じゅうろくてんご
二度目の停学以降、俺のケータイはストーカーの化身と化していた。ほぼ五分おきに鳴り続ける着信がいい加減ウザくて、息の根を止めて三日。満を持して落としたケータイの電源を入れれば、不在着信は三ケタを記録している始末。嫌がらせとしか思えないその熱心さはつまるところ設楽へと突き当たり。
「もしもし、高山君っ! よかったなにやってたんだよ、心配したんだよっ! いきなり停学って、電話もつながらないし、家に行っても高山君に会わせてくれないし、僕っ! 気が気じゃなくてさっ! 明日の計画は僕たちオカルト同好会の命運を、僕は神に見放されたのかとぅびゃ!」
「……あーうん。とりあえず、落ち着け」
設楽に電話をかけた途端、そんな調子で電波の向こうで興奮のあまり舌を噛むアホをなだめるのに約十分。とりあえず、落ち着きを取り戻した設楽に、お前なんで俺ん家の住所知ってんだ、って質問はこの際置いといて。
「まあ、心配すんな。今回の停学は全て計画の一部だ」
「ほ、本当っ!」
いや、もちろん嘘だよ。
「そんなことより、心の準備しとけ。明日実行するぞ」
「えっ……。で、でも高山君今停学中じゃ……」
「そうだな。そこでお前の出番ってわけだ」
「え?」
「いいか、設楽。これはお前にしか頼めないことだ。俺が最も信頼を寄せるお前にしか、だ」
「ほ、本当っ!」
いや、もちろん嘘だよ。
「設楽。――明日は?」
「オカルト生誕祭っ!」
「派手にぶちかましてやろうぜ」
「うんっ! えへへ! えへへへ! じゃあね、高山君っ!」
――許せ、設楽。
電話を切ってから、俺はなんともなしにため息を吐いた。ベッドの上で胡坐をかいて、床に転がったままの気持の残骸は、とても今は拾う気にはなれない。全部終わってから、それがただの写真だと思えるようになるまで、俺は後何回後悔すればいいのだろう。
胸はまだ痛いままだけど、これが正しいのかどうかもまだ分からないままだけど、結末を怖がるより、今は今を後悔したくないから。
――二年のブランクも無視して、俺は明里姉ちゃんの家に電話した。