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プラネットクロニクル ーある日々の物語ー  作者: 月光皇帝
ある日々の出来事(時系列はぐちゃぐちゃなのです)
10/16

ある日々EXⅠ:異世界召喚『ラグズライド王国』

今回の話を参考にクラス召喚のキャラを考えてくれると嬉しいです。

本編に出すか迷ったのですが、とある方のアドバイスを受けてこちらに投稿しました。



この世界は平和だ。俺が生きていた世界とはまるで違う。

毎日生きるためにモンスターを倒したり、モンスターに襲われる心配がない。そもそも、モンスターと言う存在がいない。



いるのは動物と呼ばれるモンスターに似ていて限りなく違う存在。野生の動物なら人間を襲う可能性はあるが、人とともに暮らす猫や犬、鳥といった動物は基本的に人間を殺すことはない。

だから必然的に剣や槍などの武器が必要なくなっている。



逆にそんなものを今の世の中で常日頃から持ち歩いていれば銃刀法違反で警察に捕まってしまう。それに、剣などで身を守るよりも銃を使えばいい。誰でも使えて殺傷力も高い。しかも近づかずに相手を殺せるので遠距離からの攻撃がこの世界での戦いとなる。



まぁ、俺がいる日本ではそんな物騒なことはないし、そもそも平和という言葉を体現した国だ。平和ボケしてるとも言えるかもしれないが誰もが安心して暮らしているならそれでいいと思う。



そんな平和な国、平和な場所で俺は今日も授業を受けている。この国の歴史や世界の歴史。言葉に数学、前世ではまるで想像できない事を学習している。



「っと、時間だ。今日はこれくらいで止めておこう。号令」



「起立、礼」



号令に合わせて席から立ち上がり、教師の先生に礼をする。この国の文化のひとつ。もう17年この国で生きていれば不思議と慣れてくるものだ。



丁度授業を終えるチャイムが鳴り15分の休憩時間となる。クラスメイト達は次の準備をしたり、他のクラスに遊びに行ったり、遊びに来た友人と話をしたりいろいろだ。



俺はそういうのは特にそういう気分ではないので目を閉じ、腕を組んで眠りに入る。短時間であろうとも睡眠をとるのは体の休憩には丁度いい。前にテレビでやっていたのをちらっと見てからというもの、やることがない日はこうして仮眠を取るようにしている。



「お? なんだよ剣部、寝るのか?」



「そうだけど何か用か?」



「いや、最近よく寝てるから気になってよ?」



「そうか。寝るのが最近のブームでな」



「寝るのがブームってお前面白いやつだな。なら邪魔しないようにオサラバしますかね」



そう言って前の席に座るクラスメイトの男子は他の友人のもとへと向かった。名前は・・・覚えていないな。昔から人の名前を覚えるのが苦手なんだ。ボッチという奴ではないが、何か用事がない限りクラスメイトが積極的に俺と話をすることはあまりない。



俺はクラスメイトの中では『ちょっと厳つい系男子』というポジションらしく、不思議と気になるがそっとしておこうとことにされている。それでも前後左右のクラスメイトからは多少の世間話をしたり、授業についての話をしたりもする。



今日は俺の仮眠デーということを見て皆が気を使って少し離れてくれたのはありがたい。皆の優しさを受け取って仮眠を取らせてもらおう。



「あぁー! 零司ってばまた寝ようとしてる!! こんな可愛い幼馴染が遊びに来てあげたのに!!」



そのつもりだったのに、五月蝿い奴がやってきた。



「・・・自分で可愛いとか言うな。うざいから帰れ」



「ちょぉ!!? 私お姉さんだぞ!? 言葉使いは考えるべきだぞ!?」



「たいへん五月蝿いです。ご退席下さい美しい鈴原先輩」



「えへへ〜そっか〜美しいか〜・・・って騙されないぞ私は騙されないぞ!!」



俺の仮眠タイムの妨害者は昔からの付き合いで、その縁が今日までずっと続いている幼馴染で一つ年上の『鈴原綾子』。ひとつ上の三学年なのにほぼ毎日一回はこうして二年生の教室にやってきては俺に話しかけてくる。大体仮眠を取ろうとするときは毎回だ。



