化可能になりました。

・特殊ジョブ『死神:夜天』に真化しますか?

――――◇――――



っ!!



「浄化の時である。汚れし魂よ、悪しき死神よ。その醜き魂を清めるのだ」



「「「っっっ!!!!」」」



「殺らせませんっ!!! 絶対に殺らせません!!!」



どうなるかわかりませんけど!! このタイミングで進化ではなく、真化と表記されているんです!! ならばそれに僕は賭けます!!



――――◇――――

・特殊ジョブ『死神』から真化、『死神:夜天』へと変更されました。

・真化に伴い、アナタの知識として『死神:夜天』の能力を記憶しました。

・真化に伴い、装備『死神の呼声』が『サイス:『因果裂:翅弍臥魅』』に真化しました。

――――◇――――



「”因果を断ち切れ”!!『因果裂:翅弍臥魅』!!」



――――◇――――

『因果裂:翅弍臥魅』の特殊能力『因果裂』発動。

――――◇――――



「んなっ・・・!!?」



「「「へっ!!?」」」



いろいろありすぎて僕自身何が起きたかわかりませんが、これだけははっきりわかります。目の前で起こした現象は僕がしたことだって。



突っ込んできた『殺戮クワガタ』が突然バラバラに引き裂かれて死んだんです。それだけじゃない。クソ坊主が背負っていた箱から大量の体液がぶちまけられたんです。溢れ出る体液に驚きを隠せないクソ坊主。



「ば・・・ばかなっ!!?」



背負う箱を下ろして蓋を開けると、驚きで飛び上がりました。



「どうしたんですかクソ坊主? 随分な驚き方ですね」



「死神よっ!!? 一体何をした!!? それにその姿はっ!!?」



真っ黒だったトレンチコートには金と銀の線が走り、二対のサイス、『死神の呼声』改め『因果裂:翅弍臥魅』はそれに合わせて金と銀の模様を浮かび上がらせています。



「「「か・・・かっこいい・・・!!!」」」



「ありがとうございます。少しだけ待っていてください。直ぐに終わります」



えぇ、嬉しいですねかっこいいって言われるのは。そしてちょっとだけすっきりしました。ムカつく嫌いな坊主の驚く顔を見られたのはね。



「悪しき死神よ、その魂はもう戻れぬ頂へと至ったのか・・・!!?」



「僕のことを悪と呼びたければご自由に。ただ、その僕が悪だとした貴方もまた悪です。そして、僕は異端審問会所属の死神が一角『†黒悪魔†』! またの名を、悪を断つ刃なり!!」



