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同日、17時20分ーオカ研部室

topics: 三國(みくに) (りゅう) 1-F所属


16歳 8月22日生まれ A型 身長175cm 体重62kg


茶髪 前髪が邪魔だが切らない 休日はヘアバンドで前髪をあげる

好きな食べ物は秋刀魚 嫌いな食べ物は魚介類

成績は真ん中くらいで、得意科目は歴史(日本史)

スポーツはなんでもできる、いわゆるイケメン(重要)

姉が3人おり(美人)、そのせいで女の子が苦手

好きな言葉 「断金の交わり」

「さて、と。じゃあ色々聞いてもいいかな?」

「は、はい……」


光太郎、龍、千早の3人は1-Fの教室からオカルト研究会の部室へと場所を移していた。文化祭の準備中で忙しない教室で話すのは人目にはばかるし、何より集中して整理できないからだ。


「尋問とかじゃないからさ、気楽に、ね? 俺らも手がかり少ししかなくて、当事者に会えるなんてタナボタなんだ」


千早はうつむきがちで緊張はいまだに解けない様子だ。


「龍、お前からも……龍?」


ホワイトボードの前で待機していた龍も落ち込んだ様子で、光太郎からの言葉が耳に入らない様だ。


「もう決まったことだろ、そう落ち込んでばっかいるなよ。クラスの男子、羨ましがってたし」

「……じゃあ。お前が行けよな。俺女子と出かけるとか真面目にキツいから。勝手に約束してさぁ。どうするんだよ明日ぁ……」

「クラスの人気の女子とデートだってのに落ち込んでた、なんて言ったら世の中の男子はお前に殴りかかるだろうな」


1-Fの教室から出てくる間際にあかりがしつこく明日の予定をこぎつけてきたのだ。千早に話を聞くことでうやむやにしようとしていた龍の計画は、ついに倒れたのだ。


「最終的に行くって行ったのは龍だろ。今は元町さんの話に集中しろよな」

「でもさぁ……」

「……ふふ。」


光太郎と龍の話に思わず千早が反応する。


「も、元町さん…」

「ご、ごめんね? ホントに女子のこと苦手なんだなって……。2人の会話おかしくて」


当事者は困ってるのに、と小さい声で龍は少し納得がいかないようだ。千早は先ほどよりは緊張も無くなった様子で、しっかりと光太郎に向き直る。


「ええっと、どこから話せばいいのかな?」

「状況とか詳しく知りたいんだ。出来れば正確に。何日の何時に、どんな子だったとか。その子の様子も」


「うん、でも多分2人が聞いてる噂と大差ないと思うんだ。優衣たち、ああは言ってたけどどこでも私にその話聞いてくるから。学校内で知らない人少ないと思うし」

「"噂"を聞くのと当事者から聞くのが違うってこともあるから。それに……必要なことなんだ。君から話を聞くっていうこと」


千早は光太郎の含みのある言い方に疑問を持ったが、ひとまず少女の話を続けた。


「最初に見たのはこの前の土曜の12時前。11時30分とかだったかな。クラスで文化祭の準備をして、前の日授業の時に忘れた消しゴムを、音楽室に取り行ったときだったんだ。消しゴムを見つけて、帰ろうって思ったとき泣き声みたいなのが聞こえて……。怖くなったんだけど怖いもの見たさで、声のする方に少しずつ進んだの」


千早は自分の中の記憶を思い出そうとしているようだった。出てきた情報を整理がしやすいようにホワイトボードにあげていく。


「準備室の方から聞こえてきてたみたい。そっと準備室のドアをあけて隙間から覗いて、中を確認したの。そしたら黒い髪の女の子が準備室の椅子に座って、うぇ〜んって。一瞬トリハダが立ったけど、なぜか不思議とすぐ怖くなくなっちゃって……。ドアをあけて近づこうとしたんだけど、スッーって消えちゃったんだ」


千早はなるべく順序立ててわかりやすく話すことを心がけていたようだ。光太郎は千早が一息ついたところですぐに疑問を投げかけた。


「話始めに最初にって言ってたけど、一回だけじゃないんだ?」

「うん。怖くなくなったし、それに女の子が泣いてたら気になるじゃない。幽霊でも」

「普通はなかなかそういう発想にはならないと思うんだけど…」


龍は苦笑いしつつホワイトボードに情報をまとめていく。


「近づいたら消えたって、ホントにそれだけ?」

「それだけ、っていうか私には気づいたみたいだったよ。少し顔を上げて、それでハッとして消えちゃったの」


光太郎が悩む間に龍が続ける。


「とにかく、曜日を問わず11時30分頃に準備室に行けば女の子に会えるってことでいいのか?」

「文化祭の準備期間に入って今授業がない時があるでしょ? 少なくとも、私が行った時はいつもいるよ」


千早は全くと言っていいほど女の子に恐怖を抱いている様子はなかった。光太郎はここでもう一つ考えていたことを投げかけた。


「元町さんが女の子を怖がってないなら、このオカ板に誰が投稿したんだ? 元町さん、投稿してないよね?」


匿名掲示板の投稿者を探すというのは非常に難しいことではあるが、千早でないことは確かだった。


「私じゃないよ。噂って尾ひれがつくし、誰かが迷惑してるのかも」


それにしても、と光太郎は考える。一般的な悪霊の類と違ってその女の子は誰かに害を与えているようには思えない。噂を耳にした誰かが明確な目的を持って女の子を成仏させたがっているように思えた。


「とにかく正確な情報は分かったな。明日はちょうど授業がない日だし、行ってみようか。音楽室に」

「おう。初ミッションだな! オレ達の」


じゃあ、ありがとうと千早にお礼をいうやいなや、2人はすぐに明日の準備を始めた。


「あの……」

「え?……ああ、ごめん。もう今日は大丈夫だから……」

「そうじゃなくて、その……私も行っていいかな?明日」


光太郎と龍の動きが止まる。特に龍は持っていたビデオカメラを落としそうになるくらい動揺していた。


「やっぱり気になるんだ。見つけたのは私だし、一緒に行かせて欲しいの」

「最終的にキミにも一緒に来て欲しかったけど……。明日来ても多分何もないよ?」


それでも、と千早の鼻息は荒い。光太郎と龍は顔を見合わせてしょうがないか、といった具合だ。お守りを1つ取り出して、肌身離さず持つように伝えた。

明日は初の接触だ。

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