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じゅういち

     ***  ***





 ハローハローハローハロー、幽霊との交信に見事成功。ハローハロー、どうやら幽霊にはちゃんと喜怒哀楽がある模様。ハローハロー、涙だって流すのを俺はこの目で見てるから。ハローハロー、例え触れることはできなくても、まだ消えてなんていないと信じたい。ハローハローハローハロー、幽霊との交信に見事成功。ハローハロー、過去から未来の自分へ。宮川晴香は無事成仏できましたか。少しは自分が好きになれそうですか。こちらは今、マイヒューチャーに手紙を書かずにいられないほど病んでおります。ハローハロー、いつか応答願います。

 P・S 読み終わったら跡形もなく燃やしとけ。




     4




 神を生贄に亡霊召喚に成功した奇跡の夜から、幾星霜。まあ正確には三週間だが、あれよあれよと学園祭を五日後に控えた俺達は、校内のお祭りムードの斜め下あたりの微妙な隙間に紛れこみ――つまり、多目的教室に集合しているのだ。

 やあやあ、ここに集いたるはオカルト命の個性派集団、その名もオカルメンツ(適当)である。控えようろう、頭が高ぁい! 窓際の圭一さんを筆頭に、萌えるメガネブタ、電波系美少女、他四名! 黒板には呪いの儀式と見まごうばかりの怪しげな文字列に図解! ここまで来たら、もう後戻りなんて考えずに俺はただ。

「いいか、お前ら! この計画がうまくいった暁にはこの俺がオカルト同好会をやがては部にまで昇格させて、この高校を支配してやる! この計画はそのための足掛かりとなる重要な極秘任務と知れっ!」

 ノンブレーキ、開直、フルスロットルだ。言い換えるなら、後は野となれ山となれ。

 威勢良くバシンと黒板を叩き、顔色の悪い信者たちに向けガッツポーズのパフォーマンス。すると、教室の端っこに居座る四人の信者+ブタ一匹は「うおおおお! 窓際の圭一様バンザーイ! バンザーイ!」などと精神科直行お勧めコースのリアクション万歳と来た。ここで開直を解くとたちまちこの呪言の唄、もとい万歳三唱に飲み込まれること請け合いなので、俺は怪しい新興宗教の教祖になり切るしかない。

「おっしゃあああ! てめえら本番でヌかるんじゃねえぞ! 俺を奉れ! その他一切完全デ・リッィィィィイト! いざとなったら体張って俺を守れ! いいか! 合い言葉は……『偏見滅殺悪即斬』! 力尽きる時はメガンテ唱えてもろとも爆破! 道連れの刑だ、いいかぁっ!」

 偏見滅殺悪即斬コールの鳴り止まない、多目的教室の真ん中辺りの席に一人ポツンと座る紅一点、電波系美少女もとい六道は、一人だけコールを無視して俺を見ていた。三週間前のあの夜、俺に見捨てられた六道は、設楽の手に堕ち強制的に後のオカルト同好会の会員になることを確約させられたらしい。もっとも、設楽は六道の特殊能力にまでは気付いてはいないが、萌え〜とか幸せそうだし、どうでもいい。しかし、俺に関わったばかりにこんな目に遭っている六道は俺を恨んでいてもおかしくないのに、律儀にこの集会に顔を出している辺り、やはり意味不明だ。三週間前のあの夜以降、一度も俺とまともに口を利いてもくれないくせに。

 いつかの使命感も責任感もその瞳に宿らせながら、ここ三週間俺の行動を黙認している六道は不気味としか言いようがない。しかし、そんな六道の真意は、鉄塊並みの防御力を誇るポーカーフェイスの手の内にあり、ライブラもまるで通用しないときた。弱点はまあ、猫だが。

 あの夜、六道は確かに言った。宮川晴香のためじゃなくて、俺のためにここにいると。なぜあの時一人でに鉄塊が崩れたのかも、結局なにが言いたかったのかもよく分からんが、とにかく、本番になって六道に邪魔をされでもしたら困る。ましてや宮川晴香を闇討ち(除霊)されでもした日には、死んでも死にきれん。そう。この辺で六道とはきちんと話をつけておかねばならないのだ。

 そして――。

「偏見滅殺悪即斬! 偏見滅殺悪即斬!」

 偏見滅殺悪即斬で、その鉄塊をぶった斬ってやるしかないでしょう?





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