表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/21

18.決意の一撃

 コルシェはロイズの手を握ったままさめざめと泣き、ルセンも父の亡骸を黙って見つめている。

 メルクは少し離れたところで、劇場の一幕を見るようにその様子を見ていたが、途中から一つのことに心を支配されていた。



 ――コルシェが泣いている。



 『あれは感動の涙だ。あるいは旅が無駄にならず、安堵しているのだ』


 頭の中で誰かがそんなことを言っている。



 ――違う、あれはそんな涙じゃない。



 コルシェは多くの危険な目に遭いながら、この結婚式に辿り着いた。

 でも結婚とは名ばかりで、彼女は夫の死に目(・・・)に会うために呼び出された。

 夫となるはずだった人物は目の前で死んだ。しかも最期に聞いた言葉は違う女性の名前で、要は彼女は替え玉にされたのだ。


 この仕打ちは何だ?

 お家のためだとか、身分が高い人同士、事情はあるのだろう。しかし、これでは彼女が余りにも……



 『惨め?可哀想?未熟なお前に何が分かる。彼女の気持ちを決めつけるな』



 頭の中の誰かはそんなことを言っている。

 そうか。これは僕の理性の声だ。メルクはそう気付いた。



 『やめろ。お前は感情に任せて取り返しのつかないことをしようとしている。何の解決にもならないことは分かってるはずだ』




 それでも…………やる!




「ヴァンクリフ様!失礼しますっ!!」




 こんな時でも謝ってしまう僕はつくづく情けない。

 そう思いながら、メルクは、ルセンの頬に拳をめり込ませていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