リターン・トゥ・ベース
(・・・レックスリーダーよりレックス2、何があった・・・?応答しろッ・・・!)
よく知っている男の声に呼ばれて、鬼太郎は目を覚ました。コクピット内のモニターには、彩度の高い青色が映し出されている。オグレット海だ。
(・・・レックス2、鬼太郎ッ・・・!応答しろッ・・・!)
ポラック大尉の太い声が耳元で響く。鬼太郎は慌てて応えた。
「は、ハイッ・・・!」
(・・・バッキャロウッ・・・!心配かけさせやがってッ・・・!)
大尉の声は怒っているようだが、同時に安心しているようだった。
「す、スンマセン・・・」
適当に謝っておく。
(・・・で、そっちの状況は・・・?)
「現在確認中です・・・」
鬼太郎はMFDを操作し、各種計器をチェックした。すると、画面の端に鬼太郎は違和感のある情報を見つけた。
「・・・ん?」
(・・・どうした・・・?)
不審に思った大尉が尋ねる。
「・・・いや、何でもありません。全て正常です・・・」
大尉にはそう答えたが、やはり鬼太郎の違和感は拭えなかった。
先刻までエフタル軍機や蝶の姿をした未確認飛行物体と戦闘を繰り広げていたのに、武装が一つも消費されていないのだ。ミサイルは全てランチャーに下がっているし、機関砲の弾もきっちり六七五発揃っている。燃料は少し減っているが、戦闘機動を行った場合より消費量はずっと少ない。
もしかしたら、あの戦いは夢で、《ダインスレイヴ》は意識を失ったパイロットを乗せたまま巡航していただけなのではないだろうか?鬼太郎がそう結論付けようとしたとき、ディスプレイ脇の携帯端末が目に入った。
「・・・緑竜・・・?」
端末の画面は暗いままだった。試しに電源を入れてみようと思って手を伸ばしたが、大尉の声が聞こえてきた。
(・・・さあ、帰るぞ・・・。積乱雲が迫ってきた・・・ミサイルのテストは延期だ・・・)
横を見ると、ポラック大尉の機体が手招きをするように翼を振っていた。
「・・・了解・・・」
鬼太郎たちは進路を母艦の方に向けた。
*
鬼太郎の機体がレーダーから消えていた時間は、十分程度とポラック機のレコーダーには記録されていた。帰艦から八時間後に緑竜は意識を取り戻したが、僚機との交信が途絶した後の事は全く覚えていなかった。
結局、今回の事件は落雷によるシステムトラブルということで片付けられた。鬼太郎が大真面目に語った体験も、気絶しているうちに見た夢だと言って誰も相手にしなかった。周りがこのような態度を取るので、エフタル軍機との共闘は鬼太郎の記憶からも消えていった。
*
(・・・どうしてあそんでくれなかったんだろう・・・)
「彼女」は自問した。あの三人と友だちになりたかったのに・・・。
(・・・もっといいおもちゃをつかえばいいのかな?そしたらおねえちゃんたち、よろこんでくれるかな・・・⁉)
一人で結論を出し「彼女」は次の遊びの準備を始めた。もっといい兵器を探して・・・。
―本編につづく―
今回でこの連載は終了しますが、本編を鋭意執筆しておりますので、ご期待ください!