「・・・何か用事か?」



「んにゃ? 次の授業移動教室で向かいの理科室だから来ただけ」



「じゃぁ帰れ」



「ひっどっ!!? 美しい年上のお姉さん系彼女に対して言うセリフじゃなくない!!?」



「いつも言うけどタイミングが悪い」



俺は鈍いわけじゃない。ちょうど去年のクリスマスに気づいた。クリスマスに毎年のように俺の家に遊びに来ては、勝手に俺の部屋でゴロゴロしていれば嫌でも気づく。



別に家族ぐるみで付き合いはあるがクリスマスなどの行事を一緒にやっている訳じゃない。それなのに毎年必ずに来ているんだ。小説のように『鈍感系主人公』でなければ誰だって気づく。



そこから正式に彼氏彼女という恋人となった。お互いの両親からは『やっとくっついたか』と呆れるような、、待ち望んでいたような反応が返ってきたのは今でも覚えている。



「まぁ恋人特有のイチャつきは置いといてっと。零司は今日の放課後空いてる?」



「勉強しろ受験生」



「遊びに行くんじゃないってば。今日の晩御飯何食べたい? 今日の晩御飯私が零司の分作ってあげるから」



「勉強しろ受験生って聞こえなかったのか?」



「大丈夫デース! 受験予定の大学なら現状維持で問題なく入学できる判定もらってるからね!」



「・・・ハンバーグ」



「好きだよねハンバーグ。まーかせて!唸るほど美味しいやつ作ってあげるから!」



「言っとくけどハンバーグに対して妥協はしないからな」



「大丈夫!! お義母さんに剣部家の味をばっちり教えてもらうから!!」



クラスメイトも既に俺たちが付き合っているのは知っている。と言うか年明けの新学期早々バレた。登校時に俺の隣でニコニコしながら手を繋いでいた綾子を見て全員が察したのだ。手を離せといっても聞かない上に『私の零司だから手を出すなって牽制しとかないと』とのことだった。



クラスメイトからも『やっと鈴原先輩と付き合ったのかこの強面系男子!!』『爆裂しろぉ!』『毎日苦いコーヒー飲む羽目になって最近その道にハマったんだから責任とってこれからも砂糖提供しろ』『剣部と鈴原先輩のイチャつきを見て彼女が最近色々とすごいんだから責任ってお前も苦しめ!』『モゲロ!! 物理的にもモゲてしまえ!!』など意味のわからない恨み言を言われたりもしたのだが、そんな感じだ。



「机邪魔だなぁ」



そんな綾子は俺の机を少し前に出そうとしていた。俺はすぐさま机に足をかけて動かないように固定してやる。するとギロリと俺を睨んでくる綾子。悪いがそれは今やめろ。



「何すんのさ、邪魔しないでよ?」



「寝るっていてるのに何人の上に座ろうとしてんだよ」



「違うよ? 抱きついて人間毛布がわりになろうとしてるの? 恋人ならこれくらいしても怒られないでしょ?」



「周り見ろ。今の発言で男子も女子も皆顔赤くしてんだろうが」



「いえーい皆見てるー? これが私の愛情表現(本気)です」



「黙れ痴女。いいから理科室に帰れ」



「痴女ってひどいなぁ。流石にこんなところでおっぱじめないから。失礼しマース!」



机を動かせないと諦めたようで、狭い隙間に体を押し込むようにして俺と向かい合うように抱きついてきた綾子。



「重い」



「けど暖かいでしょ? それにスタイル維持の為にいろいろしてるんだから重いは失礼だぞ?」



「ならせめて黙れ。眠れない」



「この男ここまでしてまだ寝る気なのか。ま、そんな零児が好きになったんだけどさ」



まわりを見ればクラスメイト達は既に見慣れた光景のようにそれぞれの時間に戻っていた。それでも時折こちらをチラリと見てはいるが。



流石に毎日のように似たようなことを見ていれば見慣れもするか。クラスメイトの数名は『砂糖提供完了。コーヒー行きます・・・美味い』と聞こえるように言ってくるのでちょっと恥ずかしくもある。



