同日、13時頃ー光太郎、PART1
明らかに何かがおかしい。担任の加藤の話によると先の音楽室では、事故が起きたらしい。グランドピアノの足が折れて驚いた近くの生徒が足を滑らせ、明日に頭を強打したのだという。流血した上に意識を失ったため、救急車を呼んで対応したという話だ。そんなことあるか。いや、今日まで音楽室で活動している団体は放課後の合唱部くらいなもんだった。この時間帯に音楽室で何かをする生徒はいなかったはずだ。
「えーとにかく!文化祭の準備期間だからと言って無理な行動や面白半分に軽率な行動はしないこと!わかったかー!」
今の言い方だと"面白半分で軽率な行動"をした結果、どこぞのなにがしさんは怪我をした、と言っているようなもんだ。でも、気になることもある。一応聞いてみるか。
「先生、音楽室は今後も使えますか?」
「今日はピアノの撤収があるから無理だな。明日以降はどうなるか、また朝のホームルームで話せると思う。……他に質問のあるヤツはいるかー?」
誰も何も言わないだろうな。今日はこの後すぐに帰れる事になったし、うちのクラスは文化祭の準備ってもんがないからすぐに帰りたいハズだ。俺も調べたいことがあるし、今日は好都合だ。
「よーし。今日はみんな寄り道しないで帰れよー」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
まずは幽霊の少女のことからいくか。龍には今日怪我をした女の子の情報を調べてもらうことになったから、そっちはひとまず後回しだ。それにピアノの撤収が終わらないと誰も入れないということは邪魔もないハズだ。何か手がかりがあればいいけど。
「あれ、榊君ではないか。こんなところで何してるのかな?」
「あ、宮田さん。こんにちは」
生徒会までいるのか。これは少し面倒だな。オカ研は生徒会自体とはそこまで仲が悪くないけど、あまりいい印象は持たれてないだろうし。それにこの人自体苦手なんだよな。
「いずみ、でいいって言ってるのに。そういう律儀なところもお兄さん譲りだね」
「……兄のことはいいですから。こんなところで何してるんです?暇なんですか?」
「言い方にトゲがあるね。ある意味素直と受け取ってくよ。ここに来たのはもちろん生徒会の仕事さ。今は会長がいないから、アタシがこういうのみに来ないと」
「なるほど」
やっぱりそうか。この人に見つかったってことはほとんど音楽室に入るのは望み薄って感じだなこれは。まあ、ダメ元で聞いてみるか。
「ピアノの撤収終わりました?終わったんなら入りたいんですけど」
「え?まあ終わってはいるけど。何?なんで入りたいの?」
この人わかってて聞いてくるから面倒なんだよな。察するんじゃなくて、言わせて許可したって事実が欲しい感じ。少しやり返すか。
「例の件、知らないんですか?音楽室の少女の話」
「むっ……。アタシがこの学校の中で知らないことなんかないんだぞ、少年。それにその話なら前に東堂君から聞いたからきちんと知ってるもん」
「ちょっと待ってください。東堂さんから聞いたんですか?いつです?あの人から聞いたってことはもう2週間は前の話ですよね?」
「そうだね。彼が入院する前の話だから夏休みよりも前になるかな。夏休みの登校日より前には彼、入院しちゃってたから」
意味がわからない。この噂が出回り始めたのはつい最近だぞ。それに登校日に会ってないってことは夏休みより前からずっと噂があったってことか?東堂さんはなんでそれを放置してたんだ?わけがわからないことばっかりだ。
「あ、音楽室なら特別に入室を許可しようじゃないか。他ならぬ生徒会長、東堂君の直属の後輩である君ならば信用できるからね」
「……随分と大げさですね。でも、ありがとうございます」
「東堂君が言ってたから。きっとこの件を解決するのは我が後輩だ、って。お見舞い、行ってあげなよ?」
「……はい。じゃあ、また」
「うむ。精進したまえよ」
人を見透かしたようなセリフだったけど、実際東堂さんのお見舞いには行かなきゃと思ってた。良いきっかけなのかな。やっぱりこの人苦手だな俺。とにかく音楽室に行って、何か探さないと。時間的に女の子に会うのは厳しいな。今日の事件当時の何かがあれば。