ちょっとカッコつけすぎですかね。でもここはノリで言ってみたかったんですよ。実はアールさんの名乗りとか演説が個人的にはドツボでして。



「くぅぅっ!!!」



「人に仇なす悪は僕が全て断つ! ハァァ!!!」



――――◇――――

・特殊効果『翅弍臥魅』発動。対象プレイヤー『浄化僧』に『罪人:悪滅』の烙印

――――◇――――





――――◇――――




「その力は『死神』を超え、人の世を救う力である」



「死神を超える力・・・」



街に戻り、異端審問会への門を潜り、異端審問会の重鎮たちの前に来た僕を出迎えてくれた言葉はそれだった。



「『死神』は人ではなく、己の悲しみを祓う力。だがお主が目覚めた力『死神:夜天』は己とそして、己が守りたいと願うモノを救う力である」



「人の世を救う死神。それこそ『夜天』。金色宿る血はあらゆる不浄を払い、銀纏う血はあらゆる悪を許さぬ力である」



「新しき死神よ。お主にも守りたいと心から願う者が出来たのだな」



「己ではなく、他者を真に想う気持ちがお主から溢れておる」



「「『死神:夜天』よ。その力をどう使う?」」



「決まっています。僕は悪を断つ刃『†黒悪魔†』です。これからも悪を断つためにこの力を使いますよ」



「「そうか。お主が新たな『夜天』に成ったこと、我らは心から祝福しよう」」



そうして異端審問会は閉じた。戻された場所は入ってきたニルスフィアの裏路地。誰もいないからいきなり現れた僕に対して誰も驚かない。



「『死神:夜天』かぁ・・・なんだかすごいことになったなぁ」



新規さん助けた後にお節介焼いて、その後こんなことまで起きたんだから、今日は本当に驚くことばっかりだ。



でもまぁ、嫌じゃないかな。



「さてと、せっかくだしもう少しPKKに勤しもうかな」



「みーつーけー・・・」



「ん?」



「「「たぁ!!!」」」



「おわっと!!?」



背中に飛びついてきた三つの体を支え切れる訳もなく、地面にキスをする僕。そして僕を押し倒した三人の声はとても嬉しそうだった。



「やっと見つけました!!」



「すっげぇ!! あの姉ちゃんすげぇ!! 本当に†黒悪魔†さんに会えた!!」



「もう!!戻ってきた瞬間いなくならないでください!!」



「あいたたた・・・三人ともとりあえず降りてくださいよ。重いですって」



テントウメン、スカルエンドⅡ世、ユーミンの三人が僕の背中から避けてくれたのでとりあえず体を起こしてそのまま地面に座ります。



見れば三人の装備は少し変わっていて、始めたばかりの初心者から、少し装備を整えた初心者に変わっていました。でも・・・



「なんで三人とも似たようなカラーリングなんですか?」



三人とも黒を基調とした装備で身を包んでいました。それだけでなく、僕のトレンチコートに寄せるように金と銀の装飾まで入れています。



装飾を入れるのって結構お金が掛かるはずなんですが?



「†黒悪魔†さん!! お願いがあります!!」



「お願いですか?」



「「「僕(俺)(私)たちとパーティー組んでください!!!」」」



「へっ? なんて?」



「俺たちまだまだ弱いけど!! 頑張って強くなるからさ!!」



「†黒悪魔†さんの生き様に憧れました!! 弟子にしてください!!」



「お手伝いしたいんです!! ダメですか?」



「・・・ははっ」



「「「???」」」



「どうせならクランでも立ち上げましょうか。そのためにはまずエーテリアまで進めないとですね」



「「「っっっ!!? じゃぁ!!?」」」



「いいですよ。これも何かの縁です。君たちが自力でエーテリアまで行けたとき、僕とクランを作りましょう。打倒害悪PKを掲げるクランです。いいですね?」



「「「はい!!」」」



こうして、この数日後に立ち上げた僕のクラン『死神連合』は、後に異端審問会に所属するプレイヤーの集まりとなることになりました。そして初期メンバーである僕ら四人もまた、トップ集団の仲間入りを果たすのはもう少し先のこと・・・・





――――◇――――

◇とある時間軸の小話◇



「ねぇアールさん」



「なんだ黒悪魔?」



「最近、アプローチがすごくて年下に屈しそうなんですがどうしたらいいと思います?」



「どういう意味かによるが」



「僕のことを落としに来てます。恋愛感情的な意味で」



「いいんじゃね? 嫌いではないんだろ?」



「えぇまぁ・・・でもですね?」



「なんだよ?」



「その子・・・最近義妹になっちゃったんですよ・・・現実でいろいろありまして・・・」



「・・・身バレは?」



「初日の初対面でバレました。『もしかして†黒悪魔†さん?』って・・・」



「そ・・・そうか・・・」



「ぶっちゃけ・・・ドストライクでした・・・」



「・・・屈したらいいんじゃない? 血の繋がりはないんだろ?」



「・・・実は両親もほぼ公認です・・・毎日べったりなので理性がそろそろ辛いです・・・」



「お前その話あんまりするなよ? 嫉妬と恨みに駆られた野郎に締め落とされんぞ?」



「えぇ・・・もちろんです・・・でも・・・多分そうはならないかと・・・」



「あぁ・・・”二人目”の『死神:夜天』でしかも、『死神連合』のサブクランマスターを敵に回すことはしねぇだろうな」



「強くて好みで統率力があってカリスマ性にも開花し始めてって・・・」



「うんまぁ惚気っぽいけどうん。理性は保ちつつ素直になればいいと思うよ?」



「・・・話聞いてくれてありがとうございます。少し覚悟出てきました」



「そっか。頑張れよ。話くらいならいつでも聞いてやるから」



その数日後、†黒悪魔†が相手となる彼女と共にやってきて、アールに報告があった。妙に彼女がつやつやしていたので全て察したアールであった。



「理性保ててねーじゃん」



「あれは無理です。マジで凶器ですわ・・・」



「義兄さんは好きですからね。アレ」



「・・・レイレイさんはやっぱり悪魔・・・!!!」


次は誰を主人公にしてみましょうかね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >>†黒悪魔†さんの(ある意味)個別シナリオで登場おめでとうございます。 [一言] ネタのアイディアだけなら、 各『クランの誕生秘話』ネタとか、 今のメインメンバーが集まるまでの話とかを…
[良い点] まったく、裏山けしからんな〜( ゜∀゜)アハハ八八ノヽノヽノヽ あとこれも言っとこうか。それ、なんてエロゲ? ところで黒悪魔さん、膝枕フェチの予備軍ではなかろか [一言] 名乗りが決まっ…
[一言] うん、カームさんはもういないから代わりに言おう。 爆発しろこのニーソフェチ死神さんめ!
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