「へ〜・・・あの俳優さん新たしいドラマ出るんだ。お?主演女優北岡雅なんだ。これは要チェックね」



肩に顎を乗せて俺の背中でスマホをいじっている綾子の言葉を聞きながらそのまま意識を落としていく。クラスメイトの雑談や、やってきたと思われる教師の声を薄れる意識の中で聞きながら誰かに起こされるまでゆっくりと眠らせてもらおう。





――――◇――――





「―――――て――――――――零――――――司―――――きて―――――」





揺さぶられる俺の体、いつも以上に激しく揺さぶられている。もしかして既にチャイムが鳴ってしまったのだろうか。それは不味いと急ぎ目を開ける。



「零司!! 良かった!! 体に変なところない!?」



「なんだよ仮眠くらいで大げさだぞ?」



「あぁもう!! そうなんだけどそうじゃないんだってば!! 周り見て周り!!」



「わかったから声でかい。寝すぎたのはわる・・・・い・・・?」



言われて周囲を見渡すと、そこはさっきまでいたはずの教室ではなかった。そこはまるでファンタジー世界の大広間とでも言うような空間だった。クラスメイトに同級生、先生の姿も見える。が、学校では絶対にない。



その証拠に俺たちを囲むようにいかにも”魔術師”と連想させる姿をした奴らが何かを持ちながら俺たちを見ていた。



「儀式は成功です。勇者の皆様。急な召喚をお許し下さい」



それは小説でよくある展開。最近クラスメイトが話していたのを聞いて呼んでみたネット小説のテンプレ的な展開でありがちな始まり。



困惑する困惑するクラスメイトに何か興奮を抑えきれないクラスメイト。反応は様々だが分かることはただ一つ。



「この国の安寧のために協力してください」



俺はクラス転生という奴に巻き込まれたようだ。





――――◇――――





要約すると簡単だ。この国『ラグズライド王国』は現在危うい状況にある。隣国であり、モンスターが統治する国『ゼアリード』によるモンスター被害がある上に戦力差もある。



いつ攻められてもおかしく無い現状の最中、隣の大陸に位置する『エリュザクト帝国』に『時代人』と呼ばれる不死の戦士が現れ始めた。その正体は不明だがなんでも『ゼアリード』が最近『エリュザクト』『時代人』双方に接触し始めたのだという。



現状を芳しく思わない『ラグズライド王国』は直ぐに両国に停戦協定を結ぶために動いたが、万が一の為に戦力を確保したかったという。それが今回俺たちをこの世界に呼び出したきっかけだ。



勿論『万が一』の為に呼び出された俺たちからすればたまった物じゃない。直ぐに元の世界に戻してくれと騒ぐのだが直ぐには戻せないという。その代わり停戦協定が結ばれ国の安寧が確保され次第元いた世界に戻すことを約束してくれた。



対価として俺たちは戦力として『ラグズライド王国』に協力することになった。これもよくある展開だが『実は元の世界に戻れない』という点に関しては即座にクラスメイトの一人が指摘した。



それに答えるように『ラグズライド王国』の国王である『ラグズライド7世』が魔術師たちに命じると、俺たちの真上にはさっきまでいた教室の映像がはっきりと見えた。現状は空っぽになった教室に、廊下にいた学生や教員が驚き慌てている様子もはっきりと見える。



『協力してくれるならば、元いた世界に戻すことは約束しよう。帰還時に望むのであれば好きなものをくれてやる』とも言っていたので元の世界に戻れないという不安要素はなくなった。さらにそれだけではなく、最低限の生活を約束し、戦闘以外でもその力を振るってくれるのならば戦わずとも良いとまで言われた。



