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開演

風が吹き、俺の頬を撫でる。

青々とした草の他に何もない場所で、俺は立ち尽くしていた。


始まりは二時間前。

朝のホームルーム直前、教師はまだ到着しておらず、クラス中が喋り声に満たされていた。教室の窓側の席で頬杖を突き、その喧騒を聞くともなしに聞いていた時だった。何ら前兆はなく、ただ突然教室が眩い光に包まれた。全ては一瞬で行われたようだった。閃光に眩んだ目が次に捉えたのは真っ白な空間だった。クラスの全員がそこに揃っていた。小説にしか出てこない、転移、という言葉が頭に浮かんだ。クラスの女子グループのまとめ役である小宮山が最初に言葉を発した。「ここ、どこ?」クラス委員長であり常に沈着冷静な男である能義が眼鏡を中指で押し上げ、くつくつと笑う。「さっぱりわからん」二人の言葉を皮切りにクラスが騒ぎ出す。ギャルの桑崎が泣き出し、それを仲のいい陸上部女子の那須や茶道部の四王が慰める。ラグビー部所属の巨人、玉桂寺はこの空間の境界線を確かめると言って走り出し、サッカー部の蘭城もそれとは反対方向に向かう。


一時間ほどすると、クラスに静寂が訪れた。泣き疲れた者は座り込んでいたし、境界線を確かめに行った男子達は果てが確認できず疲れきっていた。何も全力疾走しなくてもよさそうなものだが。今やめいめいが現状を把握しつつあり、それだけにクラス中を重苦しい空気が支配していた。そんな時だった。


唐突に目の前に女性が現れた。

踵まで届くほどに長い黒髪を持ち、驚くほど長身の女性だった。甲冑のようなものに身を包んでいたが、それでも身体の優美な曲線は隠せていなかった。彼女は全員を見渡して口を開く。


「あ、あー。ちゃんと発声できてる?これが日本語よね。大丈夫?通じてる?OK、じゃあ説明するわ。一度しか言わないからよく聞きなさい。あたしは神で、神は世界の数だけ沢山いるんだけれど、ある世界での魔王がちょっと暴れすぎで目に余るのよ。でも面倒なことに、あたしたちが作ったルールとして、あたしたちじゃ直接世界に、魔王に干渉できないの。上位存在たるもの、ルールは守らなきゃいけないじゃない?その世界に魔王に匹敵するような力を持つ者がいないのも魔王の増長に拍車をかけててね。で、誰でもいいから神の使徒として戦う駒を召喚しようって話になったのよ。少なくともその魔王がいる世界の関連世界に神は30柱いて、各人に各々の神が対応するために、30人のグループをまとめて召喚したわけ。グループなのは、全員が見知った相手のほうがスムーズにことが進むから。で、今現在関連世界にいる30人のグループのなかから抽選で、極小の確率をくぐり抜けてあなたたちは召喚されたの。ちなみに拒否権はなし、ただ安心して、不自由なく戦えるように各々に見合ったスキルは用意してあげるから。生活上最低限の加護もね。あとステータスも特別サービスとして見えるようにしてあげる。ゲーム世代のあなたたちにはこういうのがいいんでしょ?スキルやステータスの詳細は念じれば見えるけど、他人からは見れないようになってるわ。あくまで自己申告か、実際に見せるかしないと他の人はあなたがどういうスキルを持ってるのか知ることはできないってわけ。そうそう、既に与えられたスキルによってあなたたち一人一人は魔王を倒せるくらいのポテンシャルを持っているから、倒した後は、まあ二度目の人生だと思って適当にやんなさい。あと初期ステは公平を期して皆同じにしてあるから。じゃ、バイバイ」



女神は一気にそれだけ言うと忽然と姿を消してしまった。本当に説明が面倒臭かったようだ。

クラス中が喧騒に包まれたが、俺は頬が緩むのを感じていた。元いた世界にこれっぽっちも未練はなかった。むしろ未知の世界が楽しみだった。魔王をさっさと倒して異世界生活をエンジョイするのだ。かしましいクラスを観察していると、俺と同じような笑みを浮かべる奴らが数人目に入った。意外なことに能義と小宮山もその中の一人だった。目が合うと、能義は唇の端をつり上げ、小宮山はウインクをしてきた。

スキルを確認しているらしい者も何人かいた。剣道部に所属する女子の周防は常に腰に差していた木刀をしげしげと見つめ、サバゲー部の石切は指で銃を真似、吹奏楽部の七曲に至っては虚空に話しかけていた。四王が桑崎から少し離れたところで何やら考え込んでいたのが印象に残った。クラスを見渡していると、妙な感覚が胸を過ぎる。見知った彼らが、何か別の人間に見えた。

そして、それがクラス全員が揃った光景の見納めになった。

再び視界が白い光に包まれ、世界は変わる。


で、冒頭に戻る。

この何もない草原に転移した際、俺は一人だった。

どうやら各々、別々の場所に転移したらしい。

広大な異世界で、果たして何人と出会えるのだろうか。

優しい風に吹かれながら、俺は両手を広げ、笑う。

何しろここには既知ではなく、新しい世界が広がっているのだ。


ところでステータスはどんなものだろうか。





ステータス


東雲しののめ てい


年齢 17歳


性別 男


職業 無職


称号『不運な転移者』『魔王を殺す者達』『快楽殺人者』


スキル『汝の為すべきことを為せ』


HP 10

SP 10

AT 10

DF 10

MAT 10

MDF 10

AGL 10

異能バトルを書きたいという気持ちだけで書き始めているので細かい設定はとても雑です。ご容赦ください。矛盾を見つけ次第、適宜直していく所存です。

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