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蘇生

目を開けると、やたら大きな丘陵が視界の妨げになって何も見えなかった。と思ったら丘陵が降りてきて俺の顔に被さる。窒息しそうになったたため慌てて起き上がろうとするが、がっしりと首に回された手は離れない。


「目が覚めて良かったよぉ~」


そのままの体勢で、耳元で声が聞こえる。顔をそちらに向けようとするが、二つあるらしい丘陵に挟まれて無理だ。俺は死んで、ここが地獄ということだろうか。などと思っているとようやく拘束が解かれ、二つの丘陵がゆっくりと身を起こし、その延長線上にふわふわの巻き毛の少女の顔が現れる。

龍門山高校三年A組、坤 青色(ひつじ あいいろ)


「ど、うして」


呂律が回らない。ひどい倦怠感がある。まるで、長い時を経て目覚めたかのようだ。


「ここは青色の部屋だよぉ?森まで散歩しに行ったら君と音恩ちゃんが倒れてたから保護してあげてぇ、死んでたから生き返らせてあげたのぉ」


二度ほど信じられない言葉を聞いた気がした。


「あ、あ……う、まく喋れん」


「あんま喋んないほうがいいよぉ?生き返った直後はみんなそうなっちゃうんだよねぇ」


「か、んざき、ねおんも、生きているのか……?」


「君より先に生き返ってるよぉ。君も生き返らせるつもりって言ったら、しばらく黙ったあと『……礼は言うぜ。ありがとな』って言ってどっか行っちゃったよぉ」


「……そ、うか」


なんだこいつは。なんなんだこいつのスキルは。生き返らせる、などと事も無げに。命がそんなに軽いなら、俺がしようとしていることはなんなんだ。


「部屋、と言ったな。俺はどれくらい寝ていた……?」


無理やり話題を逸らす。部屋を自力で獲得できるくらい金が溜まっているか、何か他の事情があるのか知らないが、こうやって腰を落ち着けているところを見ると、相当長く居座っていそうだ。


「二人を見つけたのは三日前かなあ。二人がいつ殺し合ったのかは知らないけど、死体の虫喰いがひどかったよぉ」


あのとき集まった虫共のおかげで、死後の正確な経過時間はわからなそうだった。しかし、少なくとも3日以上。相当な遅れを取っているらしい。そして、


「……なぜ殺し合いだと」


「誰でもわかるよぉ。二人とも満足そうだったもん」


「……」


本当にそうだったのだろうか。自分はあのとき、満足していたのだろうか。だとしたら、何という惰弱。


「ま、しばらくは安静にしてることかなぁ。青色はお出かけしてくるからぁ、いい子で待ってるんだぞぉ」


そう言い残して、青色は部屋を出て行った。

一人取り残され、腕で顔を覆った。

殺人も満足にできない俺は、これからどうすればいいんだろうか?



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