それをはっきりと分からせてくれたのは転生時の特典という奴だ。これもよくあるパターン。転生した全員がそれぞれ何かしらの力をもらっていた。



現代人を超える力を扱える身体能力の強化は全員に、そして平等に与えられた特典。それ以外に『ジョブ』と呼ばれるゲームでよくある役職を示す各個人に与えられた力。



最前線で戦うための『戦士』や『剣豪』、『重戦士』

何かを作ることに特化した『錬金術師』『鍛冶師』『裁縫師』

魔術や魔法を扱う『魔法使い』『魔術師』『呪文使い』



他にも様々有あり、転生した全員が人間として生活を行えることと、その力のサポートを約束し、国に協力してくれる限り永続して誓うと、俺たちの前で契約までしてみせた。



逆を言えば協力しない人間にはその約束は果たさないとも言われた。全員がそれに対して納得する以外の選択肢はなかった。だが、国に協力するということはどんな形でも構わないと言われたこともあり、戦いに恐怖を覚えていたクラスメイト達からすれば安心できることでもあった。



国王は宣言するようにこうも言っていた。



『諸君ら勇者は我が国では一つの兵器とも言える。そして兵器は使ってこその兵器であり、常に使える状態で管理し、万全の体制を整えることが何よりも大切だ。無碍に扱うことはしない。我が名に誓おう』



来賓や客人、協力者ではなく、あくまでも俺たちは『兵器』である、そして目的のために使用すると名言しつつも、約束は守ると俺たち全員に誓っていた。



若干の不安もあるが、『ここまで言われたら』と納得するものが大多数を占めていた。一部は勿論直ぐに戻せというのだが、直ぐには行わないと国王は改めて明言する。一方的だとしてもその申し出だけは絶対に許可しない。



国王のまっすぐで正直な、そして威厳のある言葉に黙るしかできなくなった反論者たちはいい返事はしなかったものの、城の兵士に案内されて他全員と同じく用意された個室へと向かっていく。



明日からそれぞれに力を伸ばすための訓練や練習、そして修行といったことが始まる。そのための英気を養うのだと国王は最後に告げた。



「そこのお主、暫し残れ。何か言いたいことがあるのだろう?」



「・・・」



「零司を残すなら私も残ります。構いませんね?」



「良いだろう。その者の女ならば構わん」



国王は俺を指差して残るように言ってきた。他のクラスメイトや先生たちは少し驚きつつも兵士に案内されてそのまま国王の元を後にする。残ったのは俺と国王、そして近衛兵と思われる者たち、そして頑なに俺から離れようとしない綾子となった。



「国王様。俺は言いたいことなどないのですが?」



「知っている。お前をここに残すための口実だ」



国王は変わらず威厳ある態度のまま立ち上がり、後ろに飾られていた剣を手にとった。



「すごい剣・・・なんて言うんだろう・・・目が離せないね」



「その方、見る目があるな。見惚れるであろう? これは数百年前にこの世界を救った『魔剣聖』と呼ばれた男が使っていた剣。名を『夢望:ムラサメ』という。『レイジ』と呼ばれていたな。ならば儂もそう呼ぶぞ。レイジよ、この名を聞いたことはあるか?」



「おっしゃっている意味がわかりません。そもそもこの世界のことを知らない俺がその剣に関して知っている訳がないじゃないですか」



「・・・そうか。ならば聞き方を変えよう。お前は自分が『魔剣聖アルトス』の生まれ変わりだと言われて信じるか?」



「誰もが過去の英雄に憧れるのはあると思いますが、こうなってまで俺はそんな生まれ代わりだって信じたりはしませんよ」



「そうか。ならば『レイジ』よ。今後のお主がそれを信じ、自覚するのを楽しみに待たせてもらおう。お前は戦いを選ぶのだろう?」



「・・・・・・」



「ではこの先互いの目的のために協力していこうではないか。隣にいるお前の女と同じ部屋にしておこう。近衛兵よ、案内してやれ」



国王はそれだけ言って剣を戻し、後ろにあると思われる扉から出ていった。俺の中には国王が言い残した言葉が木霊するように残っていた。





――――◇――――





案内された部屋は行っていた通り二人部屋のようだ。部屋に入ってすぐ俺はベットに体を投げ捨てるように飛び込み上を見上げていた。



「零司」



隣に座るように綾子が俺の顔を覗き込んでいた。表情はいつものオチャらけた顔ではなく、俺のことを心配してくれているような、そんな表情だった。



「さっき嘘ついてたね」



「・・・さぁな」



「わかるよ。だってずっと一緒にいたんだよ? 零司のことなら誰よりもわかるよ」



「零司の前世ってさ? さっき王様が言ってた英雄さんなの?」



「英雄なんてガラじゃない。本当の英雄は俺じゃない奴だよ」



英雄になんて俺はなれなかった。名を残したくて始めたことはすべて邪神の手の内で、名を残すのではなく、世界そのものを失ったんだ。俺は何も残せていない。



だから”俺”の知っている”俺”は、この世界で英雄とされている”アルトス”という人間じゃない。”俺”はただの世界を破滅させただけの大悪党だ。夢だけ持ってそれ以外の全てを破滅させた救いようのない男だった。



第三者視点で見ることができてそれを改めて自覚した。あの時、『アール』がもしも俺に勝っていたら、もしもあの時『アール』と違う形で分かり合い、協力していたらなんてことを考えなかったことはない。



アイツは甘ちゃんでトラブルばっかり持ってくる奴だったけど、最後には全部解決してしまうすごいやつだった。そいつと幼馴染だったことは俺の誇りだった。そして俺が超えるべき壁でもあった。



あいつを超えない限り、俺は世界に名を残せない。いつから思ったのか覚えていないけど、そう考えていた。結局最後に俺は力だけであいつを超えて、あいつが持つ心って奴を理解していなかった。



心と体。二つの強さがあって初めて『強い』というのだと、俺は生まれ変わって知ることになった。



「大丈夫だよ? 零司がどんな人でも私はずっと零司の味方だから」



頭を撫ぜてくれる綾子がそれを俺に教えてくれた。自分の考えをを、それが自分が持つ弱さだと思っていた俺にそれは弱さであると同時に強さであると教えてくれた人。



初めての感情を与えてくれた大事な存在。俺がずっと守りたいと願う初めての人。



「綾子」



「お? 元気出た?」



「俺はおまえを守るから」



「うん。守って」



「だから・・・俺のことも守ってほしい」



「いいよ。零司と一緒なら私はどんなことでも頑張れるよ」



俺たちの距離は0になる。”俺”が今したいことはただ一つ。綾子を守る。そのためならどんなことでもしよう。例えボロボロになったそしてもこの誓いだけは必ず守り通す。



弱さも強さに、強さを弱さに変えたとしても、必ず。必ず守ってみせる。





――――◇――――

剣部 零司

Lv51

ジョブ『剣聖』

サブジョブ『―――』


攻撃力:357

防御力:274

魔力:308

命中率:212

素早さ:201

幸運:65


能力:―――

――――◇――――

鈴原 綾子

Lv52

ジョブ『聖剣使い』

サブジョブ『―――』


攻撃力:359

防御力:278

魔力:312

命中率:222

素早さ:194

幸運:105



能力:聖剣召喚

――――◇――――





「ふっ、まさか召喚した中にかなりの掘り出し者がいるとはな」



「だから言ったでしょう陛下。今行えば確実に最高戦力を手に入れることができると」



「他の召喚した者たちもかなりの能力だ。戦闘でも生産でも時代人に全く引けを取らん。それどころか育成次第では奴らを圧倒するポテンシャルを秘めておるわ」



「そうでしょうとも。これも全て我らが神の導きのままに」



「今回はその神とやらに感謝してやろう。だが言っておこう。その神とやらにな。利用していると油断したが最後、我らが貴様すら扱い手玉に取ってやるとな」



「これは手厳しいですな。伝えましょう確実に。では陛下。今後も互いのために一応の協力体制を」



「そうだな。我らの協力は今しばらく続く。ではな」



二人だけの会話、それを聴く者は誰もいなかった。もしもこの場で誰かいたとしても、そのものは行方不明になっていただろう。



ある意味いなくて幸運だった。そしていなくて不幸だったとも言える。これから起こることに巻き込まれずに済んだ最後の可能性だったのだから。




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